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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月20日 (Mon)
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2010年10月11日 (Mon)
五感を向けて シリーズ



さて、ヤキモチ志乃ちゃん。

ちょっと珍しい設定ですが(爆)

脚直った設定で…同棲設定(新しくアパート借りました。)


バカップル→真田が意地悪路線


自分が完璧じゃないことぐらい分かってる。

同じ年の子と比べても貧相だと思うけど…。

それでも…。

恋人に選んでくれたんだから…。

他の人を見るのはいやだ。

あたしの…我がままだけど……。

あたしだけを…見て欲しい…。




『じゃぁ、いってくるわね。』
『了解。見失うなよ。』
『そっちこそ。』
2人が軽口を叩きながらはいつものこと。
それにも大分慣れた志乃は車の中でパソコンを操作していた。
『真田。鼻の下伸ばしてるんじゃないわよ。だらしない。』
『誰が公香相手に伸ばすかよ。』
車の中にいない二人の声が無線から響く。
今日の白のスーツはその身体の曲線を強調するかのように公香の身体にぴったりだった。
いつ見ても、出てるところは出てるし引っ込んでるところは引っ込んでいる。一言で言えば羨ましい。
「今日は、脚の調子はどうだ?」
同じ車の中…運転席にいた山縣から声をかけられてはっと我に帰る。
「今日は…大丈夫です。天気もいいですし。」
雨の日になるとずきずきと痛む事があるが…今日は平気だった。
『じゃー、俺とデートする?』
弾んだ声が無線越しに聞こえてきた。
『何でそうなるのよ。』

無線のやり取りはいつもにぎやかである。

それでも仕事は仕事である。
今回は依頼人の妻がターゲット。浮気の疑いとのことだ。
割り切らなければと思うけど…複雑な気分だ。
どこにでもいる、普通の女性なのだ。母が生きていれば同じぐらいの年齢……。
じわっと…胃を握りつぶされるような不快感を振りはらった。経験を積めば慣れる。
自分にそう言い聞かせて志乃は車の中に居た…。

「地下街に下りた真田いけるな。」
『了解。志乃来れるか?』
「はい。」
『じゃぁ、一時のデートと行きますか。』
『精々バカップルやってなさい』
『独り身だからって僻むなよ。』
『そっちこそ、志乃ちゃんに愛想尽かされないようにしなさいよ。』
「行って来ます。」
白いニットの帽子の下に無線は仕込んである。髪の毛で見えないことを確認して…車を降りた。
まだ、1人では尾行させてもらえない。
地下街に続く階段を下りていく。風で煽られるスカートを慌てて押さえた。
こんなに短いスカートなんて履いた事がなくて…落ち着かない。
黒のタートルネックにチェックのミニワンピース、ニットのロングカーデガンを羽織って足元は黒のタイツに焦げ茶のブーツ。
カーデガンの内側に無線のマイクが仕込んである。
まだ、踵の高い靴はいざ走る時に困るから履けないと、踵のほとんどないのブーツ。
全て公香のコーディネートだった。
「志乃。西8番。パン屋の前。」
地下街に下りたところで無線から声が聞こえてきた。
言われたとおり…視線を向けるとそこに真田がいた。
「あ……。」
「?」
無線から漏れた呟きを不思議に思いながら小走りで寄って行く。
ライダースジャケットに黒のニット帽、中はロングTシャツに、チェックのシャツ足元は焦げ茶のブーツでそこにいた真田は小さく手を振った。
どこにでもいる、普通の若いお兄さん。
でも、あたしにとっては…特別な人。
「ごめんなさい。遅くなりました。」
弾む息を整えながらそういうと大好きな笑顔が帰ってきた。
「いいって、いいって。じゃぁ…行こうか。」
笑って差し出された手。
「はい。」
それを握って歩き出した。

脚が治って…歩けるようになって…隣を歩ける事が凄く幸せだと感じる。
同じ目線で見れる幸せ…。
といっても彼の方が随分背が高いけど…視線を追う事はできる。
彼が何を見ているのか分るのが嬉しい。
「?どうした?」
嬉しくてつい、手を握る力が入る。
不思議そうな顔で真田は問うてきた。 
「いいえっ。」
自分でも分るぐらい…笑顔でそう返した。

