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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月20日 (Mon)
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2007年08月14日 (Tue)
なんか違うと思うのですが、どこが違うのか分からない…。

八晴スランプですかなぁ?



拍手お返事

13日0時
 ありがとうございますっ!って…ここでお返事してよかったのか(苦笑)
 精進しますので、これからもお付き合いくだされば幸いです。


さて、八雲誕生日話。

多分王道まっしぐらな展開(苦笑)




8月3日の目覚めは…

最悪、だった。


目が覚めた、と認識した瞬間に全身に悪寒が走った。
思わず布団を肩まで引っ張りあげて自分の肩を抱いた。すっかり冷えてしまっている。

起きなきゃ…っという意志と反比例するように、瞼は重くなっていった…………。





「八雲君…」

電話口からでも分かるぐらい沈んだ声。原因を突き止めるまで5秒もかからなかった。

「……風邪か?」

その予想を、できるだけ優しい声で言ったつもりだったが、

「…………。うん」

蚊の鳴くような声でそう聞こえてきた。どうやらへこませてしまったらしい。

声を掛けるより早くくしゃみ…そして

「ごめんね…。」

っという、なんとも落ち込んだ声が、聞こえてきた。

「気にするな。」

もっと気の利いた言葉を言えばいいのだろうけど、生憎そんなボキャブラリーはない。

「無理…」

「……じゃぁ、忘れなくていい…。…また改めて、してくれれば僕はそれでいい…。」

「……ちゃんとお祝いしたかったのに…。」

「病人が何を言ってるんだ……。」

苦笑交じりにそういうと、うぅっとうらめしそうな呻き声が聞こえてくる。

「じゃぁ、もう切るぞ。…ゆっくり休め。」

「……うん。」

名残惜しそうな声が聞こえる。

その声に、縛られてしまったかのように手が動かなかった。

 モット、コエガキキタイ

「八雲君!」

「……ぁ、」

反応が少し遅れてしまったが、そんなことより、その声の大きさに驚いた。

「聞こえてる?」

「あぁ…。」

「あのね…」

「なんだ?」

「…生まれてきてくれて、ありがとうね。」

「え?」

「…本当は、あって言いたかった…んだけど…。ごめんね」

「……………。」

「八雲君…?…怒ったの?」

「ちがう、…その……。そんなことを言われるんなんて…思わなかったから…。」

くしゅんと、小さなくしゃみが聞こえてきた。

「大丈夫か?」

「ん。平気…それで?」

「その………なんていったらいいのか…わからない。」

胸の中がもやもやしている感じだった。

じれったい。

「……そっか…。」

こほこほと、咳が聞こえてきた。

「でも…その………。うれしい…」

電話でお互いの顔は見えないが、それでよかったと八雲は思った。

きっと今、自分は泣きそうな顔をしているんだろうから。

「……ありがとう。」

顔が見えないからこそ素直な、気持ちを口にできる。

これは間違いなく、うれし涙…。

「お、お礼なんていわないでよ。私…っくしゅっ…誕生日祝ってあげられないんだから…」

くしゃみ交じりの声。

「いや…その、言葉だけで…僕は、充分だ」

落ちる前に涙をぬぐう。

「充分…だ。」

「八雲君…?」

「…本当に、君が気にする事は何もない…。早くよくなれ…」

「あ…うん。」

「楽しみに、してる。じゃぁ…」

「うん。」



電話口からもう、声は聞こえない…。

それでも、その言葉は、八雲の耳に焼き付いてはなれない。

気恥ずかしいのもある。


でも、それ以上に


…嬉しかった。

誰よりも、大事に思っている人に…そう言ってもらえて…。


泣きたいぐらいに…


愛おしかった…。




携帯電話から手は話せないまま…。








午後6時。

八雲は、のっそりと出かけていった。ポケット鍵と財布を携帯を入れて。

その鍵は、映画研究同好会の部屋のものでは、なかった。



ガチャっと乾いた音と共に、錠が開く。

鍵はもらっていたが、使うのは初めてで…開いたことに対して、妙な安心感があった。

香ってきたのは、彼女の香だった。

毎日、ここに帰れたら、いい…。

そんなことを思っていたがすぐにそれをかき消した。

今は、それが目的じゃない。

「…いるか?」

静かな室内。返事はない。

ゆっくり、だが確実に晴香の居るところへ向かっていく八雲。

寝室のドアを開け…その姿を確認した時、ふっと…自然に笑みがこぼれた。

少しの躊躇の後、八雲はゆっくり歩を進めた。

ベッドサイドに膝をついて顔を覗きこむ…額にうっすら汗が滲んでいた。

それを拭うように額に手を当てる。昨日より、大分熱くなっている。

「晴香…。」

初めてこの名を口にした。

「晴香…起きてるか?」

…ん…っと反応があったかと思うと、ゆるゆると瞼が開かれる。

「やっ!?」

八雲の顔が引きつった。

そこで言葉をとめるものだから、否定の「嫌」かと考えてしまったのだ。

それは取り越し苦労なのだが…

「八雲…君?」

「あぁ…。そうだ」

「夢…?…」

「?」

「……夢、だよね?」

まだ、半分寝ているのだろうかそんなことを言う晴香。

「…現実だ。」

柔らかく笑って、頬に触れるとぴくりと反応が帰ってくる。

「…冷たい…。」

「現実だろ?」

「……うん。…でも、どうしてここに居るの?」

