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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月20日 (Mon)
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2013年01月01日 (Tue)
あけましておめでとうございます。
古谷でございます。
2012年はご無沙汰しておりましたで…。

2013年の更新は新・組版作業室の凪さんとのコラボ作品となりました。

リレー小説という形で昨年、続けていたのをようやくお披露目です(笑)
日替わりで更新いたしますので、明日は凪さん宅の更新です。

お楽しみに!


★追加説明(←先に言え…っと突っ込まれそうですが・苦笑)を2点ほど。

・メールでのやり取りのコラボなので、全体的に一度の更新が短めです。
 なので、2~3話を一つの記事にまとめます。
 新しい記事を上げるまでは、最終更新↓を参照していただければ幸いです。

・途中からパスワード制になります。
 まぁ、それは随時お知らせします。


最終更新 1月5日

志乃サイド3です。





「暇だ。」
聞きなれた…男性の声に顔を上げると…自分の定位置で全身を使って暇を表現している…真田がいた。
デスクに両手をぐてっと伸びていた。
その姿が…なんだか最近見た、パンダのキャラクターに似ている。
「報告書は?」
そんな彼に、きつく言葉をかけたのが…この部屋にいるもう一人。公香だった。
「書いた。」
「予算請求書は?」
「ちゃんと見なおした。間違いなかった。」
全身で暇オーラをだせるのは…文句を言われないだけの仕事をしたという証だろう。
ファミリー調査サービスの代表でもある、山縣さんは知人に会ってくると言って出かけている。
「バイクをいじろうにも、肝心のバイクがないし。」
っと、つまらなさそうに…真田はそういった。
「それは、また壊したあんたが悪いわよ。」
公香の容赦無い突っ込みを、肩をすくめてかわした。
二人のやりとりは、テンポがよくて…息が合っている。
姉弟や、親友、はたまた恋人同士と…言うようなやりとりだった。
恋人っと…言う単語にちくりと胸の奥が痛くなったのは…きっと気のせいだ。
「遊びに行きてぇ…。」
真田がそう言ったのに…少し笑ってしまった。
最近見た、面白いサイトを思い出したからである。
彼の頭のなかは、「遊」で、いっぱいだった。
「お金無いでしょ。」
真田の願望は公香に一刀両断された。
確かに今月も赤字だ。月にいくらかは自由にできるお金をもらっているが…財政は厳しい。
経理担当として、頭が痛い問題だった。
「じゃあ、手伝う?」
公香が手に持っている布を掲げた。
彼女がしているのは…衣装の修繕だった。破れてしまったタイトなスカートを直している。
本当に彼女は器用だ。私も、裁縫ぐらいできないといけないなと…思う。
自分は…パソコン操作ぐらいしかできない。
「志乃?」
聞こえてきた、声にはっと顔を上げた。
真田が…心配そうに、こちらを見ていた。
「なんですか?」
わかっていながらも…不自然にならないように聞き返した。
「…いや…どうした?」
「どうもしてませんよ?」
平気だと、アピールするように…軽く言った。
「…なら、良いけど…」
まだ、彼は何か言いたそうに…していたが…。
強引に、話を変えた。
「真田くん。脳内メーカーって知ってる?」





唐突な質問に…彼は不思議そうな顔をして…聞き返してくれた。
「脳内メーカー?」
何かを思い出すように首をかしげる。
「そういうサイトがあって、名前を入力すると、その人の頭の中に何があるか表示してくれるんです。」
知り合いのブログで見かけたそれは…説明したとおり、名前から脳内に何があるかを示してくれるもの。
ジョークサイトではあるが面白い。
「へぇ…。」
感嘆のような…ため息のような声がした。
「あんたは『食う・寝る・遊ぶ』で一杯なんじゃない?」
と…言ったのは、隣のソファーの公香。
「仕事は?」
反論するかのように、彼はそう切り返した。
「勤務時間中に『暇だ。』とか『遊びに行きてぇ…。』なんて言ってる人の頭にあるわけないでしょ。」
公香がしれっと…そう言うと、真田は拗ねたような表情を見せた。
時々見せる、子どもっぽい表所に…少しドキッとした。こういう表情は…あまり自分には見せてくれない。
「いや、ちょっとは」
「あ、『バイク・バイク・遊ぶ』かも。」
子どものように反論を言おうとしたが、公香の更なる予測にかき消された。
そのやりとりが、可笑しい。本当に、姉弟のような会話で公香に頭が上がっていない。
思わず、手で口を塞いだ。さすがに笑ってしまうのは失礼な気がした。
それでも…公香の予想はあながち間違ってない。
「やったことあるのか?」
彼のその質問に、コクリとうなずいた。
「はい。…お医者様から教えてもらった、リハビリをしている人たちのコミュニティーがあって…」
そう言いながら、机の上のパソコンを操作する。
「そこで、仲良くなった人の日記で出てたので、面白そうだったのでやってみたんです。」
「へぇ。」
公香が、興味深げに隣から覗きこんできた。
まだ、二度目の見直しが終わってないけれど…公香が、興味を持ってくれたのは嬉しかった。
「真田の脳内を覗いてやりましょうか。」
にやり…っと、公香が笑って…椅子ごと移動してきた。
「修復はいいのかよ。」
「私は仕事が早いのよ。」
真田がぼそっと…皮肉を言ったが、公香は軽く流した。
そうしている間に、インターネットがつながりサイトが表示された。
「じゃぁ、名前入力ね。」
公香に促されるまま、真田省吾と打ちこむ。
「おれだけ仲間外れかよ。」
と…言ったが、興味をそそられたらしく立ち上がった。
【の脳内】というボタンを押した。

