ここは「文風月」内、FF置き場です.
カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
くっ……。天理戦見損ねた……。(高校野球ね)
というのも、父の実家に行ってたもんで、暇で暇で…寝てました。
…不覚っ!!
サイトお引越しのご連絡をいただきましたので、リンク変更しました。
「やっぱり…無理して起こしちゃった…よね」
鍋をかき混ぜながら晴香が呟く。
今日の晩御飯はうどん。
「…徹夜だって…言ってたし」
私、自分勝手だな…
はぁっと…ため息を付いてコンロの火を落とした。
「八雲君。ご飯できたよ?」
脱衣所の戸を叩きながらそう声をかける
「………。あぁ。すぐに行く」
短い沈黙の後に帰ってきた言葉。
「うん。待ってるね。」
あぁ、やっぱり疲れてるんだ。
一緒に暮らし始めて、声の雰囲気で大体は分かる。
…ごめんね…。八雲君
心の中でそう呟いて、晴香はキッチンへと戻る。
その後すぐ、八雲がリビングへとやってきた。
食卓に並べられている物を見て少し安心した表情を浮かべる。
「…食べられそう?」
カウンター越しに晴香が訊ねる。
「あぁ。大丈夫だ。」
そう言うとテーブルに着く。
「君は、食べないのか?」
「すぐに行くから、先に食べてていいよ。」
「…そうか。」
そこで会話が途切れた。八雲が食事をしている気配もない。
「…そう言えば…」
沈黙に絶えられなくなって晴香が言葉を発する。
「後藤さんから電話があったよ。」
「………。そうか」
声の調子が変わったのが分かった。
しまったとは思ったが、一度発した言葉はなかったことには出来ないのだ。
「…何って言ってた?」
「……。無事に、帰ったかって。それと」
「それと?」
「…事後処理は、上手くやった……って。」
何故か分からないけど声が震えた。
「そうか。」
それに対する八雲の声は驚くぐらい、冷たい響きを持っていた。
「…八雲君。」
出来上がった紅茶を持って恐る恐るリビングの方を振り返る。
「………。」
八雲は、何も答えなかった。お盆にティーカップを載せリビングへ運ぶ。
「ご飯。無理して食べなくてもいいよ?」
ティーポットから紅茶を注いで八雲の前にカップを置く。
その間も八雲は一言も喋らない。
「ハーブティー…なの。…疲れが取れるから…飲んでゆっくり休んで?」
「……はるか。」
八雲の口が小さく動く。だが、それは晴香の耳には届かない
「ごめんね。無理に起こして…もう休んでいいよ?」
そう言うと、お盆を片付けるべくキッチンへ戻ろうとする晴香。
「晴香。」
今度ははっきりそう呼ばれる。
「え?」
名前を呼んでくれないのは、もう慣れっこだが。
急に名前を呼ばれるのには、慣れない。
「八雲…君?」
晴香の足はすでに止まっていて…問いかけと共に振り返る。
「…僕だけなのか?」
「え?」
「…君に逢いたかったのは僕だけなのか?」
お盆を持っていないほうの手をぎゅっと握られる。
「君に会えなくて寂しかったのは僕だけか?無性に…君が恋しくなったのは僕だけか?」
そんな事を言うのはずるい…。
ついでにそんな顔で見つめるのもずるい…。
そんな寂しそうな顔をされたら…思わず抱きしめてしまいたくなる。
「違う…よ?」
「私も…逢いたくて、恋しくて…寂しかった…よ?」
「なら…寝ろなんて言わないでくれ。」
グイッと手を引かれて、引き戻される。
「でも、疲れてるでしょ?」
座っている八雲を見下ろす形になる晴香。
「…君と、過ごす時間の方が大事だ。」
ゆっくり微笑む八雲。
「うん。」
それに返すように笑う晴香。
「一緒に食べよう。麺が伸びる」
「…そうだね。」
