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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2025年03月10日 (Mon)
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2011年01月16日 (Sun)
locaさまよりお借りしました


あいうえお44題


あ : あの日の夢を見た

八晴中心がいいなぁ…っといいながら、いきなり真志(笑)


3巻後。甘さはないってか…久しく書いてないから分かんないこといっぱいでびっくり(笑)

夢といえば彼女かな…っと。



「夢を…見ました。」
「え?」


あの日の、夢を見た。



徹夜明けは…泥のように眠る。

浮気調査や素行調査はターゲットに張りつく事が多い。
それは、夜も例外ではなく…24時べったりも…ままある。
そしてそういう仕事の、一番つらい時間はたいてい真田に回ってくる。
反論はするが…山縣さんは頭脳派だし、公香は公香で…徹夜は化粧のノリが悪いといわれる。
志乃はもっての外だ…。
…で、結局そうなる。


そんなわけで…変な時間に起きてしまった。
朝4時。
と、いっても、今から寝る気にはなれない。
シャワーでも浴びよう。
真田はそう思い…風呂場へ向かって歩き出した。

風呂上がり、ミネラルウォーターのペットボトルを片手に階段を上がる。
階段を上がり終えると廊下のつきあたりにある部屋から灯りが漏れているのに気がついた。
「?」
あの部屋は、例のスクラップブックがおいてある部屋だ。
殺風景な、キャビネットが置いてあるあの部屋…。
こんな時間に、あの部屋に用事あるとは思えないが
…電気がついているのは事実で…。
まさかとは思うが泥棒という可能性も無きにしも非ず…
真田は自分の部屋を通り越して、そこへ向かった。
うずく好奇心は抑えられない性分だ。
自然と、足をとを抑えた歩き方になり…
灯りが洩れている隙間から、中をのぞいた。
どうせ、誰かの消し忘れだろう…っと思っていた分、驚いた。
人がいた。しかも、志乃が…だ。
憂いを帯びた横顔が見える。
「志乃?」
「あ……。」
ドアを開けながら声をかけると、彼女は驚いたように顔を上げた。
相変わらず、高級そうな寝巻に身を包んでいるところをみると、こちらも寝起きのようだ。
「真田…君」
「…灯りがついてたから、誰かいんのかと思ったら…どうした?こんな時間に。」
ドアをあけて、部屋の中に入る。
彼女はテーブルに着くようにして、車椅子に座っていた。
「いえ…別に…」
断言してもいい、志乃は…嘘が下手だ。
視線を反らしながらそう言われても…説得力はないし、この状況で、「はいそうですか」と…言えるわけがない。
「……………。」
机の上においてあるのは…スクラップブックで…。
開かれていたのは、最初のページ…。
「志乃…」
少し、掠れた声で名前を呼んだのと…彼女の、黒目がちな目から涙が落ちたのはほぼ一緒で。
「志乃!?」
真田をぎょっとさせるには十分だった。
「どうしたんだ?」
「夢を…見ました。」
「え?」
「…………………………………。」
何も言わないまま…顔を伏せて泣いてる彼女の頭を…真田は撫でた…。
街中で、このシチュエーションだったら、間違いなく男の方が悪者である。



「すみません…。」
志乃はそう言って、顔を上げた。
「大丈夫か?」
「…はい。すみません…。」
と言うが目が赤くなっているし、まだ潤んでいる。
それでも志乃は、ハンドリムを操作して…隣にいる真田に向き直った。
「大丈夫です。」
「夢って…どんな夢だ?」
真田は、志乃の横にしゃがみ込んでそう聞いた。
志乃が見る夢は予知夢だ。
夢…っと言われれば、もう誰か人が死ぬ…っと考えてしまう。
少し緊張しながら、真田は志乃に聞いた。
「…あの日の夢を…見たんです。」
「あの日?」
「…真田さんの、子どもの頃です。」
「え?」
だからその、スクラップブックをもっていたのか…と妙に納得した。
それはわかる…でも。
「…なんで…?」
今まで彼女が見ていた夢は予知だった。
しかし今回は…過去のことだ。何故?
「…分かりません…」
「昔の夢、そのままなのか?」
「…ところどころは、不鮮明…ですけど…。」
こくりっと頷きながらそう言った。
「…じゃぁ…気にすることないんじゃないか?…ただの夢…だよ」
「でも…」
志乃は口ごもって…俯いた。
「なにか、気になることがあるのか?」
「…………。今まで…こんなことはなかったんです…だから、また何か起きるんじゃないかって…。」
「それは悪い方に考えすぎだぜ。昔のことなんだろ?」
「そうですけど…」
「ただの夢だよ。」
「そう…ですか?」
「そうだ。」
「でも…」
そんな堂々巡りの会話をした。
どんなに話してもやはり志乃は不安で真田は大丈夫だと、言い続けた。
夢を、ただの夢だと言い切れないのは…今までの経験を思えば仕方ないとは思う。
それでも…夢を見るということは悪い
「…分かった。つまり…だ。」
「?」
「志乃は俺に会いたかったって…ことでどうだ?」
「え?」
真田の言葉に、志乃の顔が赤くなった。
「夢は願望が現れるっていうだろ?…そういや、あんま、会ってなかったし。」
「そ、それはそうですけどっ…。それなら、昔の映像の説明がつきませんっ。」
「そのころからなかなか、イケメンだったろ?」
どう反応していいかわからない。
が、まんざら間違ってもいないので否定もできない。
「……夢って、志乃が思ってるほど悪いもんじゃないぜ。」
「え?」
「…今までのこと思ったら悪い方に考えるのも無理りないかもしれないけどさ…。」
優しく、笑いながら真田はそういった。
その笑顔がら、視線が反らせない…。
「よく言うじゃん、夢は見るもんじゃなくて。叶えるもんだって」
「…それは…聞きますけど…。」
「俺が、できることなら、叶えてやるよ…志乃の夢。」
「え?」
「海辺をバイクで走るんだっけ?」
真田のその一言で…赤みが収まった頬がまた真っ赤になった。
「わ、忘れてくださいっ!」
「それは無理なお願いってやつだ。だって、志乃の夢だから。」
「そ、それは、空想…というか、幻想というか…想像でっ。」
「そうそう、夢って、本来そういうもんなんだよ。志乃。」
彼女の頭をもう一度撫でて真田は立ちあがった。
「足、治ったら…な。」
そんな、屈託のない笑顔を見せられたら…何も言えない。
「夢は目標にもなるんだ。だから…がんばれ。」
車椅子に座っている志乃の足をポンポンっと叩いた。
多少は、肉がついてきたかな…と思うぐらいの細い脚。
「……はい。」
照れながらも…志乃はそう言ってい頷いた。
「…どうする?下降りるか?」
キャビネットにスクラップブックを直して…志乃に問うた。
「……き、着替えます。」
ここであらためて、寝巻だということに気がついた志乃は…そう言った。
「もう起きるよな?コーヒーでいいか?」
「あ、私入れます。」
「着替えるのが先だろ?」
そう言って真田は、車椅子の後ろに立って、ハンドルを握った。
「真田君…。」
「いいから、いいから。」
車椅子を押して部屋を出る。
電気を消すと余計に殺風景さが目立つ部屋。
その暗さを閉じ込めるように…真田は、ドアを閉めた。



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