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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2025年03月10日 (Mon)
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2010年06月15日 (Tue)
マリンスノウ更新ですー。

私、親ばかだからっ!(笑)


いつもは、八晴視線て進んでますがインターバル(外伝に近いかな)はうちの子たち視点で!

瑠璃は晴香にパジャマを返そうとした時点で…連絡先を知らない事に気がついた。
彼女にしては珍しい失態だが…家に行くのは最終手段、である。
そんなわけで…同じ曜日に同じ時間に同じ場所に居た。
遭遇できなければ…また考える事にする。
瑠璃はそんなことを考えながら行き交う学生をみていた。
「ルリ!」
見つける前に…見つかった。しかもあまり見つかりたくない人に。
視線を向けなくとも…誰かはわかった。彼が呼ぶ名前は…なまっている。
「………。」
視線を向けると…金の髪が見えた。
明るい茶色ではない…見事な金だ。薄い水色のシャツにジーパン姿の男性が走ってきた。
「ちょっと、助けて。」
そういって…駆け寄って来た人物を瑠璃は怪訝そうにみた。
少なくとも、この人―セイラン―とは待ち合わせも何もしていない。
が…視線の先に数人の女性が居て…合点した。
「先約だから。今日は失礼するよ。」
彼はにっこりと笑って…手を振った。
営業スマイル…という言葉がぴったりするような笑みだった。
向こうにいた女性からえーっという…声が聞こえてくるが、彼は無視して…手を引いた。
「………。」
瑠璃は事情を察して…おとなしく、引っ張られていた。
彼女たちが見えなくなって…瑠璃は手を離した。
若干、振りほどくようにして…彼をにらんだ。
「ごめん、緊急事態だったんだよ。」
セイランはそういって、痛い時にするように…手を振った。
離したとき…ちょっと手を叩いたようだった。
「…用事があるって言うのに…しつこいんだから…」
「私も用事があってあそこで待ってたんだけど」
セイランの言い訳に瑠璃はとげとげしいが正論を言った。
「……ごめん。」
瑠璃のとげのある言葉に、セイランは肩をすくめて…謝罪した。
「あ、来月のフランス語いつする?」
ひょんなことから知り合って…成り行きで…フランス語の勉強をすることになった。
それの予定確認だった。
「…そっちの開いた時間とこっちの開いた時間をすりあわせて決める。そっちの予定が決まったら決まる。」
いまさらなにを…っというような視線を向けて瑠璃は言った。
「ルリはいつも僕の予定に合わせてくれてるじゃない。たまにはこっちがあわせるよ」
あなたに、プライベートな予定を話したくない…っと暗に威圧すると…セイランは苦笑した。
「…分かった、決まったらメールするね。いつもあわせてくれてありがと。」
にっこりと笑う彼を一別して…瑠璃は踵を返した…が。
「あれ?瑠璃?」
「あ…。」
呼ばれたので振り返ったところで、瑠璃も固まった。
「…………。」
「?」
それぞれの視線が絡む。
2対2…の男女がその場に絡めとられたように。
一方は八雲と晴香…先週と同じように一緒にいた。
一方はここにいる、セイランと瑠璃。
「ルリ…の友達、みたいだね。こんにちは。」
最初に喋ったのはセイランだった。
「こんにちは…えっと…瑠璃の友達?」
今度は晴香が、セイランに聞いた。
「うん。同郷」
「ドウキョウ…あぁ、同郷…って…え?」
彼の外見―見るからに外国人―の口から出る「同郷」という言葉を理解するのは少し時間がかかった。
「……どうした?」
八雲が興味がなさそうな態度をしながら…晴香に聞いた。
「えっと…噂のフランスからの留学生ですか?」
晴香がそう聞くと…セイランは苦笑して口を開いた。
「噂されるほど、目立ってるつもりはないんだけどなぁ。でも、あたりだよ。」
「なんで知ってるんだ?」
八雲が…セイランを見ながら晴香に聞いた。
「美樹が…かっこいい留学生が居るって。綺麗な金髪で…モデルみたいな人だって。」
「光栄です。マドモアゼル。」
にっこりと…また見せた営業スマイルに…晴香はちょっと固まった。
見惚れた…というわけではないけれど…どう対処していいのかがわからないといった様子だった。
「ということは…瑠璃も…フランス…?」
その気まずさをごまかすように晴香は聞いた。
マドモアゼルといえばフランス…だと思った。
「あれ?知らないの?ルリは海…」
「よけいなことを、喋るな。」
瑠璃が不機嫌そうにそういったので…セイランと晴香は肩をすくめた。
「今のは、おまえが悪い。」
いきなりおまえ呼ばわりされたが…セイランは苦笑した。
「非は認めるよ。で、名前聞いてもいいかな?ルリの友達でしょ?」
友達じゃない…っと言う瑠璃の無言のオーラは彼には伝わらなかったらしい。
「あ…私、小沢晴香です、こっちは斉藤八雲…君。」
「ハルカ…ハルは…季節の春?」
「え?ううん、…晴天の晴に香で晴香。」
「あぁ…八雲と…晴香か」
意味深にそういって一人で納得したように頷いた。
「晴れと曇り、ね。なるほどねー」
「………。あの…あなたは?」
一人でどこか別の世界に入り込んでいるような彼に…晴香は聞いた。
「あぁこれは失礼。マドモアゼル」
晴香の言葉に、彼は恭しく一礼した。自然と様になっているのが…不思議である。
「明政大学と姉妹提携を結んでる、フランスの大学からきました。セイラン・L・シオザキ…です。以後、お見知り置きを。」
手をとって、キスでもしそうな勢いだったが、八雲の威嚇に気付いて苦笑して手を離した。
「挨拶だよ。斉藤君?」
「……………。」
なにも反応を示さないセイランを八雲は不審そうにみた。
八雲はコンタクトをしていない…左目は赤いままだ。
何か反応してほしい訳じゃないが…無反応だとかえって気になるというものだ。
「…それ…目、痛いでしょ?サングラスかけなくても大丈夫なの?」
「……………。」
「?」
「………。」
三者三様の反応…をした。
「なぜ痛いと思う?」
「え?だって、赤いのは血管が見えてるからでしょ?…血管は体のなかのものなんだから、外にさらされてたらいたいんじゃないの?」
「…………。」
「あれ?虹彩には血管ないんだっけ?…いや、血管が通ってないのは角膜だけ…だよなぁ。」
っと、一人でぶつぶつ言っていた。また、思考がどこかへ行こうとしている。
「感想は、それだけか?」
「えー…感想って言われてもねぇ。強いて言うならお似合いだね、お二人さん。末永くお幸せに。」
いきなりでてきた言葉に…晴香は頬を染めた。
「…おまえの思考が全く読めない。」
っと反論する八雲の頬も若干赤い。
「ふたりとも、紅じゃない。…八雲の目も、晴香のネックレスも」
さっきまでは斉藤君…だったのにすでに呼び捨て…だった。
「太陽と雲のコンビもなかなかいいしね。」
「シ、シオザキ君…と瑠璃は…同じ目の色じゃない。」
「セイランでいいよ。」
しどろもどろになりながら言う晴香にそう返して…しみじみ言った。

