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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2025年03月10日 (Mon)
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2008年12月23日 (Tue)

前の記事にコメントありがとうございます。

改めて御返事させていただきたいと思いますが…残す方向で前向きに考えていきたいと思います。

好き勝手やってますが…愛されてるなぁっと…実感してます。


ありがとうございます!


さて…。マリンスノウ。

今回は、八晴メイン~。


3.二つの紅い光との出会い~1~

「八雲君!」
「なんだ、君か…」

恋人同士になっても…この会話は相変わらず、だった。
っといっても…恋人なり立てで…まだどう接していいのか分らないといったほうが…正しいのだが……。

「ねぇねぇ。昨日言ってたお店…今日、開店なんだよ。」
嬉しそうに笑いながら晴香はそう言った。
「そうか。」
次に来る言葉は大概予想がついているからそれだけ返す。
何が楽しいのか…晴香はなおもニコニコ笑っている
「今日はもう講義ないでしょ?」
今更聞くまでもないだろう。僕の事は知ってるくせに。
八雲はそう思いながらも…頷くだけにとどめる。
「じゃぁ、ね?行こう?」
「……。夕飯の前にケーキか太るぞ?」
「ちゃんと夕飯も食べれるの!ね?一緒に行こう?夕飯おごるから」
彼女におごられたら男の立つ瀬がないだろう…。
八雲はそう思いながら腰を上げた。
「食べるのは程ほどにして置けよ。」
ズボンのポケットに財布と携帯を突っ込んで…八雲は部屋の出口へと向かっていった。
即決でYESというのは…ちょっと癪なので渋る…ふりをする。
彼女には…もう見破られてし待っているだろうけれど…。
素直じゃないのは…性格だからしかたない……。
「まって!八雲君。」
嬉しそうな声が、耳に心地いいなんて…。
君には言ってやらない…。
八雲が口元に…穏やかな笑みを浮かべている事を晴香はしならなかった…。


「八雲君。こっち」
正門へと向かおうとした八雲を晴香は引き止めて裏門の方を指差した。
「バス停が…裏門から出たほうが近いの。」
「そうか。」
八雲はそう言って踵を返した。遅れまいと…晴香もそれに続いく。
正門と違って裏門は人通りが少ない。
「……?」
微かに違和感を覚えて八雲は眉をひそめた。
不快な感じは…すぐに痛みに変わり、八雲に襲ってきた。
「…っ」
思わず左目を抑えると…目ざとく晴香がそれに気がついた。
「八雲君、どうしたの?」
「……なんでもない。」
「眼が痛いの?」
そう聞いた…晴香の背筋に何かが通った。
思わず声が出そうになるのを堪えて…慌てて辺りを見回した。
当然ながら…何も視えない…。
「眼にゴミが入っただけだ」
八雲はそう言って目をこすってみせた。
曝したままの左目は赤く…いつ見ても綺麗だと…晴香は思う。
「…本当に?」
おそるおそる…というように晴香は問うた。
「声を震わせながら人の心配をするなんて、君のお節介も重症だな」
「なによ。八雲君の天邪鬼だって病的だわよ」
いーっと威嚇する晴香をみて…内心笑った。
そう、君はその調子でいればいい。
僕が守るから。
「いちいち、そんな顔をするな。本当に顔の筋肉がおかしくなるぞ」
八雲は皮肉を投げつけながらそんなことを思っていた。
決して口には出せないが…本心である。
八雲のその言葉に顔を両手で押さえる晴香に苦笑しながら、八雲はこれから行く方-裏門を…見た。
「……八雲君?」
不安げな声を合図に…晴香に視線を戻すと心配そうな…表情をした晴香が
そこにいた。
「…いる?」
なにが…とは言わない。
「いるな。」
わかったのか…っと少し意外そうな顔をしながら八雲は頷いた。
晴香がそっと八雲のシャツの裾を掴んだ。
一緒にいて…他の人間よりは霊に接する機会が多い彼女でも…なれるものじゃない。
むしろ、なれて欲しくない…っと言ったほうが正しいか…。
八雲はそう思いながら踵を返した。
「やっぱり正門から出るぞ。」
「う…うん…。」
「離れなさい!」
晴香の声に重なるように聞こえてきたのは女性の声。
鋭い、刃物のような声。
「!!」
びくりと晴香は身体を震わせて八雲に寄った。
「…?」
左目の違和感が消えた。
なぜ、…っという疑問が生じる。
アレだけ強い霊がすぐに消えるか?
――答えは否だ。
「何か叫び声が聞こえなかった?」
空耳じゃ…ないよね?っと確認するように晴香は八雲を見た。
「ああ」
今のは生きた人間の声。間違いない。
八雲はシャツを掴んでいる晴香の手を握って…そっちに向かって歩き出した。
手を握られた事と…歩き始めた事にびっくりしながら晴香も引っ張られるように続いた。
…ドサッ。
微かに聞こえた音。
…何かが、否、『誰か』が倒れた音。
左目には…何も写らない。痛みもない。

