忍者ブログ
2024.05│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月20日 (Mon)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2010年10月11日 (Mon)



華鬼×神無


本編終了後かな。ネタバレ注意。


「華鬼だけの花嫁になっていい?」

その言葉を聴いたときからずっと疼いていたものがあった。
その正体が最近ようやく分った……。






木籐家にとってもそして一般的にも深夜、と呼ばれる時間にふと目が醒めた。
これは珍しい事だ。添い寝が当たり前になってからは深い眠りが常だった。
ー何故だ。ー
眉をひそめたが…その原因がわかって彼は思わず微笑した。花嫁の…神無の肩が布団から少しはみ出している。
「しゅっ…。」
そんな声で随分外気に曝されていたのだとわかって、気付くならもっと早く気付けと自分に少し当たっる。
その肩を抱きよせると手から伝わったのは微かなぬくもりだけで余計苛立つ。
八つ当たりするように布団を引き上げ…熱を逃がすまいとその肩をさらに強く抱いた。
誰かと…褥を共にするなど考えられなかった。だが、知ってしまったそれはまるでそれが普通のように心地よい時間を与えてくれる。
幸せだなんて陳腐な言葉では表せないほどの感情を彼女は与えてくれる。どんなに感謝しても…たりない。
一度冴えた脳はなかなか眠気を催さない。何気なくその翠の黒髪を梳き寝顔を見ようと少しだけ身体を離す。
視界に赤い色が見る。
一瞬にして、胸がざわついた。

胸元に咲く大輪の花。鬼の花嫁に刻まれる刻印。

腕を放してベッドに横たえ、そっと胸元のボタンを外す。
二つ外したところで見えるのは自分の印。
どの花嫁よりも大きく艶やかで妖艶な雰囲気さえかもし出す華
その側に…その大輪の華から散った花びらが集ったような…小さい花が四つ。

そのうちの三つが刻まれたあの夜の事は忘れはしない。婚儀の夜。

「死ぬほど後悔していただきます」

あの時はただ侮辱と怒りに燃えていた。そんな台詞を言われた事など、忘れていたぐらいだ。

その言葉の意味は…今自分が捕らえているのとは違うのかもしれない。
だが、今の状況を読んだような台詞と思えてならない。

自分だけの花嫁になるといった時から…この刻印を見るたびに疼く思い。

ーオレの花嫁に手を出すな
 オレだけの花嫁なんだ
 やっと見つけた…たった一人の大事な人ー

その刻印の周りの刻印。
目障り…というほどではないが気分のいいものではない。
だが、普通の鬼が思うように穢された…とは思わない。一番、彼女を穢していたのは自分自身だ。
三翼が印を刻むに至ったのも…原因は自分にある。
あの頃はアレでいいと思っていたのに…今更こんな事を思うなんて馬鹿だとしか言いようが無い。
でも、ずっと知らずにいるよりはよかった。それを分らせてくれたのはほかでもない彼女だ。

四つのうち…三つは許せる。だが、最後の一つは話が違う。

求愛の証などではない。マーキングでもない、ただの恐怖と嫌がらせの種、その花が咲いたもの。
しかも、それはオレへの見せしめのためだけに。そんな理由で、印を刻んだのだあの男は。
彼女はこの印を消そうとして、自傷しようとしたと聞いたのは…随分後…つい最近のこと。
暫くは何も考えられなかった。頭が真っ白というのはああいう状態…次に沸いて来たのは激しい怒り。
骨3本と肋骨だけでは足りない代償、いっそ首も折ってやればよかったと…本気で思った。

刻印は消せない…。それがどんなものであろうとも。

だが…
ーこの印だけは許せない。ー

指でその印をゆっくりなぞりながら…ふつふつと怒り沸いて来るのを感じる。


それでも、この5つもの印を持つのは紛れも無く…愛おしい花嫁の神無の身体で…。
手術で表面だけ印が消えるとしても…もう神無を傷付けたくは無かった。

彼女の身体をこれ以上傷付ける事はのは何人たりとも許さないと誓ったのだ。


なにより…
こうして…まじまじと刻印を見れば怒りは沸いて来る。それは確かだ。
だが、それを全部含めて…神無が大切なのだと分っている。彼女の全部が愛おしい。

顔も声も身体も髪も…傷も刻印も、全部を含めて…愛しているといえる。

その刻印を一つ一つなぞっていると腕に手が触れた。
「…か…き?」
寝起きの…まだ覚醒していないぼんやりとした声が耳に心地よかった。
「寒い…。」
両腕が伸びてきて、首に絡まる。寝ぼけているんだろうか瞳がまだ虚ろだ。
「すぐ暖かくしてやる。」
そう宣言してその身体を全部包み込むように抱きしめる。
ほんの数分だと思っていた時間は実際は長かったようだ。溶け合っていた体温が…いまや随分違う。
よっぽど寒かったのだろうか…ぴったりと身体を寄せてきた。
「あまり、強く抱くな。胎の子に障る。」
耳元でそう囁く…腕の力が抜けて首の周りに冷気が抜ける。
腕はそのまま下りてきてパジャマを掴んだまま、動かなくなった。
大した寝相だと思いながら肌蹴させた胸元の刻印へと唇を寄せた。
ぴくっと…微かに身体が跳ねた。だが構わず唇を寄せる。
何度も何度も

消せないのなら…。
自分のものだと誇示すればいい。
「華鬼…?」
他の刻印など飲み込むぐらいに大きな花になればいい。
艶やかに咲き乱れればいい。

その華を、守るのはオレの役目。

華鬼(はなおに)の名のとおり。
華(かんな)を守る鬼になろう。


その華が永遠に咲き続けるように…。

何人たりとも…その華を枯らせてしまわないように…。


「心配…しないで。」
はっきりとした声が耳朶に触れ、頭を撫でられるように手が動く。

ー起きたのか…。

もう一度強く…自らの刻印に唇を寄せてから…顔を上げると目が合った。

「私は、華鬼の花嫁だから…。」
小さく微笑みながら神無はそう言った。

「あぁ…。」
その一言が…何よりも嬉しい。


木籐(生徒会長)でも鬼頭(鬼の長)でもない…


華鬼(おれ)の花嫁だと…いってくれることが…。


返事のように身体を抱きしめた。

その体温全てを混ぜ合わせるようにしっかりと…。


END



華鬼に刻印にキスさせたかった。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
かっこいい・・・!!
華鬼かっこいいです!
神無かわいいです!!
撫子 2012/02/18(Sat)12:56:34 編集
初めまして
撫子 さま

今晩は!管理人の古谷と申します。
華鬼のお話にコメントありがとうございます。

華鬼のキャラクターはみんな男前で好きなのですが…
やはり神無には華鬼しかいないと思います。

華鬼も最初はあんな感じですが…和解してからは神無のこととても大事にしてると思います。
幸せの意味を噛みしめてるんだろうなぁっと…思いながら書きました。

刻印にキスをさせたかったお話でした(笑)

コメントありがとうございました!
【2012/02/19 22:04】
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
←No.501No.500No.499No.498No.497No.496No.495No.494No.493No.492No.491
ブログ内検索