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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月20日 (Mon)
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2010年10月11日 (Mon)
・同棲への一歩
男爵~後の こうだったらいいなぁ~な、三千
需要の有無は置いといて(爆)


・君の足跡

引っ越し話その2。
荷物整理…と言う名の三条さんののろけ(爆)


・同棲への一歩

志郎の引っ越しは急ピッチで行われた。
今を逃せば立て続けに原稿の締め切りが入っていた、締め切りは待ってくれない。

「アニキ、お昼できたよ。」
客間…という名の志郎の書庫に顔をのぞかせた千鶴は案の定の光景を目にしてため息をついた。
「そんなんじゃいつまでたっても引っ越しできないわよ。」
部屋の中央に座り込んでなにやら本を読んでいた。
よくある、整理をしているとつい読んでしまう…のついにやられて形になる。
「こら、お昼だって言ってるでしょ。」
「ん?あぁ…あとちょっと…」
集中するとこれだから困る。
「あと5分でこなかったらミートソースにタバスコ入れてやるやらね!」
いつかやってやろうと企んでいたことを言ってから、客間を出た。
テーブルの上にタバスコをおいて待っていたにも関わらず、ぎりぎりのところで志郎はダイニングへやっていた。
「おまえ、本当にするつもりだったのかよ。」
「有言実行するのよ、あたしは。」
「ひどい妹だなぁ、亜由美さんの爪の垢でも煎じて飲ませたいよ。」
「よく言う、アニキにこそ飲ませたいわよ。」
兄妹のいつものやりとりをしながら昼食を終えた。
「ところでさ、間に合うわけ?引っ越し」
「間に合わせるしかないでしょう。」
食後のコーヒーを飲みながら志郎は他人事のように言った。
「そんな全部持って行かなくてもいいんじゃないの?」
「だから客間から片づけてるだろ。少なくともあそこは片づけないとなぁ。」
といっても客間にあるのは本の山なので、段ボールに詰めればいいだけの話のように思うがそれがなかなか手強い。
「ま、引っ越してこれるぐらいには片づけるさ。心配しなさんな」
「そう……。」
っと言って千鶴は気がついた。
「引っ越してこれる?」
「ん?」
「誰が引っ越してくるのよ?」
「誰って…三条さん以外に男がいたのか?」
「いるわけないでしょ!って…そこじゃないのよ。何で三条さんが引っ越してくるわけよ。」
からかっているのか本気なのかいまいちわからない千鶴は用心しながらそう聞いた。
「なんだ、まだ言ってないのか?三条さん。」
「ちょっとちょっと、当事者置いて二人で話進めないでよ。」
なんだか嫌な方向に話が転がっていきそうになって…千鶴は抗議の声を上げた。
「一人暮らしだと何かと不便だろ。それに心配してたし。」
「心配?何が?」
「三条さんが。お前がこの家で一人暮らしになるのを。」
「だからって…その…。」
「いいんじゃないか。結婚を前提におつきあいしてるんだろ?同棲してもさ。」
「い、いきなり同棲とか!やめてよ。」
「じゃぁ、いきなり結婚する僕の立場はどうなるんだよ。」
それをいわれると、ぐうのねも出ない。
結婚を勧めたのはほかでもない彼女自身なのだから。
「まだ話してないなら…今日あたりかもな。」
「なにがよ?」
「正式な同棲の申し込み。三条さんのことだから、昨日一晩何言おうか考えてたのかもね。」
志郎はそういうと…悪戯っ子のような笑みを浮かべた。