視界に入ったのは八雲の方が先だが、声を上げたのは晴香の方だった。
「八雲君!大変、人が!血がっ!」
階段の一番下。長い黒髪に黒っぽい服を着た女性が倒れていた。
転びそうになる晴香を支えながら慌てて寄った。
「ハンカチを持っているか?」
左の手の甲から赤い血が流れ出しているのを見て八雲は晴香に問うた
「うん」
声は震えていたが強い意志が感じられる声で…すぐに彼女はハンカチを取り出した。
そうして…服が血で汚れないように袖をたくり、腕時計を外してその傷をハンカチで押さえた。
「すぐに止まればいいが…。」
白地に花柄のハンカチが血を吸って赤くなるのを見ながら八雲は彼女を抱き起こした。
薄暗くなり始めた裏門の唯一の照明をうけて…その顔を確認する事ができた。
八雲はその顔に見覚えがある…気がした。
――確か檀家の…。
「八雲君。…」
八雲の思考を中断したのは晴香の震えた声だった。
「…どうした?…」
晴香の視線を追って…その理由が分った。
黒っぽい服のから覗く…恐ろしいぐらい白い腕に傷があった。
一つや二つじゃない、目をこらしてよく見ると、消えかかっている傷もある。
コイツ…リストカッターか?
手首の…一番くっきり残った傷を見ながら八雲は眉をひそめた。
だとしたらこの傷は…
八雲は改めて辺りを見回し鞄の陰にボールペンを見つけて…ますます眉間に皺がよった。
「この人…自分で?」
「…なにか、理由があるんだろう。」
八雲はそういいながら…今一度彼女に視線を向けた…。
呼吸が荒く…熱が出ているのだろうか、身体が熱く…額に汗が浮かんでいた。
「まずいな…。」
八雲がそう呟くと…晴香も彼女を覗き込んだ。
「すごい汗…病院に…。」
晴香が慌てて携帯を取出し、電話しようとする。
「待て。」
八雲はそれを制した。
「どうして。」
噛み付くように晴香はそういう。
「救急車より、専用タクシーがあるだろ。そっち呼んでくれ。」
晴香が分らないというような顔をしている間にも…八雲はぺちぺちと頬を叩いた。
「…大丈夫か?何があった?」
何度目かの八雲の問いに…反応があった。
呻き声と同時にうっすらと開けられた、青い瞳。
「あ…。」
思いだした…
「海堂、瑠璃…だな?」
「海堂…?」
八雲がつむいだ言葉に…返事とも取れるように頭が動いた。
「後藤さんを呼んでくれ。」
晴香にそういうと擦れた声がそれを遮った。
「…構うな…」
怪訝そうな顔で2人は彼女を見下ろした。どう見ても大丈夫な状態じゃない。
「…体質…だ…から。すぐに治まるから…放って置いて…」
その視線を受けて途切れ途切れにそう話す。
「放って置けるわけないじゃない。」
お願い、と唇だけ動いて…その青い瞳は瞼の裏に隠れてしまった。
「早く。後藤さんに。病人だって」
「うん。」
晴香はそう言ってすぐに電話をかけた。
八雲はその間に汗と床に落ちた血痕を晴香から受け取ったティッシュで拭いた。
「…3分でいくって。」
「…君の家に…彼女を連れて行ってもいいか?」
「え?」
八雲の意外な提案に…晴香は思わず聞き返した。
「…霊絡みだよ。体質だといっていたし…取り付かれてはいないと思うが…病院に連れて行っても無駄だろう。」
「…………。」
「霊絡みだとしたら…うちは煩すぎる…君の家が最適…なんだが…。」
だめか…?っと視線で問うて来る八雲
「…わかった。」
傷ついている人を見放せない八雲の優しさは…充分に知っている。
それに…晴香も彼女のことは知っていた。他人とは思えなかった。
「ありがとう。」
八雲はゆっくり笑って彼女を背負った。
晴香は手を貸しながら…彼女の荷物を持って後藤の車を待った


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お久し振りです

ちょくちょく顔は出しているのですが、いつもコメントする時間がなくて断念してしまいます…orz

本当は全てにコメしようかとか無謀なこと考えてたんですが流石に迷惑かと思ってやめました(笑)

もうすぐ一年が終わりますね。
今年は本当に綾さんに救われて癒された一年でした。

綾さんと綾さんの書く八晴を愛してます!

好き勝手叫んで失礼します~(笑)
志季 2008/12/27(Sat)13:31:29 編集
Re:お久し振りです
志季さん

こんばんは、お久しぶりです。
コメントはいただけなくとも作品に目を通していただいてありがとうございます。
いろいろな事がありましたが、そう言っていただけて嬉しいです。

最近は更新頻度ががたっと落ちてしまったのが申し訳ないのですが…

来年も楽しんでいただければ幸いです。

それでは、よいお年を!
【2008/12/31 23:01】
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