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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月19日 (Sun)
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2011年01月22日 (Sat)
locaさまよりお借りしました


あいうえお44題

い : いつだって僕らは


社宅設定ですー。


八晴と真志が社宅でお隣さんっというお話です(笑)




いつだって僕らは

些細なことで、喧嘩してしまうんだ…。


「もう、知らないっ。」

と……言われた。

その一言は…結構きつい。

今日が、何の日か気づかなかったわけじゃない。
でも、そんなヘラヘラほめるような人間でもない。

隣人が……一ヶ月前ぐらいにこの記念日だったらしいが…。
ケーキと花束抱えて帰るなど気障なマネは僕にはできない。

いつもより豪華な夕食に…
冷蔵庫の中には小さいながらも、ケーキの箱があった。
そして…
食卓の上にもの悲しげパスタの皿が残っている。しかも食べかけだ。
彼女にとって…それぐらいのことなんだろう。

彼女がこんな状態で…食事ができる訳もなく…
八雲も、フォークをおいた。

狭い社宅で…
リビングの隅…に膝を抱えて座っている。

寝室に言ってないところをみると…まだ許してくれる可能性は残っている…ということか…。

僕に非があるのは分かる。

素直に謝るしかないと思うが…。

どう謝ればいいんだ…?

断じて忘れていたわけではない。
…と、これも言い訳にしかならない…だろうが

頭の中でシミュレーションをする。

忘れていたわけじゃないんだ。
照れくさいんだ。
次の休みに、一緒に買い物へいこう。

そんな語彙が頭の中を回る。

どうしたものか…っと…思い悩んでいると電話が鳴った。
ぴくっと…二人で反応したが、八雲が…受話器を取った。
こんな時に、電話をかけてくるな、誰だ。
『もしもし?斉藤?』
聞こえた声は…それだけで必要性がないと分かる。隣人の声だった。
基本的に緊張感のない声だ。
「…僕は今取り込み中なんだ。」
『は?』
「死活問題を抱えている最中なんだが、一秒一刻を争う用件か?」
『…いや、明日のことなんだけどさ…』
「じゃぁ、明日聞く。」
八雲はそう言って…受話器を置いた。
明日のことより今日のことが優先だ。
ついでにいうと
仕事仲間兼隣人の真田の話より
妻の晴香の話を聞いてやる方が…優先だ。
八雲は膝を抱えている晴の元へ歩いていった。



「…なん、なんだ?」
電話を切られた方は…きょとんとしている。
『取り込み中』に、『死活問題』ときた。確かに声は深刻そうだった…が……。
「どうしました?」
小首を傾げて…彼女は聞いてきた。
妻…と呼ぶには少し幼い気がする…新妻である。
「タイミングが悪かったみたいだ…なんか。取り込み中らしい。」
「…取り込み中…ですか?」
「たぶん、いちゃいちゃしてるんだろ。」
「いちゃいちゃ…」
少し戸惑うように彼女はそういった。ちょっとかわいい。
「ま、明日でいいって言うんだからいいんだろ…。」
「わかりました。じゃぁ、明日はお仕事ですね。」
「あぁ…じゃぁ、こっちはこっちでいちゃいちゃするか。」
「いっ………」
こういう反応はかわいい…と思う同棲して大分立つが、こういう反応は変わらない。それがかわいい。
「まだご飯の片づけ、できてませんっ。」
「俺するから、志乃ちゃん、風呂いってきたらいいよ」
「…だめですっ。私の仕事ですからっ」
「えぇーいいじゃんかー。」
「だめです。」
「いいのいいの。」
「だめです!」

っと…隣のいちゃいちゃはおいておくとして…


「あの…晴香…?」
声をかけながら…とりあえず隣に座った。
「………。」
反応なし。
「結婚記念日を忘れていたわけじゃないし…君が色々準備してくれて嬉しい。」
「……………」
「…髪の毛切ったのも気づいてる。お揃いの皿が増えたのも…全部ちゃんと気づいてる。」
「え?」
「でも、照れくさいんだ…。」
「そんなことまで…気づいてたの?」
「………。分かる。君のことなら何でもみてる。」
「………うん。」
「…ただ…その…素直に言うのは…苦手なんだ。」
「うん…」
「その…悪かった。」
「…ごめんなさい。」
「…君が謝ることはないだろう。」
「ううん…平日なのに…ごめんね。」
「…違う、嬉しんだ…だから…謝らないでくれ。」
と…いって…ここでようやく晴香の方に手をまわした。
「…ごめん、食事の途中なのに。…」
「…食事、一緒に食べてくれるか?」
「うん…」
「…暖めてくる。」
「…うん。」
八雲はそう言って立ち上がった。