三条の訪問の知らせがきたのはそれからすぐのことだった。


インターフォンが鳴ると今まで寝ていたダミアンが起きた。
(きた…っ)
結局、午後からしようと思っていた仕事は全く手に着かなかった。
愛用のスケッチブックもほぼ白い。
妙な緊張感を覚えながら千鶴はインターフォンに出た。
ーあの、三条です。
「あ…うん。今あける。」
電話で用事を聞いても、着いてから話すの一点張りだった。
(こりゃ腹くくるしかないか…。)
志郎は食事を終えるとさっさと客間に引っ込んでしまった。
が、あまり物音がしないところをみると、また読みふけってしまっているのだろう。
鏡で自分の姿を確認してから、玄関を開けた。
「やぁ。」
はにかんだような表情をした三条がそこにいた。
仕事でかけずり回っている…というわけではなさそうだが、非番でもなさそうだった。
「玄関、直ったんだね。」
三条の服装をスキャンしていると彼はそういった。
「うん。さすがにあのままじゃ不格好だからね。あがって。」
「おじゃまします。」
リビングにいたダミアンは三条の姿を見るや否や手荒い歓迎をはじめた。
「三条さん、お茶でいい?」
「あ、おかまいなく…ちょっ…まっ…!」
手荒い歓迎をもろに受けている声を聞きながら、千鶴は冷蔵庫からお茶を取り出した。
初夏とはいえ、そろそろ冷たいお茶が恋しくなる季節だった。
「志郎さんの引っ越しはどうかな?」
リビングにコップを二つ持っていくと三条はカウチに座ってダミアンの耳の後ろを掻いていた。
「まだまだ。アニキは本読み出すと止まらないんだから。」
志郎から何も聞いていないという風に振る舞って、千鶴は三条の顔色をうかがった。
別に意地悪をしようとしている訳ではないが…もし志郎の言うことが本当ならば、本人の口から聞きたかった。
「そういえば、何か用事があってきたんでしょ?何か事件?」
コップを置いて、向かいに座りながらそう聞いた。
「いや…志郎さんじゃなくて千鶴さんに用事があったんだ」
「何?」
「その…。千鶴さんはこの家に残るんだよね?」
「そのつもり。両親もアメリカから帰ってこないし…ダミアンと二人ならいいかなって。」
千鶴のその言葉に、三条は居住まいを正した。
(あ、来る…)
「千鶴さん…。」
思わず息をのんで…答えるのが遅れた。
「何?…」
「昨日、志郎さんには話して許可をもらったんだ。後は千鶴さんの気持ち次第なんだ。もちろん強要するつもりはないしもしよかったら…なんだけど…」
まどろっこしいのを抜きにしてさっさと本題にいってほしかったが、そこはぐっと我慢した。
「千鶴さん、僕はね。君を守りたいんだ。東京での事件の時も言ったよね。それに、今回のこともあったし…。これ以上、千鶴さんの身に何かあったら…僕は警察としてやっていける自信がなくなりそうなんだ。…その、大事な人…すら守れないなんてことになったら……」
一度、口を閉じてしまえばもう言えなくなってしまうかのような勢いで三条は喋った。
「女の子の一人暮らしほど物騒なものはないと思うんだ。だから…その…」
一度息を吐き出して三条は千鶴を見つめた。
「もしよかったら…この家で一緒に暮らしたい。」
怖いぐらい真剣な眼差しで三条はそういった。
そして流れる沈黙…。
「……ち、千鶴さん?」
あまりに反応がないので心配になったのだろ、おそるおそる名前を呼んだ。
「嫌なら、いいんだ…結果として、ここに転がり込む形になってしまうし…ご両親のこともあるだろうし…」
千鶴の顔色を伺うようにそういう三条。本当に、案じてくれているのが分かったけれど
「一つ、いい?」
「なんだい?」
千鶴の言葉に表情がこわばった。
「……一緒に住むってことは、当然、嫌な面も見えてくると思うのあたしなんか不規則な生活だし…いつも今みたいに綺麗にしてる姿じゃないわよ。」
「うん。そうだろうね。でも、千鶴さん。一応『結婚を前提に』おつき合いしてる…わけだろ?そういう嫌な面も…結婚してから知るよりはいいかと思うんだ。」
「分かったわ。本気なのね?」
「もちろん。」
「締め切り前とかすごいわよ。」
「それは経験済みだよ」
苦笑いをして三条はそういった。
「千鶴さんこそ、いいかな?事件が起きたら寝るだけに帰るようになると思うよ。長期化したら家を空けることにもなるし。」
「それは…大丈夫。一人で住む覚悟してたところだから…。」
三条はその言葉を聞いて、肩の力を抜いた。
「それじゃぁ…その…。一緒に、暮らしてくれますか?」
「はい。」
頷くのと同時にしっかりと返事をした。
安堵の笑みを浮かべた三条はすっかり汗を掻いているコップをもってお茶を飲み干した。ずいぶん緊張していたのだろう。
「おかわり、いる?」
「あ、お願いできるかな?」
「ちょっと待ってて。」
そういうと、キッチンに向かって歩きだした。
「や、三条さんいらっしゃい。」
「あ、どうもお邪魔してます。」
そんな声が聞こえてきたので、千鶴はもう一つコップを出して持っていった。
「アニキ、飲む?」
「お、気が利くじゃないか。関心関心。」
志郎にお茶を渡して、空になった三条のコップにお茶を注いだ。
「三条さん今から仕事?」
「いえ。仕事終わりです。」
「そっか、じゃぁ、夕飯食べていきなよ。」
「あ…いえ…。そこまでは」
「いいっていいって。どうせ今から買い物行くから。」
戸惑う三条を押し切るように志郎はそう言った。
「え?アニキが作るの?」
「気分転換にはちょうどいいだろ。今日はずっと家にいたし。」
「そりゃあいいけど…」
志郎の料理の腕は悪くないし、作ってくれるのであればありがたいのだが…何かありそうな気がしてならない。
「そういえば、千鶴。小豆なんてものはなかったよな?」
「小豆?あるわけないでしょ。何に使うのよ」
「いやぁ、赤飯でも炊こうかとおもってさ。」
「はっ?」
千鶴は間抜けな声をだし三条は固まっていた。
「赤飯だよ。赤飯。やっぱりめでたいときには赤飯でしょうよ」
「め、めでたいって!アニキ立ち聞きしてたわけ!?」
「嫌だねぇこの妹は。お兄さんの洞察力にかかれば聞いてなくてもわかりますよ。」
そういうと志郎は立ち上がって玄関に向かった。
「ちょっと!まちなさい!アニキっ!」
あわてて追いかけた千鶴の後ろ姿を見て三条は苦笑した。
「本当に、仲がいいな。お前のご主人は」
膝の上にいるダミアンにそう話しかけたが…当然返事はなかった。

