忍者ブログ
2024.05│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月20日 (Mon)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2010年08月05日 (Thu)
たとえばこんな誕生日~マリンスノウ~編です。
8月ということで、現在(6月)よりは喋ります。


長くなったのは…愛ゆえかしら(爆)



あいかわらず、セイランはへんなやつだなぁ(苦笑)


たとえばこんな誕生日~マリンスノウ~

 春からしたら、少し未来の夏の話…。




今日は、やたら知人に会う。
斎藤八雲はそう思った…。

映画研究同好会にいた、八雲への最初の来客は後藤だった。

また事件に巻き込まれるかと思ったが、それは心霊写真ではなかった。
ただの目の錯覚。現場写真なだけに先入観があるだけの話だで、早々にお引き取り願った。

八雲がこの暑い中、この部屋にいるのにはわけがあった。
晴香がここにいろと言って来たから…である。


当事者は…それから30分ほど遅れてやってきた。
「遅い。」
「遅くない!これでも講義終わって急いできたんだよ。」
「…で?用件は?」
かろうじて…座ったままで八雲は聞いた。
本当は暑くてたまらないのだが…耐えた。
「それにしても暑いねー」
わざと、会話を変えたのが見え見えで…八雲は眉間に皺を寄せた。
「君は用事がないのに僕を呼びつけたのか?僕は暇じゃないんだ。」
「ごめん…その、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…」
「なんだ?」
「8月3日は八雲君の誕生日だよね?なにか…ほしいものある?」
「ない。」
即答だった。
「そんな、きっぱり言わなくても…何かないの?」
「ないな。だいたい、一年の内の一日で馬鹿騒ぎすることも無い。」
「そんな……だって誕生日だよ。」
「まだ先だ。ほしいものがあったら言う。」
八雲はそう言って…立ち上がった。
「どこ行くの?」
「図書館。レポートがある。じゃぁな。」
別に、そっけない態度をとりたかったわけではない
ただ…部室が暑すぎただけなのだ……。


小沢晴香は、しょんぼりして…部室を後にした。
毎年同じやり取りで…今年は…少しでも違うかと期待したのに、同じだった。
自分たちの関係は発展していないのだろうかと…思うとちょっと悲しくなる。
「はぁ…どうしよう……。」
ため息交じりに…歩いていると視界に入った人影があった。
特徴的な…服装で…すぐに分かった、彼女だと。

そうして、閃いた。

「瑠璃!ちょっとまって!」

声をあげて…彼女に駆け寄っていった……。

暑そうな黒い服をまとった…海堂瑠璃に。


海堂瑠璃は…その声に立ち止まって振り向いた。
そんな風に自分を呼ぶ人間なんて…この大学には一人しかいない。
「……………。」
しかし、困った。今日は二つあるバイトも締め切り前の課題も…なにもない。
ここで彼女…晴香に何か頼みごとをされたら…断る理由がない…。
そんなことを思いながら、駆け寄ってくる彼女を待った。


「どうしたの。」
一応…知り合い…と呼べる領域までの関係にはなっているし、誘われて都合がつけば、買い物の誘いに乗ることもある。
だが瑠璃には友達、という単語は重すぎる。
「久しぶり。ね、瑠璃…お願い!相談があるんだけど…ちょっと時間ちょうだい。食堂で何かおごるから。」
「…いいよ。いこう」
瑠璃のその返事に、晴香はぱっと顔を明るくした。
「よかった。じゃ、いこ!」
その笑顔には、勝てなかった…。