いつだって僕らは…

些細なことで喧嘩してしまう。

でも喧嘩しない方が、怖いかもしれない。

どちらかがどちらかに遠慮したり、我慢したりするのは…

きっと長続きしない…関係だと思う

いっぱい意見を言い合って

いっぱい喧嘩をして…

お互い向き合って…

お互いがお互いを思いあって…。

問題の一つづつを…一緒に解決していればいい。

いつだって僕らは…

一人では生きてはいけないのだから…。


夕食を終え、入浴も終えて、一緒のベッドに潜り込む。
「次の休みに…一緒に買い物にいこうか…」
「うん…。」
「君が好きな、もの…教えてくれ。」
「うん…」

いつだって僕は…

君の笑顔が…一番好きなんだ。


「おやすみ、晴香。」
「おやすみはさい。八雲君」
「……ありがとう。」
「え?」
「…僕の家族になってくれて…。」
その言葉に…晴香は八雲の胸に顔を埋めた。
嬉しそうにほほえみながら…。


翌朝…いつも通りの朝…だった。
「はい、お弁当ね」
「ん。」
「ほら、ネクタイ曲がってる。」
「ん…」
「…もう、ちゃんと起きてる?」
「一応。」
「ちゃん歩ける?交通事故とか…嫌だからね」
「…分かってる、ちゃんと起きている。」
真剣な言葉に…八雲はちゃんと起きた。
「いってきます。」
「うん。行ってらっしゃい。」
頬にキスをすると…キスを返された。
いつも…この瞬間は名残惜しい。
手を振っている晴香の姿を…ドアで遮った…。
とても、名残惜しい…
だが…しっかり働かねば…と思いなおして…歩きだした。
仮にも、世帯主なのだ…。


八雲が出勤したその数分後…。
斉藤家の家のベルがならされた…。
「はいはいー。」
八雲が何か忘れ物をしたのだろうか…と思って…出てみると…
「よ、オハヨウさん。」
「……。真田、君?」
お隣さんだった。スーツ姿に鞄を持っている。
「八雲は?」
「もう出勤しちゃったよ。」
「あちゃー…そうか。」
「どうしたの?」
「あーいやいや。じゃぁ、出勤したら話すわ。」
「……?」
「いやいや、朝からごめんな。じゃ、行ってきます」
「いってらっしゃい。」
ばたばたと…出勤していった。
「…何だったんだろう?」
不思議に思いながら…。朝の支度に戻った。


彼が、八雲に追いついたのは…結局、会社の前でだった。
「よ、オハヨウさん。」
「………。」
「早いな、八雲。家寄ったけど、もう出勤したって聞いて焦った。」
「…家、行ったのか?」
「隣だからな。…相変わらず、晴香はかわいいなー。」
「………………。」
睨まれた。が、いつものことだ。
「昨日の電話は何だったんだ?」
「そう…今日の休み、代わってくれないか?」
「………は?」
「…だから、今日の俺の休みと…次のおまえの休み、変えてほしいっていってるんだよ。」
「……………。」
「ちなみに、昨日上司から俺の変更は許可してもらった。」
「………」
「…志乃がコンサートに一緒に行って欲しいって言うんだよ。チケットが昼の部しかとれなくてなー…そんなお願いされたら休みの変更ぐらいなんてことないしなー。」
のろけが始まりそうなので八雲はくるり踵を返した。
「…お、帰る?」
「帰る。そうならそうと早く言え。」
「…昨日、電話したろ。」
「会社で言え。」
「合わなかっただろ、昨日。」
確かに…昨日は珍しく、八雲が外回りだった。
なれないことをすると…疲れる。そしてそのせいで、夕食が素っ気なくなり…
喧嘩の原因になった。
「じゃぁ、休みってっことで…伝えとくわ。」
「あぁ。」
Uターンした八雲の足取りは、走り出さんばかりに早かった。

いつだって僕らは…

一人では生きてはいけない…。

だから、

彼女を、大事にしたいんだ。


玄関をあけ…名前を呼んだ。
「…晴香。」
「え?」
「ただいまっ。」
「え?え?」
あわてて玄関に出てきた晴香を…抱きしめた。
「え?えぇっ!?どうしたの?忘れ物?」
「…………。休みになった…だから。」
「休み?」
「あぁ…だから…」

「一緒に、買い物に行こう。」

「あ……うんっ。」


いつだって僕は…

君の笑顔に

なによりも満たされるんだ…
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