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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月19日 (Sun)
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2006年11月05日 (Sun)

『心霊探偵八雲6 失意の果てに』発売まであと26日!



本家が出る前にいろいろ出しちゃうか…っと思いまして。
今ある作品ざっと見てみたんですが、見事に甘いのか暗いのかしかない(笑)
その中で本家の前に出しておきたいものをピックアップしてみると…
通常ページじゃ展示できないもんばっかりでした(汗)
(痛いのやら暗いのやらグロイのやらエロイのやら・苦笑)

そんなわけで、カタカタと本家の(裏ページ)製作してました。
この前、一応長編のプロローグをUPしたんですがまだまだ改善の余地ありです。
ミステリモノもそろそろUPできそうですが、どうなるやらね。


今日のSSは温泉かハロウィン後日話でもかこうかなぁ~っと思ってたんですが…

どうにもこうにも思考が暗い方向へ行っとります(苦笑)




一応夫婦設定ですが、半ば晴香が廃人です。



心的外傷トラウマなんて…


僕には縁がないものだと思っていた。


病院独特の匂いに顔を顰めながら八雲は、斉藤晴香のネームがかかったドアを叩いた。
「晴香、入るぞ。」
返事がないのは分かっているからそのままドアを開ける。
見えるのはベッド、テレビ、花瓶…といつもの風景
「…八雲…君。」
嬉しそうな表情で八雲を迎える晴香。
だがそれには生気がまるで感じられない、蝋人形が無理に笑っているようだった。
ズキリ…と胸が痛む八雲。だが、それを晴香に見せる訳には行かない。
「気分はどうだ?」
点いているテレビを横目で見ながら、出来るだけいつもどおりにそう訊ねる。まだ、胸の痛みは治まっていないのだが…。
「大分、よくなったよ?お医者さんも…来週には退院できるだろうって」
「そうか…よかったな。」
「うん。」
再びあの笑顔で笑う晴香。左頬を覆い隠すように貼られたガーゼが痛々しい。
「……。学校の方は、ゆっくり休んでいいと連絡があったぞ。」
ベッドサイドの丸椅子に座りそう言う八雲
「うん。教頭先生が…今日お見舞いに来てくださったから。」
あぁ…それで花が新しいんだな…。
八雲は花瓶の中身を見ながらそう思った。
鮮やかなピンクの花やオレンジの花がきれいに生けられている。
確か教頭は女性だったな…とそんなどうでもいい事を思い出す八雲。
「……。学校、ひどいことになってるんだって…。」
ポツリ…と晴香がそう呟いた。
「晴香?」
はっとして顔をそちらに向ける。
「……子ども達がね…外に出るのが…怖いって…」
「…………。」

楽しい遠足が、一瞬の内に消え去った。
振り返った晴香の目に映ったのは
まっすぐにこちらに突っ込んでくる車だった。
「みんな、にげて!」
その声が早かったかバキっという何かが折れた音が早かったか…。
それは分からないが、子どもの身体が中に舞う姿を晴香は見た。

八雲がそれを知ったのは学校からの電話だった。
遠足中の子どもの列に自動車が突っ込んだと。
奥さんも怪我をしたから来てほしいと…。
八雲は一瞬目の前が真っ暗になったのを覚えてる