数秒後…

表示された画面を見て…

頭の中が、真っ白になった………。

この前見た…結果と全く違う


しかも…一面アルファベット一文字で埋め尽くされている。







「そっ、そうよねぇ。……真田だってオトコノコだもの…関心があるわよね。…でもコレだけって…発情期の猿じゃないの!」
そんな、公香の声で…真っ白になっていた、頭の中が徐々に戻ってくる。
それと同時に、あわてて口を開いた。これを見せたかったわけじゃない。
「ち、違います! 前にやった時は…」
「時は?」
横に来ていた彼にまっすぐに見つめられると…
かっと、また体温が上がったようなきがした。顔が熱い…。
「…『遊』でいっぱいでした。」
それが、彼とぴったりだったから見せたいと思ったのに。
これじゃぁ、彼を揶揄していると思われても仕方ない。
そんなつもりじゃ………。
「じゃあ今度は公香をやってくれ。」
聞こえてきた言葉に、はっと我に返った。
気にしていない…っというような軽い口調で彼はそういった。
それに、どれだけ救われたことか。
「はい。」
頭の中の考え事を全部シャットアウトして…池田公香と入力する。
また、変なのが出たらどうしようかと…ドキドキしたが、今回は一面同じということにはならなかった。
ほっと胸をなでおろす。
「…九割は『金』で、残りが『悩』と『欲』か。ずいぶんと煩悩まみれなようで」
まさにその通り、頭を半分に切ったような画面に黄色い『金』の文字、真ん中あたりに青色の『悩』と紫色の『欲』
「当然でしょ。誰かさんがしょっちゅう怪我するわ、バイクを壊すわで、うちは火の車なんだから。職場の財務状況は常に心配だし、将来について悩むこともあるし、割りのいい仕事が欲しいって思うわよ」
自分のことを、知ってか知らずか、公香はさらりとそう返した。
彼女のいうことはどれもこれも正論で…少し笑ってしまった。
「志乃はどうなんだ?」
「そうね。やってみてよ。」
「はい。」
自分の名前をやってみたことはある…けれど、彼の場合と同じで、きっと違うものが出てくるんだろう。
覚悟を決めて、ボタンを押す。
頭の中はほぼ、青色の『働』で埋め尽くされていて…その中に一つだけピンクの『恋』という文字が見える。
当たりすぎてて、怖い。
「志乃ちゃんも女の子なんだから、恋の一つや二つするわよね。ま、相手が鈍感で、乙女心がわからない無鉄砲男だと困るけど。」
「き、公香さん!」
制御するように名前を呼んだが、それより大きな声がすぐに聞こえてきた。
「おれは乙女心がわからない無鉄砲男じゃねぇよ」
「別に、誰もあんたとは言ってないわよ。」
と…返すと、ぐうの音も出ないというように彼は黙り込んでしまった。
公香は一瞬にやりと笑い…何事もなかったかのように裁縫に戻った。

それってつまり…。図星、ということ?

少しは、自分に自信を持ってもいいのだろうか。

うぬぼれて、しまいそうになる。

「真田はいるか?」
ドアが開くなり、聞こえてきたのはそんな声。
「山縣さん!」
彼が、救世主とばかりに…山縣の名前を呼んだ。
「おかえりなさい。」
「おかえりなさい。山縣さん」
公香、そして自分も続いて声をかける。
「真田、すぐ出る準備をしろ。」
「了解。でもなんで?」
渡りに船…と言わんばかりに彼は立ち上がった。
「来ればわかる。」
っと…だけ言って、山縣さんは踵を返した。
そうしてすたすたと歩いて行ってしまう。
「長くなりそうなら電話しなさいよ。」
「おう、じゃぁ、行ってくる」
自信に満ちた笑顔を向けて…彼は部屋を後にした。

一緒に行けたらと…願い続けていても

まだ、それはかなわない……。

閉まったドアを…しばらく見つめた…。


彼が帰ってきたのは、夕方で…。

服のあっちこっちに機械の油がついていた。
聞けば、河合さんのところへ行っていたらしい。
事件ではなかったことに安心して…慣れないながらも、家事をこなした。



夜。仕事がなければほぼ、自由時間である。

時間を見つけては、なんで違った画面が出てきたのかを考えていたのだが、ようやく、原因が分かった。

パソコンを足の上に載せて彼の部屋の前まで移動した。

深呼吸をして、ドアをノックした…。








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