つい、仕事だというのを忘れてしまう事が…ある。
ターゲットがゆっくりウィンドウショッピングをしながら歩いているとなおさら…。

「この帽子、かわいいな。」
帽子の上についた毛糸のポンポンを指で弾いて真田はそう言った。
志乃が動くたびにぴょこぴょこ跳ねるそれ、確りと視界に入る。
「…帽子だけですか?」
探るような視線が向けられて柄にもなくドキッとしてしまう。
必然的に見上げてくる黒目がちな瞳は…何度見てもなれない。
「いや…特に帽子が可愛いっていっただけで…。他も可愛いよ」
「今日お揃いなんですよ…?」
「え?」
黙って帽子とブーツを指差す。色は違えどニット帽。そして同じ色のブーツ。
「あ~…なるほど。」
「………。」
「公香もたまにはいいことするじゃんか。」
「似合ってますか?」
「もちろん、似合ってるよ。志乃はそういう格好も可愛いよ。」
「………ありがとうごさいます。」
自分から振っておきながら…。
まだ少し、照れる。


楽しく会話が出来たのは最初のうちだけだった。
まだ…長距離歩くと足が痛い…。
びりびりと痺れるような痛みが走る。
リハビリをしても、7年間で落ちた分を補うにはまだ足りない
もっと筋肉つけないと…足手まといになる…。

「大丈夫か?」
心配そうな声が振ってきた。
大丈夫だと、返事をしようと顔を上げたとき…石畳に躓いた。
「っ…。」
咄嗟に足が出ない。
「!」
…痛みはなかった…
ざわっと、空気がざわついたのが分った。
「本当に、大丈夫か?」
腰に腕が回っていて…支えてくれていた。片腕だけで…。
男の人だと…こんなところで意識してしまってドキドキする。
「ありがとう…ございます。」
自分の足で確り立って。息を整えてからそう言った。
「志乃。少し休もうか。」
「平気です…。」
「強がんない。あっちも休憩だ。」
チラッとターゲットに視線を投げる、丁度カフェに入るところ。
「逢引って感じじゃなさそうだ。」
店の中にすでにいる女性と親しそうに話をしているのを見て真田はそう言った。
「ちょっと休憩だ。」
にっこり笑って真田は志乃をエスコートするように手を引いてカフェへと向かった。


そこはセルフカフェだった。
「あそこ、先に行って、脚伸ばしてな。」
真田が指差したのは角のL字ソファーの席。
「はい。」
志乃はこくりと頷いて…その言葉に従った。
学校帰りなのだろうか制服を着た女の子が店内にいる。制服からわかる私立の高校生。
他はサラリーマンと大学生らしき学生。そしてターゲットと一緒に居る3人の女性。
言われたソファーに座った志乃はゆっくりブーツを脱いだ。
歩ける感動は大きいけれど、度々こうしているわけには行かない。
自分の、細すぎる脚を見ながら溜息が漏れる。
もっとちゃんとしないと…いけないのに。
「はい、志乃。大丈夫か?」
次に聞こえてきたのは真田の優しい声だった。
目の前に置かれたのはアイスティーとドーナッツ。
そうして心配そうな真田の顔。
「ありがとうございます。大丈夫です。」
心配そうな表情をさせてるのが申し訳なくて…安心させたくて真田を見上げて言った。
「無理は禁物な。」
真田は志乃の隣に座った。真田の位置からはターゲットが確り見える。
「はい…。」
こくりと頷いてそういうと、ようやく大好きな笑顔が戻ってきた。

「なかなか、美味いな。」
真田はサンドイッチをかじりながらそう言った。
そういえば、彼はお昼ごはんをのんびり食べている時間がなかったと思い出す。
「?どうした」
「いいえ。美味しそうに食べるなって…。」
「志乃の料理の方がおいしい。」
あっさりそういわれて、顔が赤くなる。
「ホントですか?」
正直な話、自分で食事を作ったことなどなかった。
生まれたときからそういう環境だったのだから仕方ないといえばそう。
それでも…少しずつは料理ができるようになった。
おいしいといって食べてくれるのは…嬉しい。
「もちろん。」
「ありがとう、ございます。」
「どういたしまして。」
視線が絡んで…微笑みあった。