何かおごるといったけれど…食事の時間ではない故に、二人は自販機で飲み物を買って…席に着いた。
テスト前なら席もほとんど埋まるが…今はままばらである。
「それで…何?」
瑠璃はコーヒーをあけて…問うた。
「あ、うん。あのね…」
それだけ言って…晴香は…じっと、向かいの瑠璃を見た。
「何?」
「えっとね。瑠璃は…彼氏とか好きな人に、贈り物をしたことはある?」
「…………………。」
瑠璃の想像の範囲外の質問だった。
「どうやら、私は役に立てそうにない相談だね。答えはNOだ。」
そう言って立ち上がりそうな瑠璃を…晴香は押しとどめた。
「まってまって、話だけでも聞いてよ。」
晴香のその言葉に…瑠璃は座りなおした。
「それで…?」
「じつはね、もうすぐ、八雲君の誕生日なの。」
あぁ、なるほど…っと、察しがついた。
「…それなら、本人に聞くのが一番じゃないの?」
瑠璃がそういうと…晴香はため息をついて…首を振った。
「聞いたけど、『一年の内の一日で馬鹿騒ぎすることも無い』…だって。」
「なるほど、私もその意見派だな」
えー…っと…不満そうな声を上げたが…すぐにしょんぼり、してしまった。
「そういう考えの人に…何かあげるのって迷惑なのかな…?」
「くれる相手と、物によるんじゃない?」
少なくとも、八雲は晴香がくれるものなら、何でも嬉しいに違いない。
「そうだよね…それで…何かいいものない…かな?」
「だから、それは聞く人を間違えてる。他にも友達いるでしょう。」
「いるけど…いるんだけど…」
ぼそぼそっと…言ったかと思うと次第に顔が赤くなっていく
「それで、なんて?」
言いにくそうにしてるので瑠璃は聞いた。
「私の首にリボン巻いたら喜ぶかもよ?…って」
どういう意味だと、本人がいたら問いただしたいところだが…聞いたらきいたでばかばかしい答えが返ってきそうだ。
「ある意味正論だけど。セクハラで訴えることも充分に可能な答だな。品性を疑うね」
ずばっと…いうと…。晴香は安堵したように息を吐いた。
万が一にでもそれにしたら?と言われることをおそれていたのだろうか…。
「でね、瑠璃に相談なの。瑠璃って…八雲君と似てるからなにか共通する好きな物とか…ないかなって。」
「それはずいぶん、大役だな。それに、私と似てるなんて言ったら八雲が怒るよ。」
「それは…おいといて。ね、なにかない?思いつくもので良いから言ってみて?」
「コーヒーメーカー…」
「瑠璃ほしいの?」
瑠璃の手元にあるコーヒーを見て…晴香は聞いた。
「私じゃなくて八雲の話をしてるんでしょ?いつも眠たそうそうだから。どう?」
「いいかもしれないけど…八雲君、砂糖とミルクたっぷり入れたやつじゃないと飲めないの。」
瑠璃の手元にある缶はブラック無糖の文字。
意外に…子供の味覚だと思いながら…一口飲んだ。
プレゼント、となる理想はその人が必要としているもの…で。
瑠璃は今一度、部室を思い浮かべていた。
未だに、あの部屋―映画研究同好会に住んでいたということが瑠璃にとっては信じられない。
「………。寝袋の予備とか」
「あ、いいかも。睡眠系かぁ…眠そうだもんね。リラックスするものとか?」
アロマキャンドル…と言いかけてくやめた。おおよそ八雲には似合わない。
「まぁ、その辺がいいんじゃない?…これから暑くなるしね」
「うん、そうだね…それでね、瑠璃。」
「何?」
「8月3日までのいつか、一緒に買い物行こう!」
「どこに?」
「八雲君のプレゼントを買いに」
「なんで私が?」
「だって、瑠璃の意見は的確だもん。私迷ったら決められないの、ね?お願い。」
拝まれて…しかも直接のお願いでは断れるような語彙を持っていない。
言葉をえらばなければいけないのは…難しい。
そんなわけで…瑠璃は手帳を取り出して…バイトの予定に目を通した…。
晴香も忙しいらしく…Françaisの文字の日の…午前中に買い物へ行くことにした。
それを、相手へと…メールした。一か月ぐらい、しなくても忘れはしない。
そもそも…夏休み、彼が日本にいるのかどうかさえ…瑠璃は知らなかった。




シオザキセイランは、ポケットの中の携帯がバイブレーションで着信を知らせたのには気がついた。
しかし、今は手が離せない。
持ってきた、大量の資料を置く場所を探しているところ…なのだ。
テストにはまだ時間があるとはいえ…レポートをする人がちらほらおり、完全なる空席はない。
あわよくば…このほかにも資料を広げて作業をしたい。
そのことを考えると…人気が少ない場所のほうが開いているスペースを確保できる可能性は高い。
そんなわけで、最上階…へ向かった。
階段を上り…机を探していると…。
「あ。」
一番奥の机の上に突っ伏して眠っている人物がいた。太陽の片割れ、斎藤八雲だった。
Yシャツにジーパン。という恰好はそうそういない。
そして、彼がこの前読んでいた本が閉じられた状態で置かれていた。
推理するに、読みながら眠ってしまったらしい。
ちょうどいいと…その机の八雲と対極に資料を置いて携帯電話を取り出した。
Ruri Kaido の差出人。用件は日本語で書かれていた。
それに、OKとだけ返して…レポート作成に必要な資料を、集めに書架の間に消えていった。



