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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月19日 (Sun)
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2008年03月24日 (Mon)
本館からお引越しパロ。

悲恋気味。

特に突拍子ない設定はない…と思う(笑)

綾香が存命で高校卒業後に晴香と一緒に上京してるぐらいかなぁ…
綾香は大学生、晴香は社会人。(職業未定・苦笑)

大丈夫そうならどうぞ。

タイトル決まりました「隻眼のミセル未来」です。

姉が死んだ。交通事故だった…。



双子の、私の自慢の姉だった。
大学に主席で合格して、綺麗で、賢くて。才色兼備だった。
その反面羨ましかった妬んだこともあった。
それでも、大事な姉だった。
「お姉ちゃん…」
2人で暮らしていたマンション。
学生と社会人では生活リズムが違うけど…それでも、一緒に暮らしていた。
持ち主のいなくなった教科書。鞄…洋服。
「お姉ちゃんっ!」
葬儀から2日経つが、まだ涙は枯れてくれない。
「晴香…こっちに帰ってきてもいいのよ?」
今はまだ…未来の事なんて考えられない…。



気がつけば…またここにきていた…。
墓があるお寺の前。

今は両親は長野にいるが…それは母の実家である。
半ば婿養子のような形で結婚したため、小沢家の墓はここにある。

ここにいないことなんて分ってる…。


それでも、あの部屋に一人でいることなんて耐えられなかった………。


ふらり…と夢遊病の人のように足を進める。

もうあたりは暗い…。

墓地という場所のせいか、不気味な雰囲気が漂っているが…今の晴香にはそんなことは気にする事ではなかった。


「こんな時間に、こんなところにいるなんて、物好きだな」
「!?」
誰もいないと思っていた暗闇から声がした。
晴香の左の方から
「…この先は墓地しかないぞ。」
ぬぅっと暗闇から白いものが浮かび上がってくる。それが服だと分かるのに少し時間がかかった。
歳は同じぐらい。青白い顔に黒の眼帯がやけに目立って見える。
「……あなた、誰?」
「お前こそ誰だ。人の家の敷地に勝手に入り込んで」
「え?」
「…………。檀家の人間か?」
「そうよ。」
その男性はすっと…目を細めた。
「………小沢か?」
「そうよ。…分かったならほっといて。」
「ここをどこだと思ってる。……。幽霊が出るぞ」
「そんな存在、信じてないわ」
その返答に…男性は怪訝そうな顔をした。
「だから、怖くなんてない。ほっといて。」
「…この世界の中で一番怖い存在は、生きてる人間だって…事知ってるか?……」
男性が薄く笑った気がした。そうして一歩、晴香に近寄る。
「え?」
「…………。」
ふわり…っと晴香の髪が風になびいた。
「っ!あぁっ!」
その男性はいきなり声を上げ、眼帯を押さえて蹲った。頭も痛いのか髪を鷲掴みにしている。
「どうしたの!?」
晴香は驚いて、その男性の傍に駆け寄った。ぱさり…っと眼帯が地面に落ちた。
「目が痛いの?」
地面に膝を付いて…男性の肩に触れる。
「触るな!なんでもない!」
小さく呻きながら、もそう叫ぶその男性。それと同時に晴香の手を払う。
「なんでもなくないでしょ!」
晴香はそう言うと、顔をあげさせようと額に触れた。
ぬるっと…指に感じたものがあった。そうして匂う、鉄の匂い。
「血!?」
慌てて見ると指の先が赤く染まっている。慌てて、ハンカチを持って彼に近寄る。
「手、退けて!」
「触るな!」
声だけは厳しいが、その呼吸は苦しそうで虚勢を張っているのが分る。
「いいから!」
晴香は強引にその手を外させた。そうして、ハンカチを宛がおうとした。
「あ………。」
赤く光るものが目に飛び込んできて…一瞬頭が真っ白になった。
「…見るなっ!」
その声と、微かな痛みと共に、現実に引き戻された。痛みは、手を払われたのだと理解した。
見ると彼は左目を押さえて睨みつけてきた。
「……どうして?」
「うるさい!」
「どうして隠すの?」
その言葉に一瞬目を見張る。そうして…幽霊でも見るような目で晴香を見た。
「どうして、隠すの?」
「………。見たいのか?」
「…見たいわ」
ぽかんと…あっけに取られるその男性。
その目を隠す手が緩んだのはそのせいか。
白い顔の左側、黒の眼帯があったそこにあったのは赤の瞳だった。
「……。きれいな…色」
「え?」
「……緋色じゃない…朱色でもない…深紅とも違う…綺麗な赤色……」
「…っ」
何かに怯えるようにして…男性はふらつきながら立ち上がった。
「どこに行くの!?」
慌ててそれを支えるように晴香も立ち上がったがその手は払われてしまった。
「うるさい!」
「待って!あなた、怪我してるのよ!?」
「誰のせいだと思ってる!」
闇を切り裂くほどの…大声でそう叫ばれた。
「え?」
「お前の姉は過保護過ぎる。」

