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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月19日 (Sun)
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2011年09月07日 (Wed)

えーっと…4巻後。

で、何事もなかったかのような真志。


某、サイト様の記念に献上しようと思って書き始めましたが…。

書いてる間に何が書きたかったのか謎になった…(苦笑)
&リクと異なったのでボツに。

再利用してUPです

が、やっぱりなんかオチが無い……(苦笑)


『そうして、お姫様は王子様と結婚して幸せになりました。…おしまい。』
『いいなぁー。素敵な王子様…。』
『志乃にも、きっと王子様が現れてくれるわよ』
『ママ、ホント?本当に私にも王子様、がきてくれるかなぁ。』
『志乃が素敵な女の子になったらね。さ、もうおやすみなさい。』
『はーい。おやすみなさい、ママ』

寝る前に…読んでもらった、おとぎ話。

いつか、素敵な王子様(ひと)と出会って…幸せになる。

女の子が、一度は抱くそんな夢を…

あきらめてしまったのは、いつからだろう……。



「暑い。」
思わず、目が覚めた。
7月の始め、しかも夜というのにこの暑さ。
一体今年の夏はどうなるんだか…末恐ろしい。
背中に感じる汗が不快で…真田は起き上った。
携帯電話に手を伸ばして時刻を確認する。午前2時11分。
何とも、中途半端な時間に起きてしまった。
とりあえず、部屋の中の淀んだ空気をどうにかしようと窓を開ける。
外の空気も…温度的にはさほど変わらない。
げんなりしつつ…何気なく外を見て…驚いた。
「志乃…?」
玄関先に見える…車椅子に座った人影。

何かをしているわけではなさそうで…ただ、空を眺めている。
念のため、視線を空に向けてみるが案の定、何もない。
流れ星とか未確認飛行物体とか…じっと観察するようなものは何も。


見間違えることはない…その姿を見つけてしまって…
二度寝どころではなくなった…。
とりあえず、汗を拭いて…シャツを着替える。

最低限の身だしなみを整えて…

物思いにふけっている、恋人の元へ向かった。

恋人と言っても…まだ何も進展はないのだが………。






夢を、見た。

起きて…涙が流れているのに気がついた。

一人で夢の意味を考えたくて…

水を飲みに降りた後、玄関のドアを開けた。

生ぬるい、風が頬を撫でる。



前後は覚えていないけれど…。

焼き付いて離れない、映像がある。

「どうして助けてくれなかったの…?」

苦悶に歪む顔。頭から流れる血。

ホラー映画のような…その顔が頭から離れない。

ぎゅっと、目を閉じて…頭を振ってその映像を振り払った。



人が死ぬ夢を見る回数が減ったと言っても…

今まで見た、映像は消えてくれない。

過去は変えられない……。

見殺しにしてしまった…人がいるのは事実だ。

助けられた命はある。

それでも…それをしたのは

ぼろぼろになってまでその命を救ってくれたのは

他でもない、ファミリー調査サービスのメンバーだ。

「私は……」

なにも…できない……。



昔々。寝物語に聞いた、話。



王子様と幸せになりました…なんて…嘘だ

王子様が現れただけで…幸せになれすはずがない…



「志乃。」
いきなり、名前を呼ばれて…びくんっと体がはねた。
「こんな時間に、何してるんだ?」
続いて聞こえてきたそんな声に…慌てて顔を上げた。
「さな…だ。君?」
驚いて…声のしたほうを見ると…ジャージにTシャツ姿の真田がいた。
「正解。」
にやっと…人懐っこい笑みを浮かべたが…すぐに真顔になって、歩みよってきた。
「いくら、塀に囲まれてるからって、不用心すぎるぞ。」
しゃがみ込んで、視線を合わせた。
「どうしたんだ?こんな時間に…」
心配そうな声…でそう尋ねられた。

本当に心配してくれているのが分かって…


それが、…不謹慎だとわかっていても、嬉しくて…。

「志乃?なんで泣いてるんだ?」

涙が、出た。

「ご、ごめんなさい…大丈夫…。です。」
慌てて、涙を拭ったが…後から後から流れでる涙。
「志乃…」
「もう、寝ますね…。おやすみなさい」
これ以上心配を、掛けたくなくて…そういったが…視界が霞んでそれどころではない。
「志乃。」
名前を呼ばれて…ポンポンっと、肩を叩かれた。
「悪い癖だぜ。一人で抱え込むの。」
そう聞こえたかと思うとやふわりと、体が浮いた。
「きゃっ!?さ、真田…くっ…。」
慌ててしがみつくと、すぐ近くに彼の顔があって…ドキッとした。
「吐き出しちまえよ。全部。」
と、言いながらも、彼はすたすたと歩き出した。
「さ、真田くんっ!どこに行くんですか!?」
「どこにしようか?」
と、なぜか楽しそうにそういった。
「選択肢1、俺の部屋。」
「なっ………」
「選択肢2、志乃の部屋。以上。」
二つの選択肢を提示したが…返答はなく……。
オーバーヒートでもするんじゃないかと思うぐらい…顔の赤い志乃がいた…。
赤くなった顔も可愛い。
だが、これ以上…は口をきいてくれなくなりそうなので。
黙ったまま、志乃の部屋へ向かった。
ベッドにおろすと少し怒ったような目で見上げられた。
「車椅子取ってくる。」
そう言って、踵を返したが…返事はなかった。
どうやら機嫌を損ねたようだ。