END

志郎さん…分からん(苦笑)

だけどこうかな(笑)



・君の足跡


三条の家は中村区で…霞田家は瑞穂区。
幸いにして、車はあるので荷物の運び込みは可能だった。
手伝ってくれた志郎と亜由美にお礼を言って…部屋に戻った。
兄の本がなくなったのでだいぶすっきりした…と思ったのだが…
「なんかすごい量…。」
運び込まれた段ボールの山は…出ていったのと同じぐらいの量はあった。
「本はかさばるからね。」
三条は苦笑してそういった。
志郎の部屋はそのままに、場所は客室の一つを彼の部屋とした。
「…さて、片づけちゃいましょうかね。」
千鶴はそういって段ボールに目をやった。
「あぁ…いいよ。本は僕がやるから…」
「でも、服は三条さんが片づけた方がいいでしょう?」
「そうだね…。でも、先に食事かな?」
「え?」
時計をみるとお昼の時間だった。
「あ、ごめん!忘れてた。なにがいい?」
「簡単なものでいいよ。」
「ちょっと待ってね。」
そういうと千鶴は急いで冷蔵庫の中身をチェックした。
が、食材は買い出しに行かなければないような有様だった。
となると頼みの綱は保存食だった。
「三条さん、ラーメンでいい?」
客間に声をかけると
「いいよ。」
っと返事がかえってきた。
といってもそれだけ、というのは千鶴のプライドが許さなかったので、野菜を切ってサラダにした。
昼食を共にとって…また片づけを始めた…。
といっても、千鶴は仕事をしなければならなかった。
用事があったら呼んでくれるようにと頼んで、二階に向かった。
ノートを取りだして、コマ割作業をした。

一応、キリのいいところまでおわって、一階におりた。
(まだ、部屋かな?)
千鶴はそう思って、客室…こと三条の部屋をノックした…が返事はなかった。
不思議に思って…部屋を開けたがもぬけの殻だった。
ダミアンもいなかった。
「?」
部屋の中には空の段ボールがいくつかあった…がまだ開いていないのもあった。
ちょっと、興味があった。ちょっとした好奇心。
千鶴は手近にあった段ボールの中をのぞいてみた
段ボールの中にピンクの本が目に飛び込んできた…正確には雑誌。
(うわっ…)
反射的に蓋を閉めようとしたが…手は動かなかった。
その雑誌にいわゆる大人向けのものではなく…やたらかわいい女の子が描かれていたから。
表紙の上部に描かれているタイトルを読んで、千鶴は安堵した。
それは、有名の少女マンガ雑誌の名前だった…。
「なんだ…」
まさかと思って、別の方もあけてみると…またこれもすごかった。
(こ、これは恥ずかしい…)
「薔薇のいあ」がこれまで発行したものはもちろん、霞田千鶴の単行本はもちろん、雑誌ー千鶴が作品を掲載していたものが入っていた。
(ひょっとして…あたしの書いた作品全部持ってるんじゃ…。)
そう思うと嬉しいやら恥ずかしいやら…複雑だった。
萩尾望都、竹宮恵子、山岸凉子…三条が好きだといっていた、漫画家の本も見える。
なんというか…改めて、すごい…と思った。
「あ、」
アン!っと聞きなれた声がして…客間をでた。
「ダミアン?」
玄関のインターフォンがなって、三条の声がした。
「や、ごめん…。禁句を言っちゃってさ…。」
苦笑いをした、三条が玄関に立っていた。
「出かけるなら…一声かけてくれればよかったのに」
千鶴はダミアンの足を拭いて、家にあげた。
「邪魔しちゃ悪いかなって。」
三条も、家にあがって…ふと考えたような表情をみせた。
「……?どうかした?」
「いや…その…。」
三条ははにかみながら…口を開いた
「ただいま。」
何気ない挨拶なのに、そう照れながら言われては妙に意識してしまう。
「お…おかえりなさい。」
そんなやりとりをしている二人の足下を…ダミアンは不思議そうにいったきりたりしていた。
「荷物、まだ片づいてないんでしょう?」
「あ、うん…本は…まだ…だね、つい読んじゃって…」
「手伝うよ。」
「…うん、じゃぁ、お願いしようかな」
少し考えるように黙ったあと…三条はそういった。
「でもその前に、ダミアンに水あげた方がいいかもね。」
「…うん。」
舌を出して呼吸をしているダミアンを抱き上げて…千鶴はキッチンにむかった。
三条はその後ろ姿をみて…客室へ向かった。

