「君がいないとダメなんだ…。」

うす。前期考査のため８月某日までドロンします。
コメント、拍手、メールのお返事はなかなかできなくなるともいます。
ご了承くださいませ…。




置き土産（笑）


Cantabile ed Espressivo様『甘々な20のお題』より


07.夢の中で君を見る

07.夢の中で君を見る


笑っていた。
まさしく天真爛漫な、笑み。
僕の…一番好きな笑顔。

いつまでも…

それを見ていたいんだ…。




「…や…く…！…八雲君！…」

「！！？」

肩を揺さぶられて目が覚めた……。

「八雲君っ！」

心配そうに見下ろしている君が居た。

「…………。」

「八雲君…。大丈夫？」

「…………あぁ…」

ずいぶん弱弱しい返事。

「どうして…泣いてるの？」

「泣いてる？」

僕が…？

目じりに手を当てると確かに濡れている。

「…泣かないで、八雲君」

心痛な面持ちで顔に指を滑らせた。涙を…拭ってくれたんだろう。

「どうしたの…？」

その問いに対する答えを、僕は持っていない。

何故泣いているのか……何も覚えていない

ただ…。酷く胸が苦しかった………。

右手でパジャマをぎゅっと掴んだ。

「八雲君？どうしたの…？苦しいの？」

思い出せそうで、思い出せない…

もどかしかった。君の質問に答える答えを持っていないなんて。
いや、もっているはずなのに…導き出せない自分に対して…。

「…まってて、水持ってくるから…。」

ギシッとベッドが軋んで、空気が動く。


ぱちんと、音がした気がした…
そうして蘇って来る悪夢。

「晴香っ！！」

思わず、手を掴む。

「やくも…くん？」

驚いたように振り向いた君。

その後姿が…怖かった。


「……君を失う、夢を見た」

「え？」

きょとんとして…晴香がそう返す。

「怖い…」

「……八雲君。」

「怖いんだ…。」

そう言った後。思わず、力が入っていた手を…少し緩めた。


「…僕より先に逝かないでくれ」


大事な人が…目の前で消えていく。


消えないでと…叫んでも消えてしまう…。


忘れたくても忘れられない…あの時の映像。


それが、今度は君。だった

笑っていた。
でもそれは、最後の笑みだった。

最悪のシナリオの結末。


「僕を…置いていかないでくれ。」

弱弱しい。声しか出なかった。

「大丈夫。どこにも行かないから。」

暖かい、身体で抱きしめられた。

ぬくもりは生の証…

「私はずっと。八雲君のそばに居るよ。…」

触れてくれるのは生の証…


「もう…。」




「君がいないとダメなんだ…。」



ＥＮＤ