随分、そこにいたように思うが実際はほんの1時間程度だった。
その時間、追加注文をしながら2人は喋った。
にわかにターゲットが動き出しそうなのを察知して真田は志乃に声をかけた。
「志乃、電話。今どこに居るか聞いてみて。」
一旦2人は一度事務所に帰ったという連絡があったための台詞だ。
電話=無線での会話。というのは最初に教えてもらった。
「はい。」
携帯電話を取り出すふりをして…マイクに話しかける。
「もしもし?公香さん?」
『デートを楽しんでるみたいね』
今気がついた。
会話は全部筒抜けだ。
「……はい。」
小さい声で…そう返事をした。
それでも今まで黙っていたのは気を使ってくれていたのかもしれないと思うと…なんだか申し訳なくなる。
『今、向かいの本屋。』
チラッと視線を向けると肩に見慣れたハンドバッグを掛けている女性が見えた。携帯電話にも見覚えがある。
公香と分ったのはそれで…遠目では大学生ぐらいに見える。
動かした延長で真田の横顔を見やった志乃。
ついいつものクセで視線を追った。
高校生の集団に向けられた視線。
見えたのは…

着崩した制服、露になっている肌、豊かな胸の谷間……。

『真田に変わってくれる?』

気がついてしまったそれは…
身体を燃えるみたいに熱くした。

「……。志乃?」
公香との会話は真田にも聞こえていた。


高校生=自分より年下
個人差があるのは分かってる。

赤の他人だという事もわかってるし、あたしを選んでくれたのも分ってる…つもりだった。

それでも………。

悔しい。


『志乃ちゃん?』

公香の声で…真田に携帯を突き出すだけが精一杯だった。
「どうした?」
不思議そうな表情で志乃と…突きつけられた携帯を見つめる真田。
「いいえ!」
「?」
「電話です!」
身体が熱い。
心臓自体が熱を発してるかのように…それが全身にめぐっているかのようだった。
「志乃?何怒ってるんだ?」
「なんでもありませんっ!」
明らかに何でも無くない拗ねようなのに、なんでもないと言い張る。
一度言わないと決めたら頑固なのは…知っていた。

機嫌を損ねてしまったというコトだけは…
ひしひしと感じた。







凄く…嫌だ。

何がいやなのか考えたくないぐらい…嫌だ。

自分が嫌…
あの人たちが嫌…
真田さんが嫌……。




仕事中はもう顔を合わせる事はなかった。
尾行を公香と交代して志乃は車の中に戻った。
脚がこれ以上無理だといっていたから。
車の中で無心になってパソコンのキーボードを叩く。
調査報告書の草案を作るのは彼女の仕事だ。それは脚が治った今でも変わらない。



でも…

家に帰ってからはそうは行かなかった……。


スーパーで出来あいのカツとサラダを買い帰宅したが志乃はすぐにキッチンに立った。
狭い家だからどこで何をしているかは嫌でも分る。
「志乃…どうした?」
「どうもしてません。」
そういいながらニンジンを切っていた。出ている材料から考えて…カレーだ。
つくりだめ作戦とみた。
真田はそんなことを思いながら…志乃の顔色を伺った。見るからに…怒っている。

