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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月19日 (Sun)
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2007年03月15日 (Thu)
ご無沙汰です。

まぁ、本館の方更新してたんで多めに見てください(苦笑)


starry-tales様からお借りした。
【抱きしめる】5のお題 より
2.逸らされた瞳を向けてほしくて。


引っ張ったわりには…(汗)


八雲に早く逢いたかった。

でも

あの店の中に入る勇気は私にはなかった。


結局、行き着いた先は公園だった……。

きぃっと軋んだ音を立ててブランコが揺れる。
頬に触れる空気は冬の息が掛かっていて、想像よりも冷たかった。
だが走って火照った頬にはそれが気持ちよかった。
 これじゃぁ、逃げてきたみたい。

何度目になるか分からないため息が晴香の口から漏れた。
そうなった原因は分かりきってる、だからこんなにも自己嫌悪しているのだ。
晴香は、地面を蹴ってまたブランコをこぎ始めた。


何でこんなに不安になるの?
 ただ、一緒に話してただけなのに。
だた、笑ってただけなのに。
 こんなにも、八雲が…遠く感じるのは何で?

私が嫉妬深いだけなの?

私が欲張りなだけなの?

私が寂しがなだけなの?

私が我が侭なだけなの?

私が、悪いの?


一度流れ出た不安は染みのように広がって

心を汚した。

不安からくる不信感に

どんどん染まっていった。



そういえば…。

八雲君に…好きって

言ってもらったことないかもしれない。

「好き?」って問えば
「あぁ、好きだよ」って帰ってくる

「愛してる?」って問えば
「愛してる」って帰ってくる

それは事実、

でも、それだけ。

それ、だけ。

八雲から、言ってくれたこと…ない。



ブランコが、止まった……。



八雲は………

私のこと……

「君の用事ってのは、ブランコに乗ることなのか?」
「!」
聞こえてきた声は、まさしく八雲の声。
 

聞き間違えないぐらい、よく知ってる声。
何でも知りたかった、八雲のことなら。
 一緒に居る時間が楽しかった。

その時間は…
 八雲にとってなんだったんだろう

私は八雲のこと、こんなにも、好きなのに……。

今は、逢いたくなかった。
 逢って顔を見たら酷い事を口走りそうだった。

それに…

泣き顔は、見られたくなかった。




「何か、あったのか?こんな所で」
返事をしない晴香を不信に思って八雲はそういいながらブランコに歩み寄った。
それに反比例するように晴香がブランコから離れた。
「おいっ!」
今にも走りだそうとする晴香にそう叫ぶ八雲。
ほぼ条件反射なんだろう。走り出した晴香の手を強く掴んだ。
「捕まえた。」
逃がすまい、と手に力を込める八雲。そうしなくとも、晴香は動こうとしなかった。
動いているのは、主を失ったブランコだけ。
「…晴香?」
俯いて、何も言わない彼女にそう声をかける。
「こんな時だけ、名前で呼ぶのね。」
ほんの少し恨めしそうな、声。
ほんの少し震えている声。
「……。一体、どうしたって言うんだ。」
不思議そうに八雲が訊ねる。
「八雲君は…ずるい。」
ぼそりと、聞こえたのはそんな言葉。
「?」
だが、やはり八雲には何のことだか分からない。
「いつも私だけ…じゃない。」
「だから、何が?」
「…八雲君から、好きって言ってもらったことないよ…?」
「え?」
手首を掴んでる八雲の手が、ほんの少し緩んだ。
「いつも私が、好き?って聞いて…八雲君はそれに答えてるだけ…だよ?」
「…………。」
そうだったかと八雲が記憶のページをめくっている間にも晴香の言葉は止まらない。
「八雲君の方から、好きって言ってくれた事がないのに…私だけ…私だけ、好きだよって…大好きだよって言い続けて…。」
 僕はどれだけ自惚れてたんだ。

  思いが、一方的に空回りしてるみたいで…


「私、…馬鹿みたい…。」
 言わなくても分かってくれるなんて、自惚れだ。

涙が乾いた地面にぽとりと、降ってきた。
「……不安だよ。」
 その、自惚れで…君にそんな思いをさせてたなんて…。

「悪かった。」 
そういいながらとても小さく見える背中をそっと包み込んだ。
微かに、身体が震えていた。




「こっちを向いてくれないか?」

最初は躊躇いだったんだろう。本当に、僕でいいのかという…。
その躊躇いを取り除いてくれたのは他でもない彼女。
思いを伝えるのは彼女からの応答で満足していた。
充分だと…彼女は分かってくれていると、自惚れていた。
「…抱きしめてたら…向けないよ?」
まだ、声は震えている。それでも少し、明るくなった声。
「そう、だな。」
抱きしめてる腕を解いて…正面に回りこんだ。まだ、俯いている顔。

 …その目に僕を写してほしかった…。

両手で頬を包み込んで…上を向かせた。
「……八雲君」
掌に感じる涙。未だに、流れ落ちているそれ。

泣いているのに…

その瞳が、綺麗だと思う僕は最低だな。

涙を拭って…
拭いきれない涙を舐め取った。

僕が泣かせてるのに

その全てが綺麗だと…。

思ってしまうなんて…。

どれだけ、君に惚れてるんだ、僕は。


「君が好きだ。」


それなのに、何故今まで言わなかったんだろう。

コクリと頷いた君をが愛おしくて…

思わず強く抱き寄せた。



「君を、愛してる…よ。」




言わなければ、伝わらない思いだってある

END


もう、なんか前フリ長すぎた(汗)




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無題
SINです!


綾さん
自分は、感動したことがあまりなくてこの小説を見て自分は感動しました(泣)
SIN 2007/03/21(Wed)06:11:35 編集
Re:無題
SINさん、こんにちは!

感動ですか!
あわわっなにやら恐縮ですが少しでも心に響いたものが書けたのであれば物書きとしてこの上ない幸せです。
というか、SINさんは私を舞い上がらせる天才ですね(笑)
嬉しくってニコニコしっぱなしです。
普段言わなくても伝わってる…と思う言葉こそ本当は大切な言葉なんじゃないかなっと思います。
ありがとう然り、ごめんなさい然り。
それに気づける人は意外に少ないんじゃないのかな…と思い書いた作品です。
かくゆう私も人から言われなければ気づきませんでした(苦笑)

よろしければ、どのあたりに感動したのか今度教えてくださいね。

【2007/03/22 16:32】
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