虚ろな目で外を見ている晴香になんと声をかけたら言いのか分からないでいると…不意にテレビから聞こえてきたニュース。
『次は、先週起きた飲酒運転による…』
「っ!」
ブツンと音を立ててテレビが消えた。八雲が消したのだ。
「……晴香。」
振り返ると晴香はさっきの体勢のまま居た。
「守って…あげられなかった…」
小さな唇が微かに動いてそう言葉を紡ぐ。
「…晴香。」
「あ…あぁあっ!!…あぁっ!!」
いきなり頭を掻き毟りだす。
「晴香!」
慌てて晴香の両手を握り止めさせる八雲。
「落ち着け晴香!大丈夫だから。」
正面を…自分の方を向かせようとするが暴れてそれが出来ない。
「…傍に居たのにっ!…隣に居たのに!!手を繋いでたのにっ!!」
「晴香っ!」
思わずぎゅうと抱きしめる。
「ああぁっ!守ってあげられなかった!守って…守って……。」
「落ち着け晴香。君は…何も悪くない。」
握った晴香の手の爪が…八雲の手に食い込んできた。
「守って…まもって……」「君は何も悪くないんだ!」
痛みに顔を顰めながらも、抱きしめるうでの強さは緩めない八雲が叫ぶようにそう言うと、晴香は暴れるのを止めた。
八雲が、こんなに声を荒げる事が珍しいのか…。
「だから…」
片手で晴香の両手を押さえて左の髪を掻き揚げた。髪から血の匂いがしたのは気のせいだ。
後ろから見えるガーゼと光る涙
「そんなに自分を責めないでくれ…。」
流れ落ちる涙を
後ろからそっと…吸い取った。
「やくも…」
虚ろな目でゆっくり振り返る晴香。
「君は何も悪くない。」
腕の力を少し緩め、頭を横に振りながらそう言い聞かせる八雲。
「………。」
「よく、頑張ったな。」
頭を撫でてそう言う八雲。出来るだけ笑顔で…。
君は何も悪くないんだと…分からせるように、優しい笑顔で。
「ふっ……うわぁああぁっ!!」
暫く、瞳にいっぱいの涙を浮かべていた晴香だったが、いろんな糸が切れたんだろう。
八雲に寄りかかって病室の外まで聞こえるほどの声で泣いた。
「…よく、頑張ったな。」
晴香を抱きしめながら、そう言ってやる八雲。

「どうかしましたか!?」
看護師が慌てて部屋に入ってくる。
「大丈夫です。何でもありません。」
看護師に向かってそう言う八雲。


晴香のつけた手痛みは消えない。

それでも…

足りない。

彼女の受けた痛みは…こんなものじゃない。

身体の傷はいずれ癒える。

だが、心の傷は…簡単には癒えないのを

僕自身が一番よく知っている。


記憶が、君を傷付ける…。
僕にはどうにも出来ない。
そんなに辛い事があっていいのか…?
ただ、こうやってるだけ
どうしようない傷を…
それしか出来ない自分が…
何故彼女に背負わせた?
もどかしい…


だが…彼女は強い。

時間と共に立ち直っていくんだろう。

大丈夫じゃないのは…

むしろ僕か…。


どうしようもないとわかっていても…

何も出来ないことに自己嫌悪する。


………………。
君の心の傷が治るのと
僕の心が折れてしまうの

どちらが、先だろうか…?


END


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泣ける相手が居るのは幸せ?
私も過去に大切な人を守れなかった思い出があります。結局その人とは離れ離れになってしまって…。悲しい想い出と化したと思っていても、涙が出ると過去は変えられないと、傷は残っているのだと思い知らされます…。
愛娘も過去の呪縛から解き放される事を祈ります。
哀(あい) 2008/10/09(Thu)05:22:38 編集
Re:泣ける相手が居るのは幸せ?
哀さん

過去の記事にコメントありがとうございます!

そうですよね。
過去の傷…肉体的な傷は癒えても精神的な傷はそう簡単には癒えませんよね…。

この話では…随分な心の傷を晴香に負わせてしまいしましたが…2人で支えあっていって欲しいと思います。
八雲の心が折れるより…晴香の復活が早い事を願っています。
2人なら…大丈夫っと…何の根拠もないことを言っていますが(汗)

暗い話でしたが、読んでいただいてありがとうございました!
【2008/10/20 22:27】
ぐはっ!(何)

こんにちは、また来ました(笑)

いや、本当…泣きます。こういう話は特に。こう…経験があるといかんせんダブってしまうもので…頑張れ晴香!頑張れ八雲!(笑)


いいものを読ませて戴きました。ありがとうございました。これからも頑張って下さい!
志季 2006/11/06(Mon)18:51:59 編集
Re:ぐはっ!(何)
お久しぶりです!お元気だったでしょうか?
またのご訪問&コメントありがとうございます!
そして、また泣かせてしまいましたか…大丈夫でしょうか?
この話の様な経験が有るとお聞きしたとき、ふと考えてみました。
その辛さを本当に理解してないのに、徒にそれに触れていいものかと…
実際に経験がない私がコレを書く事によって傷をえぐりかえしてるんじゃないかって思ってしまいました。
それでも、いいものと言っていただけるなら、幸いです。
ナイーブ気味ですみません(汗)
【2006/11/13 12:47】
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