仕事をすませて…千鶴が客室に向かうと…ドアは開いていた。
中を覗くと三条が部屋の真ん中に座っていた。
そこそこかっこいい男性が少女マンガに囲まれているという絵は…滅多にみられるものではなかった。
「三条さん…」
「ん…。やぁ。」
顔をあげて…三条は笑った。
「…びっくりした…かな?」
千鶴の顔を見て三条はそういった。
「うん…聞いてたし、知ってたけど…」
いざみると違う…思っていたより…
「なんかかわいい…」
千鶴のその感想に…三条は不思議そうな顔をした。
「さ、片づけましょ。」
そういって千鶴は手近の段ボールをあけた。例の…雑誌が入っているやつ。
「…雑誌、どうする?」
「それは…置いておくよ。先にこっちを出すから…入れてもらっていいかな?」
そういって、三条は…もう一つの段ボールを本棚に持っていった。
例の千鶴の本ばかり入っているやつ…だった。
「…渡す順番に入れてもらっていいかな。」
「了解。」
っそういって…千鶴は本棚の前に陣取った。
まずやってきたのは『薔薇のいあ』だった。
「そういえば、千鶴さん『薔薇のいあ』の○年に出した漫画の在庫はあるかな?」
記憶力のいい三条はこともなさげにいうが…千鶴は記憶をたどらなければならなかった。
「えっと…なにが乗ってるやつ?」
「『カエサルの宝玉』が描いてある」
げっ…っと言いそうになってあわてて飲み込んだ。
三条が、千鶴の作品に惚れた…っという例の作品だ。
「ど、どうだろう?亜由美に聞いてみないと…」
「読みすぎて、痛んでるんだ。できれば保存用がほしいと思って。」

そういって、迷いもなく一冊の同人誌を取り出した。
見間違いようがない『薔薇のいあ』の同人誌。
「やめて読まないで。恥ずかしいから!」
「漫画家が、自分の作品を見られるのを恥ずかしがってどうするって言ったのは千鶴さんでしょう?」
「それでもだめだって!まだ未熟だし」
「僕は好きだけどな。」
さらっとそういうことをいうんじゃない!
と…喉まででかけてのみ混んだ。
「読みだしたらとまらないでしょ。」
千鶴がそういうと三条はあっさり取りやめた。
次に渡されたのは漫画本…スタンスに出るようになった千鶴の作品たち。
そして次は…漫画雑誌がずらりと並ぶ。
「…捨てられないんだよね。こういうのは特に。」
雑誌の一つを持ったまま、しみじみ三条は言った。
「…三条さんって…」
その表紙をみた…千鶴は思わず言ってしまった。
「そんなにあたしの作品…好き?」
その雑誌は、巻頭カラーに千鶴の作品があるものだった。そして表紙も彼女の絵が飾っている
「うん。好きだよ。」
はにかみながら、三条はそういった。
「さらっとそういうこと言わないでよ。」
一度は飲み込んだ言葉が、今度は出た。
「?」
三条は、わからない…というように首を傾げたが…素直にごめんっと謝った。
こっちの心臓がもたないのよ!
っと…心の中で抗議した…。心の中だけなのはいってしまうと余計に意識してしまうのが目に見えているから…だった。

一番嬉しかった…といって、見せてきたのは一度しまった単行本の…後書き部分。

スペシャルサンクス に描かれた…自分の名前を指さした彼の顔は。

反則的な笑顔だった。




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