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カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
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雷話、映画館話×2
天探1の後。
外は雨。しかもほぼ土砂降り。
「天気悪いなぁ…。」
真田はそう呟きながら窓の外を見た。
排水溝に向かって川のような水の流れが出来ている。
こりゃ、止む見込みはなさそうだな。
そう見当をつけて、自分のデスクへ戻る。
事務所の中にはもう一人、志乃が居る公香から任された仕事をパソコンでしている最中だった。
時計は、11時半になろうかという時間を指している。
雨が酷くなる前に動くか…。
真田は自分の財布の中身を確認しながら声を発した。
「志乃、ちょっと昼飯買いに行ってくるから。留守番よろしく。」
「やっ!」
その声とともに…裾が引っ張られた。後ろに…。
「…?」
不思議に思って振り返ると志乃と目があった。
「………………。」
本人も、自分の行動に驚いているらしく…暫く目をぱちぱちさせていた。
「…志乃?」
「…………………。」
志乃は意外にプライドが高い。…っというコトは仕事を一緒にして…付き合いだしてから知ったこと。
「どうしたんだ。」
「一人に…しないでください。」
そして、あの事件以来志乃は甘えることに抵抗があるようで…わがままやお願いはあまりいわなかった。
その志乃からの発言だった。ぎゅっと…握られた裾に深く皺がよる。
「雨の日は…怖いです…。特にこんな…豪雨の日は…」
志乃の言葉の途中で…視界の隅が光った。
「!」
びくっと…目で見て分るぐらいに志乃の体が跳ね高と思うと…耳を塞いだ。
暫くの後、雷鳴がとどろく。
「雷、嫌いなのか?」
「…怖いです。音も…光るのも…。」
怖がっているのに…そう思うのは申し訳ないが、可愛い…っと思ってしまうのは惚れた弱みか…。
同時に、頼ってくれることが嬉しかったのも事実だ。
「雷鳴り出したから…暫く居る。大丈夫だ…。」
志乃の頭をポンポンッと撫でると…少し不服そうに真田を見上げてきた。
だが、その目には水の膜が張っていて、怖たのはくはない。むしろ可愛い。
…もう、いいか…。
真田は自己弁護がてら、そう思いながら…志乃を抱きしめた。
「!さっ…」
「これで…聞こえないし、見えないだろ。」
「………………………。」
数秒のあと、ぎゅっと…服が引っ張られたのは容認の合図。
素直じゃないと言うか、やっぱりプライドが高い。
ふっと…笑いながら真田は志乃の頭を撫でた。今度は見上げては来ない。
相当、雷が怖いのだろうか…。また稲妻が走った。
音で体が跳ねる。ぎゅぅっっと…服を握る手に力が篭った。
無意識は罪…だよなぁ…。
妙に客観的に現状を見ている真田がいた。
そうでもしないといろいろヤバイ。
雨雲の強さと
真田の忍耐と
一体どちらが勝つのか…
雨は当分止みそうにない…。
神永先生のHPの投票コーナーで。
「映画が好きそうなのは誰?」にて真田&志乃が仲良く同率ランクインされてたので書いてみました。(順位は5位・笑)
映画館。デート。
一体何を見るのやら…(笑)
「志乃さ…最近出かけてないよな~。」
仕事の合間にそんなことを言われた。事務所には他の2人もいる状態で。
「え?……。」
「確かに、遊びに行ってないかもね。」
乗ってきたのは公香である。手を止めて志乃を見る。
志乃が入ってデスクは4つになった。
山縣の正面に、真田の隣が志乃のデスクだ。
「だよな…志乃、出かけようぜ」
「そんな、仕事なのに……」
志乃はこういうとき大概渋る。真面目というかなんというか…。
「山縣さん、明日休みにしてもいいよな?」
「…仕事が入らなきゃな。」
志乃が渋る時は先に山縣を押さえるに限る。そうして、それを知っているから一応釘を刺してから了解する。
「よっしゃ!」
一人ガッツポーズをする真田。
「真田さん…」
困ったような表情で隣の真田を見る。
「志乃ちゃんは。まだ若いんだから、今のうちに楽しまなきゃ。」
頬杖を付いて公香は志乃を見た。不思議な笑みを浮かべている。
「そんな…公香さんだってまだ若いじゃないですか。」
「公香はもう三十手前だろ。」
「…ヘッドロックかけるわよ」
きつい目で睨みつけられるとやはり迫力がある。
「ごめんだぜ。」
逃げるように椅子を引いて、笑った。
「でも……。」
「あ、真田とが嫌だったらあたしと行く?いろいろレディースで安くなるし。」
