ここは「文風月」内、FF置き場です.
カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
…外伝の発売が楽しみでなりません(笑)
まだかな~。
外伝で書いて欲しいエピソード、ダントツで真人に会いに行く2人。なんですが…
果たして今回加筆されたのはどんなエピソードなのか?
ふふっ…それが一番楽しみだったり。
(一応、B-QESTは持ってますので)
さてさて。
starry-tales様からお借りした
【抱きしめる】5のお題
より
5.こうすれば何も見えない
第3.次回最終かな。
晴香が起きた時、隣の八雲はいつもとかわらない様子で
「よく、そんなに眠れるな。君は遠足の前に興奮して眠れない小学生か?」
と、いつもの調子で笑っていた。
「寝ろって言ったのは八雲君のクセに。」
そう言った晴香の身体からブランケットがずり落ちた。
晴香が自分でかけた記憶はない、と言う事は……。
「掛けてくれたんだ…ありがとう」
隣の八雲にそう言った。
「…風邪を引かせるわけには行かないからな。」
ぼそり、と八雲がそう言う。ここで終わればいいものを
「ま、ナントかは風邪を引かないっていうから必要なかったかもしれないがね。」
八雲は一言多いのであった。
「何よそれーっ!」
と…いつもなら言っている所だが今は流石に飛行機の中。
八雲の脇腹を突っついてぷいっと窓の方を向いた。苦笑が聞こえてきたが、八雲は何も言わなかった。
不貞腐れていた時間は長くは続かなかった、機内放送がそろそろ到着だと告げたからだった。
「そろそろだね。」
そう言って八雲のほうを見た晴香は違和感を覚えた。
どこか違う、と思いながらもじゃぁどこが違う?と問われればはっきりと指摘できない。
髪の毛はいつもと一緒。顔も…両方の色が違う目もさっき見たときとかわらない。
「八雲君…。どうかした?」
そのもどかしさから抜け出したくて八雲にそう問うて見た。
「…どうもしてないぞ?」
怪訝そうな顔で八雲がそう返す。
「え?…でも…」
そういわれてもやはり、何か違うと脳は言っている。
「そんなことより、そろそろちゃんとしろ。」
「へっ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。何をちゃんとしろって言うの?
「寝てたんだ。寝癖、ついてるぞ。」
不思議そうな晴香の顔を見て平然と八雲がそう言った。
「嘘っ?」
「嘘だ。」
よほど晴香の慌てるのが面白かったのか八雲は笑いをかみ殺しながらそう言った。
「もうっ、八雲君!」
頬を膨らませて笑う八雲に対抗する晴香。本気で起こっている様子はない。
「ほんっと、仲いいよね。2人」
前の席から美樹の冷やかしが入った…ところで、着陸に備えるよう機内放送があった。
こうして、沖縄に到着したのだった。
沖縄の第一印象はやはり暑いだった。いくら今年が暖冬だといってもやはり沖縄の気温には敵わない。
重ね着してきて正解だったな。と思いながら着ていたカーデガンを脱いだ。
「まず、ホテルに荷物置きに行くけど…それでいい?」
空港を出て美樹がそう聞いた。
「いい?八雲君?」
「あぁ。」
太陽が近く見える沖縄の空を、眩しそうに見上げながら八雲がそう返事をした。
八雲の額にじわりじわりと、汗が浮かんできている事に本人以外の誰も気づいていなかった。
「はい、これ」
「………へ?」
ホテルのロビーで手洗いから戻ってきた晴香は美樹から渡されたモノを見てあっけに取られた。
それは紛れもない、部屋の鍵。もう一つは美樹が持っている…という事は。
「ちょ、ちょっと待って、こういう部屋割りじゃないの?」
指で自分と美樹、そして男2人をさして晴香がそう言った。女同士男同士と言いたいらしい。
「晴香~。話したでしょ。久美はできちゃったんだって。」
「それは聞いたけど!」
「久美も彼氏と来るつもりだったんだからこの部屋割りに決まってるでしょ?それに、私たちだけで固まったら2人に悪いでしょ」
「………。」
ごもっとも。美樹と晴香はともかく男2人は今日顔を合わせたばかり。会話のない、静かな部屋が容易に想像できた。
「別に問題ないでしょ?恋人同士なんだから。じゃぁ、そう言うことで」
そう言って美樹はエレベーターに向かって歩き出した。彼はすでにそこにいた。
晴香はため息を付いて連れを探した。
まだ、ロビーのソファーに座っていた。晴香の荷物もそこにある。
「八雲君?…どうしたの?」
彼にしては珍しく、近づいても反応をよこさない。
「八雲君?」
「…別に…なんでもない。」
ぶっきらぼうにそういと立ち上がった。が、ぐらりと身体が揺れた。
「八雲君!?」
倒れるような事はなかったが顔を抑えてしかめっ面をしている。
「…騒ぐな、立ちくらみがしただけだ。」
それだけ言うと荷物を持ってエレベーターホールへ向かった。
「八雲君。待って」
やっぱりおかしい。
晴香はそう思いながら八雲の後を追った。
待つ事なくエレベーターは来て2人を3階へと運ぶため、動き出した。
「ねぇ、どうしたの?」
壁にもたれかかっている八雲に晴香がそう訊ねる。
「…………。」
「八雲君?ねぇ…八雲君?」
顔を覗き込もうとするが、髪でできない。
「………。」
「どうしたの?どこが具合が悪いの?」
「……。」
結局八雲は一言も喋らず、エレベーターは3階に到着した。
「あ…。」
到着と共に鍵を晴香の手から奪い取り歩き出す八雲。
「八雲君!聞こえてるんでしょ?何か答えて!」
エレベーターホールからさほど遠くない319。そこが部屋だった。
八雲はやはり晴香の問いには答えずドアを開け、部屋に入った。八雲を追うように晴香も部屋に入る。
最初に目に飛び込んできたモノが晴香は一瞬理解できなかった。
セミダブルのベッドがでんっと置かれていた。一つだけ。
てっきりシングルベッドが二つの部屋だと思っていた晴香の驚きと混乱は計り知れない。
が、その驚きはすぐに掻き消されてしまった。
「八雲君!」
壁に寄りかかるようにして八雲の身体がずるずると床に落ちていった。
目を閉じて荒い息をしていた。
「どうしたの!?ねぇ、」
しゃがみこんで八雲の肩を揺する、ぽとりと汗が滴り落ちた。
「…大丈「大丈夫じゃない!」
八雲の言葉を晴香が掻き消した。
「お医者さん。呼んでくるから。」
晴香がそう言って踵を返すのと、八雲が手を伸ばすのと、ほぼ同時。
「寝てれば、治る。…だから大丈夫だ。」
晴香の手を捕まえて八雲がそう言った。
「ダメ。治るなんて思えない」
珍しく口調を強めて晴香が言う。
「晴香。」
どきりと、心臓が跳ねた。
「…大丈夫。だから…理由も分かってる。だから…今は、寝かせてくれ。」
手を握ったまま壁を伝って立ち上がり、そうして歩き出す八雲。
「無理しないで。」
八雲はずるい。あんな声で名前を呼ぶのは反則だ。
晴香はそう思いながらふらつく八雲をベッドまで付き添った。何度見てもセミダブルのベッドが一つ。
「八雲君…。」
晴香の呼びかけにこたえることなく、八雲はベッドに倒れこんだ…。
沖縄上陸編
短め失礼。
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