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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年11月16日 (Sat)
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2007年01月06日 (Sat)
さてさて、いい加減クリスマスをば…。


その前に拍手で、八雲裏サイトについてご指摘いただきましたので業務連絡。

こっちで開いてた裏サイトはリニューアルの祭に、本家の裏ページと統合しました。
本家の方で探してみてください。
何か作品を仕上げた時にお知らせしようと思ったんですがご指摘を頂いたのでお知らせします。
(よって、八雲話は何も増えてません)
ご指摘、ありがとうございました。
ちなみに黒八雲はそっちで大量に増える予定(爆)

本家の拍手お礼が仕上がったら、ここの拍手は裏専用の拍手へと変わる予定。です(笑)

お待たせしました、クリスマス完結です。


真新しいツリーにリース、真っ白なテーブルクロス
どれもこれも八雲には見慣れないものばかり…だった。
ひどく、自分が場違いな所に来たようで、八雲は居心地の悪さを感じていた。
「晴香ちゃん。運んでくれる?」
「はい」
どこから持ち出したのかピンクのエプロンをしながら返事をする晴香。
だが、そんな中に唯一見慣れたものがあった。テーブルの上に並んでいる料理の中に…。
「おい」
キッチンへ向かおうとしていた晴香の肩を掴み引き寄せる。
「え?なに??」
ぐいんと引っ張られバランスを崩しながら、八雲のほうを向く晴香。
「…これは君が作ったのか?」
これ…と指差したのはテーブルの上に置かれているパウンドケーキ。
以前晴香が差し入れと、持ってきたのと同じ形だった。
「すごい!何で分かってくれたの!?」
晴香が嬉しさと、驚きとが混ざったような表情を八雲に向ける。
「……食べられるのか?」
晴香の問いに回答せずに、八雲がお決まりの皮肉を飛ばす。
「ちゃんと食べれますーっ!もう、この前美味しいって食べたくせに。」
「……!」
八雲がさも驚いた表情を浮かべる
「八雲君が美味しいって言ってくれたから、これにしたんだよ?」
満面の笑みを浮かべてそう言う晴香、そしてキッチンへと向かっていった。
その後姿を見送っていた八雲に、言いようもない感情が湧き上がって来た。
良い感情か、悪い感情かで区別すれば…良い方だと思う。
嬉しい、楽しい、喜び…。
そのどれとも違うような、言葉で言えない気持ち、だった。
「はい、八雲君。」
思考の途中でずいと目がトレーが移る。上にグラスが逆さにして乗っていた。
「これ置いてて。」
八雲の返事を待たずに八雲の手にそれを持たせ、またパタパタとキッチンへ戻っていく晴香。
「まったく…。」
小さくそう呟いた八雲はテーブルの隙間を見つけてはグラスを並べていった。
「ほら、飲めよ。」
と、いわれて目の前に突き出されたのはワインボトル。
八雲の並べたグラスのひとつを取り、中身を注いでいく後藤。
「お断りします。明日は学校ですから。」
そう言うと、奈緒の持って来たジュースをグラスに注ぎ渡す。
そうしてもう一杯グラスに注ぎ始める八雲。
「ちっ…。つまんねぇ奴だな。晴香ちゃんは飲むだろう?」
今度は、キッチンから手を拭きながらやってきた晴香に問うた。
「え?…えっと…」
「君もこっちだ。」
そう言うと晴香の目の前に先ほどのグラスを突き出す。
「お前な…。」
後藤が不機嫌そうに八雲を睨む。
「僕はコイツを負ぶって帰るのなんてごめんですからね。」
ムスリとした顔でそう言う八雲。
「奈緒ちゃんと一緒ですから、ジュースで良いですよ。私は」
後藤ににこりと笑みを向け、次いで奈緒にも同じように笑ってみせる晴香。
そんなやり取りをしている間にテーブルの周りに、7人が集まって来た。
血のつながりはないけれど、家族の7人。
「じゃメリークリスマス。」
グラスが全員にいきわたったところでそう、声が響いた。
『メリークリスマス。』
カツン…とグラスの合わさる音が響きあった。