斎藤八雲は、まどろんでいた。
部室が地獄ならば図書館は天国に近い。
完全冷暖房完備であるのがなによりも高得点である。
そんな中で…がたがたと椅子を引く音で目が覚めた。
「ここは仮眠室じゃないよ。」
そんな声が聞こえてきた。
目を開けると、やつがそこにいた。
「Good evening.テスト前なのに余裕だね。」
見事な金髪に青い瞳。セイランだった。
白の涼しげなシャツ襟やそで口に水色のチェックが入っている。
八雲にはさほど興味がないが、女性うけはよさそうだと…思った。
「そっちこそ、僕を起こす余裕があるみたいだな。」
といいつつも、彼のそばに並んでいる本は明らかに専門書。
『西洋建築年表』『東洋建築年表』…
そこまでで、八雲は背表紙を追うのをやめた。
どれをみても「建築」「建築」…なのだ『大工になるには』や『考古学』…とさっぱりわからないものも混ざっている。
何かの雑誌や、スクラップブックまであるとなると…とてもではないが彼が何をしているのかさっぱり分からない。
レポートを書くらしいということはわかる…が。
しかし…
「なんで、こっちに留学してるんだ?」
当初から抱えていた、疑問だったが、今になってそれが不思議でならない明政大学には建築学を教えるものはないし、今の時代、本ぐらいなら世界中どこへ居ても取り寄せられるだろう。
「うん?資料探し。」
資料探しという理由で留学できるのか?という疑問はあったが飲みこんだ。さほど、彼に絡むつもりはない。
「それにしてもさ、そんなにその本好きなの?」
唐突な問いかけに八雲は顔をあげて…彼を見た。
「あんまり付き合いないけどさ、ずっとそれ読んでるよね。私物なのに。よっぽど好きなの?」
「君に本の趣味をとやかく言われる筋合いはない。」
「ごもっとも、気になっただけだよ。ちなみに図書館には続きがあるよ。」
「ただし、途中で止まってる。最新刊までないんだ。ただの暇つぶしなんだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「…へぇ、一応、調べてるんだ。なら買えばいいのに、そんなに極貧生活してるわけでもないでしょう?」
「お金の使い道は人それぞれだ。とやかく言われる筋合いはない。勉強をしに来たんだろう、少しは集中したらどうだ?」
「お心遣いに感謝します。」
といっても、学生時代ぐらいは自分のためにお金を使ってもいいのに…と思う。
貯金は自分で稼いでからでいいがするが…それは見解の相違であるため、言わない。
「…海堂……かいきょう…?」
不意に、八雲の声が聞こえてきた。みると、背表紙を凝視していた。
海堂は読めるが、その後の漢字「海響」がよめなかった。
「あおとだよ。その世界じゃ有名だよ。海堂教授は。」
「…………。」
邪推はするまいと思うが…そう、ある名字でもない。しかも、彼女の名前…瑠璃…も海を連想する青色だ。
「彼はフランス人…正確にいえば日本とのダブル、アオト・ラフィットって名前聞いたことない?…あぁ、やっぱり知らないか。…んー。その世界では有名なんだけど…やっぱり狭い世界なんだな。」
独りごとと話しているのの区別がつかないしゃべり方をする…。聞く方が疲れるしゃべり方だ。
八雲は彼を見たが、彼は構わず話を続けた。
「彼は結婚して日本に帰化した。それで、海堂海響とした。名前は日本人だけど、彼の外見は完全に外国人」
僕とは逆だねっと、セイランがつぶやいたのが聞こえた。
「というよりは、NOT日本人ってかんじ?日本人は日本人にこだわるよね。僕には理解できないけど。」
肩をすくめて…なおも話を続けた。
「そして、一人娘をもうけた。数年前、事故で亡くなってしまったけれど…彼は優秀な学者だった。…と僕は思ってるよ。」
「それは…」
瑠璃のことか…?という言葉を飲み込んだ。聞いてもこたえるような雰囲気ではなかったし、全身で質問を拒絶していた。
「事故、だったのに…自分を責めてる人がいるのは…つらいね。」
ぼそりと…そう呟いた。が次の瞬間にはその暗い表情はどこかに消えていた。
「あ、『理性の時代の建築』がない。」
セイランはそういうと立ち上がった。タイトルを聞いても、何の本なのかさっぱりではある。
「あれがないとどうにもならないんだよね。じゃあね、八雲。」
ひらひらと手を振って…彼は書架の間に消えていった。