真田を睨みつけていたを公香は志乃のほうを見て…今度ははっきり分るような…意地悪そうに、にんやり笑った。
それは真田に向けてものだったが…。
「おい。公香!折角のデートなんだから。邪魔すんなよ。」
デートの言葉で…そういえば付き合っているんだ…っというコトを思いだす…。
仕事を一緒にしているし、一緒に過す時間が多い。どちらかといえば…家族に近い感覚だった。
年齢的にはお兄さん的な立場である。
「どうする志乃。どこに行く?」
結局、志乃と出かける権利は真田が獲得したらしい。こうなるともう、志乃に拒否権はない。
「買物は女同士で行くからだめよ、真田。」
「なんだよ…。」
それが第一プランだったらしく、むくれる。
「あたしの楽しみを取るんじゃないの。」
楽しそうに笑う公香を見て…勝てないな。っと思う。
何だかんだ言ってもやぱり、性別差はある。
いろいろ、買いにくいものはあるし…公香と一緒に行って、綺麗になって帰って来るのは嬉しい。
「…じゃぁ、映画にしようか。」
買物は素直に公香に譲るとして、次の案を出した。
「………。」
映画に…行くのは初めてだった。車椅子になって外出は殆どしないし…。
「山縣さん、車借りていいだろ?」
それから真田が次々に予定を立てて…決まった。
総合ショッピングモールに車を止めて車椅子に志乃を下ろした。
「さ、行こうか。」
真田はそう言って車椅子を押し始めた。
「まず映画でいいよな?」
「…真田さん…」
不安げに…志乃は真田を見上げた。
「大丈夫。世の中そんなに、志乃に冷たくないよ。」
にっと笑って車椅子を押し続けた。
「何か見たいのあるか?」
映画スペースの薄暗い独特の空間に入って…真田はそう聞いた。
「え…?」
「一応…ジャンルでピックアップしてみたけど…」
真田はそういい、紙を差し出した。そうして、今表示されている映画のジャンルと概要を話してくれた。
「真田さんは?」
「ん?」
「何か見たいの無いんですか?」
「う~ん…よく見るのはアクションだけど、デートには向かないだろ?」
それは少しホラー入ってるから…。ピックアップしたアクション系のものを指差して言う。
「志乃が見たいの見よう。」
「…じゃぁ…これでいいですか?」
志乃が指差したのは恋愛物だった。
真田にとっては意外だった。
志乃は多少プライドが高いためすんなりと選ぶとは思わなかった。
それだからこそ…真田は嬉しかった。
「了解。じゃぁ、行こうか。」
そう言って真田は受付をチラッと見た。
「…はい。」
嬉しそうに笑って…車椅子を移動させ始めた。
「お客様、身体障害者手帳がおありですか?」
「身体障害者手帳…?」
受付の女性にそういわれて…真田は鸚鵡返しをしてしまった。
「あ、はい…。」
真田が不思議そうにしている中で、志乃は鞄の中から免許証のような物を取りだ出して見せた。
「はい。結構です。それではお2人で2000円になります。」
その言葉に我に帰って…真田は財布から千円札を2枚出してチケットを受け取った。
チケットを切ってもらうとスタッフの一人が近付いて来た。
「ご案内します。5番シアターですね?」
「はい。」
志乃はそう答えたが真田は無言だった。
映画が終わったのだろうか…子供ずれの親子がたくさん出てきた。
その中の一人が志乃を見て、
「お姉ちゃん、足お怪我してるの?」
そう問われてスタッフは車椅子を止めた。
「…えぇ。」
志乃は微笑んでそう答えた。
「早くよくなってね。バイバイ。」
にっこり笑ってそう言うと、CMで良く聞く明るい歌を口ずさみながら親に連れられて去っていった。
「ばいばい。」
志乃はその笑顔に答えるように微笑んで手を振りかえした。
そうと思うと…頭に手が乗った。
「?」
真田が珍しく無言で…頭を撫でてきた。
「よろしいですか?」
「はい。」
志乃がそう答え、真田も頷く。
そうして、5番シアターに向かって歩き出した。
シアターに入ると座席の中央に車椅子マークのスペースがあった。
「こちらでよろしいですか?」
「はい。ありがとうございました」
「それでは、お楽しみください。」
にこりと笑ってスタッフは外へ出た。
真田はどさっと…少々重たそうに腰を下ろした。
「ダメだな…。」
自嘲気味にそう呟いた。本当に自分が嫌になる。ツバつきの帽子を少し深く被った。
「え?」
真田は聞こえないように呟いたのに…志乃には聞こえている。
勉強したつもりでも、まだまだ知らないことばかりで…志乃を支えようと思うのに…。
悔しい。
「真田さん…?」
黙り込んだ真田を呼ぶ。普段よく喋るのに、黙るのは珍しい。
「あ…悪い!なんだ?」