そう言うと、睨むように晴香を見て…その男性は墓地の奥へ逃げるように走って行った。


白い服を闇が完全に飲み込んでしまうまで……晴香は動けなかった。



暫くの後、晴香はゆっくり立ち上がって…ハンカチを探したが見つけられなかった。

代わりに…落ちていた…
眼帯を拾った。

鉄の匂いが鼻につく。

晴香はそれを持って…ゆっくり歩き出した。家に帰るために…。





なんなんだ、なんなんだ、あの女は!
綺麗だと?この目が!?…馬鹿げてる。

墓地の奥の林の中。
息を切らして走ってきた男性は木に寄りかかり荒い息をしていた。
目を閉じ、苦しそうに浅い呼吸を繰り返す。
〔あなた、誰。なんで私が見えるの?〕
そう、聞こえる声。目を開けると白く…ぼんやりした光に包まれた女性が立っていた。
「…見えるものは見えるんだよ。」
〔私は死んだのよ?〕
「うるさい。見えるものは見えるんだ。お前は、小沢の姉だな?」
〔綾香よ。〕
「……。そんなに、あの女が大事か?」
〔あの女じゃない。晴香よ〕
「…晴香。小沢、晴香…か。」
〔あの子は私が守らなくちゃいけない子なの。いつも私のせいで泣いてた子なの…〕
「………………。」
〔あなた…晴香の事、襲おうとしたでしょう?…〕
「……身の程知らずなお嬢さんには身を持って教えてやって方が良いかと思ってな。」
〔ふざけないで!次ぎ晴香に下劣な事しようとしたら、ただじゃ置かないんだから。〕
「…あぁ、二度と襲うか。……あんな女…」
〔こっちが名乗ったんだから、あなたも名乗りなさいよ。〕

「八雲。斉藤八雲だ…。」


「見ての通り、これのせいで、幽霊が見える。」

〔八雲。ね。〕


綾香はそう言って…ゆっくり消えていった……。
彼女は晴香のところへ行ったのだと、八雲には分った。


「大した姉妹だな。」


八雲はそう呟いて…来た道を引き返した。


現場にはすでに晴香はいなく…眼帯も見当たらなかった。


眼帯は落ちていなかったが…代わりにハンカチを見つけた。

「…………。」

それを無造作にポケットに突っ込んで歩き出した。





つづく
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無題
SINです!


ここ最近暑さに汗だくだくな日々を送っています


そちらはどうですか?
綾さん?


今回の作品観て初めの話と少し似ていると感じてしまいました


では、またきます(^-^)/
SIN 2008/08/08(Fri)09:26:24 編集
Re:無題
SINさん。

おひさしぶりです~。暑いですね~。動くと汗だくになりますよね。

ただいま実家に帰省中なので、天然クーラーを満喫中です。
田舎なので、のほの~んっと…すごしております。
空が青いなぁ…なんて思っていると昼寝していたなんてのがよくあるパターンです。(笑)

今回の作品。始めの話と似ているのは続き物ですから、テイストは同じです。
悲恋気味、ですから暗~い感じで進んでいきます(苦笑)
読む読まないは個人の自由ですので気が向いたら読んでやってくださいませ~~。
ではでは、また!
【2008/08/11 11:46】
無題
ええ?どうなちゃうんですか?続きが気になります!
沌夕 2008/03/25(Tue)10:14:37 編集
Re:無題
沌夕さん
パロディにもコメントありがとうございます!
続きは…まぁ、楽しみにしててください(笑)
もう頭の中にはプロットがでいてるので、7巻ネタが出し尽くした頃にはUPできると思います。
次は一心さんが登場です!
【2008/03/26 23:41】
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