変な奴…である。


「図書館ではお静かに。」

怒られたのは…完全にとばっちりだ。





そして8月3日。

晴香は軽装で映画研究同好会を訪れた。
とくに大きな荷物はない、それもそのはず、いまから八雲とデートなのだ。あまり多荷物では…困る。
早足で部室へ向かっていると…直前でドアが開いた。
「じゃぁね、八雲よい一日を。」
出たのはセイランだった。いつのまにか彼もここに出入りするようになっている。
「あれ?セイラン君?」
「あ、晴香?…今日は何だか一段とかわいいね、なるほど八雲がそわそわするわけだ。」
お世辞と分かっているが…そんなにストレートにほめられたことはなくて…思わず顔が赤くなる。
「人の彼女を口説くな。」
聞こえてきた八雲の声のほうを向くと…部室から八雲が出てきた。不機嫌そうにセイランを睨んでいる。
「挨拶だってば。」
てをひらひらさせて、そう言った。実際そうなんだろうが、面白くない。
「じゃぁ、今からデートでしょ?楽しんでおいで。最高の誕生日になりますように。」
無邪気に…少なくとも表面上はそう見える…笑みを浮かべてセイランは部室を後にした。
「おまたせ、いこ?」
「そうだな。」
さっさと忘れるに限る。恋人…といるときはそのことだけを考えていても罰は当たらない。
「あ、そういえば…なんでセイラン君はここにいたの?八雲君の誕生日知ってたの?」
「……。君から流れたんだろ、瑠璃と…あいつに。プレゼントとやらを持ってきた。」
八雲はそういうと…歩き出した。ここは…暑い。
「…そっかそうだよねー。たまにあってるみたいだしね。あの二人。それにしてもセイラン君…律儀だね。」
「あっちのことはどうでもいい、君は僕の誕生日を祝うつもりがあるのか?」
「あるからきたんでしょ。もう、向かう場所は裏じゃなくて表通りに出るの。」
そっちに足を向けていた八雲を、晴香は引っ張った。そして…その勢いで手をつないだ。
「どこに行くんだ?」
「そうだねー…じゃぁ、ヒントはこれ!はい、八雲君。」
渡されたのは封筒…
封筒の中から出てきたのは「My枕」と書かれた券
「……これはなんだ?」
「いろいろかんがえたんだけど、やっぱりそれが一番かなって。」
「…だから、なんだこれは?」
「ヒントだから、つくまで考えてて。」
「考えるまでもないだろ…枕を作るのか?」
「えーなんでわかったの?」
「普通わかる。なぜ枕?」
「だって、八雲君最近…ってか毎日?いや、一年中…眠そうだから、ぐっすり眠れるようにと思って。」
「…………。それはつまり、眠れない理由が枕にあると?」
「うん、違う?」
「違う」
八雲は即答した。枕の一つや二つで…そうかわりはしない。それよりもっと、重大なことがある。
「えー…じゃぁ…枕は作るとして…ほかに何か欲しいものある?ぐっすり眠るために。」
「ある。」
「何?」
「…暑さが終わるまで、君の家で寝かせてくれ。クーラー付きだぞ。」
「……………………………………………。」
晴香が、その意味を理解するには少し時間がかかった。
「えっと…それはつまり、いわゆる同棲ってやつですか?」
「もしくは居候。どっちでもいいが…眠れない理由は暑いんだ、暑すぎるんだよ。最近は…それで、返事は?」
「…………………。」
そんな、すぐに答えが出せる問題じゃない。
「というか、誕生日プレゼントなんだから、君に拒否権はない…かな。」
「え?ちょ……それはずるい!拒否権ないの!?」
「…拒否したいのか?」
八雲の言葉に…晴香は唸るしかなかった。
「保留します。」
挙手をして…そう宣言をした…。
「それでね、今から行くお店にね抱き枕があってね、それがちょっと変わってる形してるの。可愛いんだよー」
無理やりにもほどがあるが…話の流れを曲げた晴香に、八雲は付き合った。
「抱き枕?」
「そうそう、猫なんだよ。この前、瑠璃と行ったはじっくり見れなかったけど、今日は見てもいいでしょ?」
どうやら、彼女も彼女に振り回された口らしい。だが、抗議がいていないところをみると、それなりに楽しんだのかもしれない。
「お好きに。」

保留にした話の結論は。結局、翌朝に発表された。


「家事分担を条件だからね。」


「了解。」


クーラーの余韻が残る朝は…心地よかった。



END



PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
←No.495No.494No.493No.492No.491No.490No.489No.488No.487No.486No.485
ブログ内検索