真田は慌てて志乃を見た。今はデート中だ、自己嫌悪に陥るのは後からでいい。
車椅子の志乃は座っている真田より視線が高い。
「…どうしたんですか?」
「なんでもないよ。大丈夫だ」
「………。」
志乃は少しだけ表情を曇らせた。
「…志乃、俺が悪かったから…そんな顔しないでくれ。」
「何かあったか話してください…。嫌でしたか?」
「嫌じゃないって!…少し…自己嫌悪してただけだから。」
「自己嫌悪…?」
どうして?っと言いたげに真田を見る。
「…まだまだ勉強不足だなって…思ったんだよ。」
「勉強?」
「…勉強なんていったら怒られるな…。映画館にこういうスペースがあるのは知ってたけど…。手帳があること知らなかったし…。」
「………。」
「志乃を…支えようと思ってるのに……。ごめんな。」
「そんな、謝らないでください…。」
思わず未を乗り出して真田の膝に触れた。
「嬉しいです…ありがとうございます。」
志乃がそう言って微笑んだ。
「………。」
真田はそれを見てゆっくり笑った…。
「ごめんな。」
苦笑しながら…頭を撫でた。
「…真田さん!いつもみたいに撫でないでください。一応、おしゃれしたんですからっ。」
「あ、悪い。そうだよな、乱れるよな…。」
再び苦笑しながら…手を引っ込めた。
「癖かなぁ…綺麗な髪だからさ。触りたくなるんだよなぁ…。志乃可愛いし…」
かぁっと…顔が熱くなる。未だに慣れない。
他意はない、素でやっているのは分かっているけど…慣れないものは慣れない。
「……?」
不思議そうに真田は志乃を見た…。
そこで開演のブザーが鳴った。
映画が終わると啜り泣きがはっきり聞こえてきた。
「志乃。大丈夫?」
「…大丈夫です。」
予想に反して…気丈だった。周りの立ち上がる人は疎らだった。
「込む前に出る?」
「そうですね…。」
志乃はそう言うと、自らブレーキを外して車椅子を動かした。
「押すよ。」
真田はそう言って後ろに回った
「どうだった?」
フードコートで飲み物と抵当に甘いものを買ってつついていた。
「………。」
「?」
「わ、笑わないですか?」
「笑わないよ、感想だろ?」
「…感情移入は…あんまり出来ませんでしたけど…いいな…って。」
「あの終わり方はよかったよな。泣いてるのもいたしな。」
「あんなふうに…最後には幸せになりたいです…。」
両手でカップを包み込むようにして持って…ゆっくり飲んだ。
「あ~……。」
「?」
「今、思いっきり抱きしめたいんだけど…。ダメだよな?」
「えぇ!?」
予想通りの反応に真田は苦笑した。
ん~帰るまで我慢する…。独り言のようにそう呟いてコーヒーをあおった。
「でも、志乃は泣かったよな。」
「あたし、そんなに涙脆くないです。」
「そうか?よく泣いてるイメージが…」
そこまで言って真田は慌てて訂正した。
「ごめん、取り消す。志乃は頑張ったもんな」
真田は素直に謝り志乃の表情を窺った。
「感情移入できなかったんだ?」
「恋愛に…疎いから…」
「疎いの?」
知ってるでしょう?っというように真田を見る志乃。
「いいじゃん、疎くて。皆最初はそうだよ。」
志乃は驚いたように志乃を見た。
「今からいっぱい幸せな恋愛すればいいよ。俺でよければいくらでも付き合うし。」
「…………。」
また直球が来た。かわせない自分も自分だが…。思わず頬が熱くなる。
「…そう言うのって…告白のとき言う台詞じゃないですか?」
「そう?…じゃぁ…俺と一緒に幸せな恋愛しよっか?」
「もう…もう…やめてください…っ」
志乃はそう言うと頬に手を当てた。顔が真っ赤である。
どうしても2人で出かけると赤面する回数が多い気がする。
「ん~志乃は可愛いな…」
「もう!真田さんのせいです!」
「困った事に、怒った顔も可愛いんだよな…。」
「やめてください、恥ずかしいんですから。」
「それも可愛い。」
「…………。」
あ、拗ねた。
そう思うほど表情が豊かになった。それが嬉しい。
嬉しくてついついいろんな表情が見たくなる…。
でも、機嫌を損ねるのはよくない。
「ごめん。志乃悪かった。機嫌治して。」
真田は志乃の頭を撫でようとして…やめた。
かわりに、その手をテーブルに置いている手に添えた。
「…買物付き合ってください。」
「公香とじゃなくていいの?」
「…デートだって…言ってのは真田さんでしょう…?」
真田の袖を引っ張って志乃がそういった。
「了解。…どこにでも付き合うよ。」
可愛い過ぎるお願いなんだよなぁ…。
それが随分のあいだ真田の頭の中でぐるぐる回っていた。
EDN
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