「そういえば、僕の目は青かったっけ…。ルリと一緒だね。」
「……欧米にはうじゃうじゃ居る、二人が特別じゃない。」
いままで黙っていた瑠璃が…口を挟んで…時計をみた。
返りたい、っというアピールだというのに、気がついた。少なくとも、彼は。
「ダシにしてごめん、僕も仕事に行かなきゃ。」
「あ、私たちも…ね?」
「あぁ。」
「ルリ、送っていこうか?」
「…小さな親切は受け取るが…大きなお世話だ。」
瑠璃がにらむと…セイランは肩をすくめて笑った。
「O.K.気をつけて。じゃぁね。」
ひらりっと…手を振って彼は駆け出した。
「…引き留めちゃ…まずかったかな?」
「気にするな。あれが一番喋っていた。」
八雲がしれっとそういって。促すように歩きだした。
「…あ、…小沢さん。」
晴香が、八雲に着いていく前に…瑠璃は声をかけた。
ずいぶん遠回りしたが…目的は果たせそう…だった。
「晴香だよ…なに?瑠璃」
「………パジャマ、を返したいんだけど…連絡先側からないから…待ってた。」
呼び方を…訂正されて少し戸惑ったが…一応用件を伝えた。
「あー…そういえば、携帯もアドレスも聞いてない。」
「明日、持ってくる…どこかで待ち合わせをしたいんだけど」
「じゃぁ、『映画研究同好会』で…この時間で平気?」
「……。大丈夫だ。5コマ目がおわったら行く。」
「うん分かった…八雲君にも言っとくね。」
そこでなぜ、八雲がでてくるのかは分からなかったが…瑠璃は頷いた。」
「じゃ…明日ね。」
「あぁ。」
言葉にするのにはためらいがあったが…なにも言わないのは…いやだった。
「また明日。」
瑠璃がそういって手を挙げると…

「うんっ!」

満面の笑みで晴香が答えてくれた。


彼の言っていた…「太陽」の意味が少しだけ…分かったような気がした…


続く。
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