晴香のその、当然の問いに八雲は頬を少し赤く染めた。

「…理由なんて、ない。」

「?」

「……言葉通りだ。」

皮肉が出てきそうになったところをぐっと押さえて…。八雲はそう言った。

今日は、素直になろうと…。そう、決めたから。

「どうしよう……。」

不意に晴香の声が聞こえてきた。

「?」

小首をかしげて八雲は晴香の話の先を促す。

「…夢が現実になっちゃった。」

「???」

ますます分からなくなって今度は八雲の眉間に皺がより始めた。

「八雲君が…傍にいる夢、見てたの。」

くしゅんっとくしゃみを挟んで言葉を続ける晴香。

「それが今、現実に八雲君が居てくれるから…。」

「…夢が、現実になったってワケか。」

「うん…。」

にこりと笑って、晴香が言う。

「…思ったより、元気そうだな…よかった。食欲はあるか?」

「…え?…」

「どうせ何も食べてないんだろう?何か作る、お粥でいいか?」

「そ、そんないいよ。私自分でつく「晴香。」

言葉の途中にその名を呼ぶと面白いほどにピクリと動きが止まった。

「病人は、大人しくしてるんだ。」

起き上がろうとしたその肩を押し戻して、ベッドに沈める。
そうして、額に唇を押し当てた。

「返事は?」

平然とそう言う八雲。

「……はい。」

それに対して、晴香は顔が赤い。
鼻の上まで布団を引き上げて…晴香のか細い返事がくぐもって聞こえてきた。

「よくできました。」

キッチンを借りるぞ。

そんな言葉と笑みを残して、八雲は寝室を出た。



「八雲君は…ずるい。」

布団の中でぼそりとそう呟く晴香。

「………っ……。」

キッチンで赤面してる八雲が居るのだからお互い様なのだろうけれど……。




本来食べるべきだったパーティの料理と比べれば、かなり簡素な食卓となった。
病人なのだから、仕方のないことだが…。


「ごめんね…八雲君。」

ご馳走様。のあとの第一声がこれだった。

「?何を謝ってるんだ?」

思わず湯飲みから口を離し、怪訝そうな顔で八雲がそう問いかけた。

「え?えっと…全部。風邪引いたのも…誕生日、祝ってあげられなかったのも…わざわざ、ご飯つくりに来てくれたのも…。」

「君が謝る必要はない。それに、最後のはごめんじゃないだろ。」

「え?…どういうこと?」

「ありがとう。だろ。君が謝らなきゃならないことじゃないんだ。僕がしたいからしてるだけなんだから。」

「……うん。」

こほっと咳をはさんで。

「ありがとう。八雲君」

満面の、笑みと共にその言葉がやってきた。

「どういたしまして…。」

「あ。八雲君…、そこのドレッサーにね」

「?」

「プレゼント、入ってるの。受け取って?」

「嫌だ。」

「え?」

八雲の気持ちいいぐらいの否定に、晴香は素っ頓狂な声をあげてしまった。そうして、咳。

「またあらためて…の時でいい。それに、君から直接受け取りたいしな。」

「でも、今日が八雲君の誕生日なんだよ?」

それを聞いて、ふぅっと八雲が細く息を吐き出した。

「…だから、僕はここに来たんだ。」

「え?」

「僕にとって、君と一緒に居れるこの時間が、何よりのプレゼントだから…。」

それを、もらいに来たんだ。

「パーティなんてどうでもいいっていったら、君は怒るだろうけどな…」

苦笑気味に笑った八雲の本心は、そうだった。

「…君が言ってくれたから…。」

「え?」

「…『生まれてきてくれて、ありがとう』…って。…その言葉を聴いて…君と、少しでも長く同じ時間を過したくなったんだ…。」

頬をぽりぽりかいて、照れ隠し。

「だから、…僕のほうこそ、ありがとう。」

その感謝の思いを唇に託して触れる。

額に、瞼に、頬に…唇に…。


「君に出会えて…本当によかった…。」


END

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無題
いいなぁ こういう話。甘い八晴大好きです!甘甘甘の八晴でもいいくらい二人には仲良しでいてほしいですね(笑)実は私は風邪ひき晴香ちゃんとそれを心配する八雲君のお話って好きなのです。なんか萌・・・。ひかないで下さいねぇ(焦)  綾さんの書くお話好きです。
junyuu 2007/08/18(Sat)00:39:51 編集
Re:無題
junyuuさん、こんにちは!コメントありがとうございます。お元気でしたか?
原作ではなかなか見れないラブラブ甘甘な傾向の作品でしたが喜んでいただけて嬉しいです。
私は、どっちかが弱ってるというシチュエーションが嫌いではないので、嬉しいですよ(笑)
話が好きだといってくださってありがとうございます。

まだ夏休み中なので、あまり間をあけずに更新できると思います。

楽しみにしていてくださいね。
【2007/08/20 20:25】
無題
SINです!


綾さんこんばんは。SINです!

八雲が晴香さんの家に行く何って思ってなくてみてたらなんか…自分でもわかんないくらい感動してました(苦笑)


綾さんまた来ますね(笑)
SIN 2007/08/15(Wed)03:22:03 編集
Re:無題

SINさんこんばんは。連日のコメントありがとうございます。

なんだかんだ言って八雲はそんなに薄情じゃないので、お見舞いにぐらいはいくと思いますが…。
ああいう形で行くのはちょっと意表をつけたかなぁっと思っています。
それで、感動していただけたのならモノカキとして幸いです。

SINさん。またきてくださいね♪
【2007/08/20 20:21】
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