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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月20日 (Mon)
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2006年11月17日 (Fri)

『心霊探偵八雲6 失意の果てに』発売まであと14日!
2週間ですよ!2週間!いえいっ!(笑)

と…ここまではいいんですがね。

オリジで血みどろばっかり書いてたせいか…。
甘いのがさっぱり浮かばない…


最近、需要から外れてますなぁ…。


恋人、同棲設定。

『完全に包囲した。大人しく武器を捨てて投降しなさい。』


あ、ほんとにそんなこと言うんだ。まるでドラマの中みたい。

実際に起こってることなのに、どこか他人行儀な感想。

ドラマだと、警察が突入してきて…犯人を取り押さえるんだっけ?

実際どうなんだろう…。

自分でも驚くぐらい冷静に状況判断できてる。

きっと、一人じゃこうはできないんだろうな…。

一人じゃないと、分からせてくれる手をぎゅっと握り返した
「大丈夫か?」
心配そうな小さい声。久しぶりに聞く、八雲の声だった。
「平気」
少しだけ八雲を見上げて、そう返す。

変だよね、銀行強盗の人質になってるのに、全然怖くない。

非日常的な事に直面してるのに、不安も恐怖も感じない。

どこかでコレを感じたことがある気がする…。

どこだったかな…?


八雲が右肩を抱いていた腕に力を入れてきた。
「あ」
バランスを崩してそのまま八雲によりかかる。
ぎゅうと抱きしめられて思い出した。

そうだ、あのときだ。ログハウスの。

あの時は、死を覚悟した。でも、自然と恐怖はなかった

八雲と一緒なら、どこに行っても平気だと…

そう思ったんだっけ…。

大丈夫

八雲と一緒に居られるなら…

「おい。女」

カツンと靴音を鳴らして男が目の前に立って居た。

あぁ、だから八雲は強く抱きしめてるんだ…。

「コイツに、手を出すな。」

強張った八雲の声。とともに、まだ強く抱きしめられる。

その痛さでようやく現実世界へと引き戻されたように感じた。

「自分の立場が…分かってないみたいだな?」
苛立っている声。
「立場が分かってないのはあなた達の方ですよ。」
いつもの八雲の口調でそう言う。
圧倒的に違うのはいつもの眠そうな目じゃなくて鋭い目つきだということ。
「なんだと?」
「…日本の警察をナメないほうがいいですよ。身代金誘拐事件での検挙率はここ数年で…」
八雲の声を遮ったのはガラスの破裂音。
「きゃぁっ!」
窓口の傍で蹲っている女性が悲鳴をあげる。
「ごちゃごちゃ煩い。死に急ぎたいのか!?」
銃口を八雲に突きつけてそう怒鳴る。

ぞくり…と背中に悪寒が走った。
初めて、怖い…と感じた。

「駄目!」
思わず、八雲の手を強く握り、すがりついた。
「駄目だよ。駄目!」
そういわなければ、八雲が無茶をしそうだった。
「………。」
八雲は一瞬だけ、驚いた顔をしてから…すぐ渋い顔になった。
「女の方が物分りが良いな。来い。」
銃口を横に振ってそう言う。
「コイツに手を出すな…と言ったはずだ!」
思わずびくりと身体が跳ねた。
「…八雲君…。」
今までに見たことないぐらい厳しい顔の八雲が…そこに居た。
「物分りの悪い男だな。」
不快感を露にしてそう言う男性。
「八雲君!…駄目!」
私の懇願は八雲の耳に届かなかったんだろう。
「警察だ!」
雪崩のように流れ込んでくる人。
「ちっ!」
舌打ちが聞こえたかと思うとグイと腕を引っ張られた。
「止めろ!」
声と共に、ぬくもりが離れた。
途端に襲われる恐怖。
「そいつを離せ!」
私に向けられていた銃口を手で握り締め八雲が吼える。
「撃つぞ!」
やめて…お願い。
「撃てるもんなら撃ってみろ」
どうやったのか、いつの間にか八雲の手の内に拳銃があった。
「…ちっ!…」
踵を返して走り出す男。それに続く八雲。
「駄目!八雲君!」

叫ぶけど、やっぱり八雲には届かない。

八雲と離れてから

身体の震えが止まらなかった。


それから、何があったのかは今、覚えてない

見ていたはずなのに、頭に何も残っていない。




「…終わったぞ、大丈夫か?」
警察や他の人質がごった返している中で、八雲は蹲ったままの晴香に声をかけた。
彼の頬から少し血が流れてる。
「晴香?」
肩を揺すって見るが反応が無い。
「…もう、大丈夫だ。」
そういったかと思うと、いきなり平手が飛んできた。
「っ…。」
彼女から、手を上げられたことなど無い八雲は一瞬、何が起こったのかわからなかったんだろう。
数十秒は唖然としていた。
「馬鹿!なんであんな無茶するの?」
涙目の晴香が目を吊り上げてそう叫ぶ
「……………。」
「私が…どれだけあなたを大事に思ってるか…まだ分からないの?」
目は怒ってるが、悲しげな晴香の瞳に八雲の心臓はぎゅうと掴まれた。
「そんな事は……。」
「じゃぁなんで、無茶するのよ……八雲君の、馬鹿!」
「………。」
「馬鹿!ばか」
どんどん…と八雲の胸を叩くが、その力は弱弱しい。
「怖かった…」
しまいには叩くのを止め、その胸にすがりついた。
「………悪かった。」
ゆっくり、晴香の肩に手を置いてなだめるようにそう言う八雲。
「…もう、危険な目にはあわせない。」
「違う!違うの!…やっぱり、八雲君は分かってない!」
大きく、どんっと叩いてそう喚く晴香。
「……。」
「怖かったのは…死ぬのが怖いんじゃないの。八雲君の傍に居られなくなるのが怖いのよ!」
「………。」
「一緒に居られれば、どこに行ったって平気なのに…。」
「…離れて、悪かった。」
八雲はそう言って、ゆっくり晴香を抱き上げた
「八雲…君」
「…今日はもう、離してやらない。」
晴香の耳に小さい声でそう言う。
「……怪我、してるんだ」
心配そうにそう言う晴香。
「かすり傷だ。心配ない。」
器用に肩で頬の血を拭って、そう言う。
「…もう、離れないでね?」
「あぁ」
力強く頷いてから、八雲は一歩を踏み出した。



END

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