だけど…


泣かれるよりは、ずっといい。




車椅子と、コップを二つ、そしてペットボトル入りの水をひとつもって、部屋に戻る。
ノックをして部屋に入ると、部屋の中の温度が明らかに違った。
涼しい。
壁際を見ると、エアコンが作動していた。
その流れで志乃を見ると…ふいっと、視線をそらされてしまった。
まだ怒ってる…らしい。
怒った顔もかわいい…と思ってしまうのは…結構な恋の病である。
車椅子をベッドサイドに置いて…そのシートの上にトレーを置いた。
「喉、乾いてないか?」
ベッドに腰掛けた真田はペットボトルから水をグラスに注ぎ先にコップの中の水を飲んだ。
少しの間…沈黙があって…。
「いただきます…」
っと、か細い声がした。
第一関門突破…っと、心の中で思いながら…志乃にコップを手渡した。
「どうして、泣いてたんだ?」
水を飲み、息を吐きだした志乃に真田はそう問いかけた。
「………………。」
言いにくそうに口ごもり…志乃は再び水を口に含む。まだ、目が赤い。
「辛い事があったら言えって…言ったよな?俺、そんなに信用されてないのか?」
「ちっ違います!」
思わず、叫ぶように否定してしまって…真田に苦笑いされた。
人差し指を立て、ジェスチャーだけで静かにするように伝えてきた。
「そうじゃ…ないです。」
意識して…声をひそめて…志乃はそういった。
「じゃあ、どうしたんだ?」
「少し、考え事を…してました。」
「こんな時間に?あんな場所で?」
信じられないというニュアンスを含んだ真田の言葉に…。
追求されることを覚悟した志乃は、口を開いた。
「…夢を…見たんです。」
「夢?」
真田の表情が一段と曇る。
「人が死ぬ、夢じゃないんです…」
「…じゃぁ、どんな夢…だ?」
真田の問いに…志乃は一度意識してから呼吸をして口を開いた。
「『どうして、助けてくれなかったの?』って…」
「?」
何を言っているのかわからないっという風に…それでも、心配げに志乃を見た。
「…私は…。見ているだけで…助けられなかった…」
今でも、そうだ…。
「……何もできない…。」
志乃はうなだれてしまった。
時々…不安に駆り立たれることがあるのは…知っていた。
彼女の過去を考えたら…不安がるのもしょうがないと思う。
今でも、人が死ぬ夢を見るのは知っている。
「志乃…。」
でも、それは志乃のせいじゃない。
「……志乃のせいじゃない…だろ。」
その…震える細い肩を抱き寄せた。
一瞬、びくっとしたが…抱きしめる力を強くしたら、それに反比例するように…こわばっていた身体の力が抜けていく。
「志乃はさ、優しすぎるから…自分を傷つけるんだ。」
先の事件の概要は志乃も知っている。真田が抱いたジレンマも…。
「俺もさ…何が正しいか、って、わかんねぇけど……正しいと思うことを、するしかねぇよ。」
志乃の頭をなでると…ぎゅっと、服を握られた。
「でも…私は…。」

幸せに…なっちゃいけない……。

そんな、声が、はっきり聞こえてきた。
小さい声だったが、重い言葉で…ずっしり…胸に響いた。
「そんなことない!」
悲しすぎるその言葉を…全力で否定した。
「志乃…。」
じっと…その顔を見つめる。
長い睫毛に淵とられた、大きな黒目に充血した眼。
志乃の苦しみの…半分も理解できないと思う。
「そんな…悲しいこと…言わないでくれよ。」
頬に、手を添えてその頬をなぜる。すべすべとした肌は、つい…触れたくなる。
「幸になっちゃいけない…とか、やりたいことをあきらめなきゃいけないとか…それは、いいわけだ。」
びっくりするような…厳しい声がして…志乃は驚いたように目を見開いた。
「真田…君?」
「逃げるなよ。」
「……え…?」
「幸せから逃げるなよ。」
真摯な視線に胸が高鳴るのが分かる。
「俺は…志乃と居て、すげぇ幸せなんだ。」
そう、聞こえてきたかと思うと…ぎゅっと抱きしめられた。
「俺は、志乃に笑ってほしい。」

だから、そのためなら何でもする。


耳元に…そんな声が聞こえてきた。



「…真田…君。」
「俺は、志乃の味方だから。」

「……はい。」

「志乃。」

笑ってくれ…。



俺の原動力は、それだから。



待ちわびた…笑顔が…


ゆっくりと…顔に広がった。



END


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