触らぬ神にたたりなし…の精神で真田は暫く観察だけにとどめていたが…。

志乃の不機嫌は一行に直りそうになかった…。



だが、一定の距離を置いたままの時間はそう長くはなかった。
なんといっても、ベッドは一つしかないのだから……。

「志乃ちゃーん。」
風呂上りだというのに汗をかいている真田と…。
「……………。」
それを黙殺して…布団の中で包まっている志乃がいた…。

ただいま、夜の8時である…。

「どうして不機嫌なんだ?」
「不機嫌じゃありません」
「怒ってるだろ?」
「怒ってません!」
どこをどう見ても怒ってる態度だろ…というのを飲み込んだ。
的確な指摘をされても余計膨れるのは想像がついた。
真田はため息を付きながら口を開いた。
「素直に言わないと…」
背を向けている志乃の肩をグイッと引いて、ベッドに押し付けた。
「イタズラしちゃおっかな?」
「え?」
真田のにやっと笑った顔がみえたかと思うと唇を塞がれた。
「っ!!」
普通のキスならまだいいがそうではなかった。
「ん~~!」
ディープキスだったそれも長いやつ。
一気に身体が熱くなる。
キスの傍らで指が首筋を這った、首筋ならともかくその指が項まで達してビクリと身体がはねた。
嫌だ…っとその手は引き剥がしたが、身体を押しのける事はできない。
酸欠も手伝って…頭がぼーっとしてくる。

真田さんの馬鹿っ!

そう思うが…当然言葉は出ない……。



「あ~…悪い、ふざけ過ぎましたっ。」
口を離して第一声がそれだった。

涙目で、真っ赤な顔で見上げてくる志乃には勝てない。
頭がベッドにつくような勢いで真田は頭を下げた。
「ごめん。ふざけた、俺が悪かった。」
「しりまっ…せんっ。」
まだ赤い顔で少しだけ睨みつけて来る志乃。
「…言い訳にしか、聞こえないかもしれないけど、志乃が何か隠してるから…。」
「俺が何かしたなら謝るから。言って?」
彼にしては珍しく…弱気な表情でそう言って、志乃を見てきた。
「……水」
「え?」
「水…飲んできます…。」
張り付いた喉を必死に剥がして…志乃はそう言って立ち上がった。
「…戻って、来るよな?」
今まで…聞いた事のないような不安げな声。
「はい。」
安心させるようにそう言って…志乃は寝室から出た。


「…で…だ。」
ベッドの上で正座で待っていた真田が…志乃に切り出した。
「はい。」
「…俺、何かした…?」
「…………」
「言って?」
「……いつから…不機嫌かわかりますか?」
志乃のその質問に真田は少し視線を泳がせた
「…尾行中…だな。」
「カフェです。」
「そうだったよな。…急に、機嫌が悪くなった。」
真田のその言葉に志乃はまた眉間に皺を寄せた。
「…ヒントはそこまでです!後は自分で考えてください。」
そう言うとぷいっと…そっぽを向いてしまった…。

沈黙。

「…女子高生か?」
その言葉に、ぴくっと志乃が反応した。
「あたり?」
「…………見てたじゃないですか…。」
か細い志乃の声が聞こえてきた。
「見たって言うか…」「見てました!」
噛み付いてくる志乃に少したじろいた。
「いや…制服なのにあんなに胸肌蹴させていいのかと…」
「やっぱり見てるじゃないですかっ!」
「見たけど、それはその…反射っていうか」
「………。」
ジト目で見てくる志乃に真田は困ったように頭をかいた。
「見たのは認める。でもそれで…その……。」
真田は暫く上手い言葉をさがしたが…どれも不発だった。
「正直に言う。それで興奮するとかそういう問題じゃない。」
「え?」
「…だっ、だから…」
また、汗をかきながら…真田は必死に言葉をつむいだ。
決して下心があって見てたわけではないのを…伝えたかった。
「…だから…その…。志乃だけだよ。」
「?」
「…あれは、俺にとって背景みたいなもんで…その……俺の中で、ちゃんと女の子してるのは志乃だけだよ。」
「…公香さんは?」
「あ、あれは…姉貴だろ…姉弟みたいなもんだよ。」
「……ホントに?」
「本当に…。」
「本当に?」
「ホントーに。」
……信じて?
真田は真剣そのものの表情でそう言った。
「分り、ました…。」
それは信じます…っと小さく言った。
「我がまま…ですか?」
次に聞こえてきた志乃の声は…そんな細いものだった。
「え?」
「…真田さんを…独り占めしたいって…思うのは…わがままですか?」
「志乃…?」
「…他の人を見るのは嫌です。目移りしないでください!」

「私だけ…見てください…。」

真っ赤な顔でそういう志乃が…。

たまらなく…愛おしかった…。


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