お盆をおいて、席に着く晴香。
『いただきます』
2人同時にそう言う。
偶然だが声が揃ったことが面白くて、2人で笑いあった。
「ほんとに、無理しなくていいからね?」
「久しぶりの君の料理なんだ。食べさせてくれよ。」
歌うようにそう言う八雲。
「それに、折角美味しいんだ。全部食べても罰はあたらないだろ」
平然とそう言う八雲だが、滅多に言わない事を口にした。
「ほんとに美味しい?」
「…あぁ。不味いものばかり食べてたからな…君の料理の美味しさを実感するね」
「…不味いものって…何?」
「いろいろ。」
そう言うとかまぼこをぱくっと食べる。
「ねぇ。どこに行ってたか…聞いて良い?」
「……。聞きたいのか?」
「…うん。だって、ほんとにいきなりいなくなっちゃったんだもん…。」
その返事を聞いてちらりと時計を見る八雲。
「食事中には…ふさわしくない話題だな。もう少ししたら、ニュースでやるだろうけどな。」
麦茶を喉に流し込んで話を続ける
「…君が見ても、不快感を受けるだけだと思うぞ?」
「それでも。それでも…ちゃんと知りたいから。八雲君が何をしてたか」
「…そこまで言うなら、止めない。」
そう言うと再びうどんを口に運んで、旨い…と呟いたのだった。
『最後に冒頭でもお伝えしましたが連続女性誘拐事件の速報です』
「…これだ。」
食事を終え、ソファーで寛いでいると八雲がそう言った。
天気予報と動物園でベビーラッシュだという話の後にいきなりそんな話題で少々面食らう晴香。
『長野県警前より「え?…」』
思わず発してしまった言葉。
「…奴が監禁してた場所が、長野の別荘地だったんだ。」
八雲が説明を加えるその間にも、スタジオから画面が変わる。
『はい。こちら長野県警前です。誘拐事件の女性の身元が判明しました。県警の発表によると、遺体は複数ありバラバラの状態で放置されてい…』
ブツッと…テレビを消す八雲
「…大丈夫か?」
晴香の顔をそっと覗き込む。
「平気。」
そうは言うものの、顔色はけしてよくない晴香。
「後藤さんのところへの依頼、だったんだ。」
晴香を抱き寄せながら説明を始める八雲。
「僕たちに、公的権力は何もないからな。監禁場所が分かっても、下手すればこっちが不法侵入で逮捕されかねない。だからひたすら待つしかなかった。」
「待って…どうしたの?」
「犯人が来て…問いただした。まぁ、これは後藤さんの仕事だったけどな。」
後は、知らなくていい…といわんばかりに口を閉じてしまう八雲。
「怪我とか…してない?」
八雲を見上げてそう訊ねる晴香
「…大丈夫だ。」
「ほんと?」
「…なんなら、見てみるか?」
にやりと笑う八雲。それに対して一瞬にして顔が赤くなる晴香。
「…見る」
沈黙のあと不意に晴香がそう呟く
「え?」
面食らったのは八雲のほう、冗談のつもりだったのだが…。
「…八雲君が…遠くに行っちゃった…気がして…。恐かったから…」
ぎゅうっと…八雲のシャツを握り締める。
「だから…ここに居ること…確かめたい…し…。」
「そう言うには…それなりの覚悟。あるんだろうな?」
「…疲れてるくせに。よく言うわよ。」
八雲を見上げてそう言う。
「それとこれとは、話が別だ」
額にキスをする八雲。
「いいよ…。八雲君」
「…まったく君は…素直なんだか、頑固なんだが…。」
晴香の反論を聞く前に唇を塞いでしまう。己のそれで。
「手加減、できないぞ。」
そう言うと再び唇を合わせる。
酸素さえいらない程に、相手の唇に貪りつく
「ただいま。…晴香」
「おかえり。八雲君」
「おかえり。八雲君」
END
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