メリークリスマスの合唱に、一人だけ加わらなかったのを晴香はしっかり見ていた。




奈緒が疲れてきたところで、パーティはお開きになった。
後片付けを終えて、晴香は八雲と連れ立って玄関に居た。
「それじゃ、気をつけて帰れよ」
「大丈夫ですよ。八雲君も一緒ですし。」
それが、心配なんだよ。
と思うが口には出さない後藤。変わりに、苦笑を浮かべる
「またきてね。」
「はい。それでは。」
後藤夫婦にお辞儀をして、晴香は後藤家を辞退した。
「終わったか。」
外で待っていた八雲がそう問うて来る。
「うん。待たせてごめんね。」
「一応、待たせたという自覚があるんだな。」
ふんっと笑って歩き出す八雲。
「なによー。八雲君が先先行っちゃうのが悪いんでしょ。」
そんな事を言いながら晴香は八雲の後を追いかけた。
ここから、晴香の家までの最短距離は繁華街を突っ切るルートだ。
それは八雲も分かっているらしく、繁華街目指して歩いている。
「奈緒ちゃん、元気そうでよかった。」
「そうだな。」
一応、だが返事が聞こえる。だが気のない返事。
「新しい環境にもなれてる、みたいだし。」
「…奈緒は強い子、だからな。君が心配するには及ばない。」
相変わらず、癪に障る言い方をする八雲…。
「…ね、何怒ってるの?」
八雲の顔を横から覗きこんでそう問う晴香。
どう考えてもさっきからの八雲の態度は不機嫌そのもの。
「…………。」
「楽しく、なかった?」
「楽しい、楽しくないの問題じゃない。」
しれっとそういい歩度を速める八雲。
「じゃぁ、どういう問題なのよ。」
その問いに、八雲は渋い顔をしたまま答えなかった。
徐々に大きくなる繁華街の音。
かわらない、二人の足音。
「…分からない。」
繁華街に入りかけのころになってやっと、八雲がそう口を開いた。
「?」
「…楽しかったかと…いわれても…わからない。」
足は止めずにひと目があるからか、ぼそぼそと話す八雲。
「八雲、君」
「それ以前に、僕はあの空気に馴染めてない。」
家族…の中に入りきれない。
孤立感、焦り、苛立ちと自己嫌悪。
「……クリスマスなんて僕には無縁だから」
自嘲気味に…それでもどこか悲しそうに笑う八雲。
「…それでも…」
ずいっと、八雲の前に立ちふさがるように回りこむ晴香。
自然と八雲の足も止まる。
「嫌じゃなかったんでしょ?」
「…あぁ。」
「なら…いいじゃない。」
右手、そして左手に温もりを感じる八雲。
「…少しずつ、慣れていけば良いよ…。」
晴香の両手が八雲の両手を掴んでいる。
晴香の手の暖かさを感じると同時に、自分の手のつめたさを痛感する八雲
「これからずっと…家族なんだから…。」
晴香の瞳が微かに潤んでいるのは見間違いではないんだろう。
「…そう、だな。」
そう言って八雲はゆっくり少しだけ、笑った。それを見て、安心したように晴香も笑みを浮かべる。
「…行くぞ。」
晴香の握っていた手を解き、八雲は歩き出した。
「あ…うん。」
その解かれた手を…寂しそうに見ながら晴香は八雲に続いた。
それから2人は歩いた。
これといった会話もなく歩いた。
ひたすら、歩いた。

「あ…」
という声とともに、晴香の足が止まる
「?」
怪訝そうに八雲も止まり、晴香の視線の先を辿る。
「ね、ちょっと待ってて?」
八雲を見上げてそう言う晴香。
「………クリスマスプレゼントは、いらない。」
視線の先にあったものから、おおよそ検討をつけてそう言う八雲。
「え……」
なんともいえない、悲しみと少しの絶望を孕んだ声が聞こえてきた。
その声が、なぜか痛かった。
耳にも、心にも……
「君からはもう、もらった。」
おそらく晴香がしているであろう誤解を解くべく、早口でそう言う八雲。
「次は、僕の番だ。来い。」
グイと腕を掴み、歩き出す八雲
「や、八雲君!?」
バランスを崩しながらも八雲の歩みに付いていく晴香。
「今日は君と後藤さんにしてやられたからな、仕返ししても罰は当たらないだろ。」
口元に微笑を湛えて八雲がそう言った。最も、それは晴香からは見えなかったのだが。

「ここ?」
八雲が晴香を連れてきたのは、繁華街の外れにある広場…だった。
一面芝生のその広場は昼間は子ども達の明るい声が響き渡る場所だが、この時間にはその余韻のかけらも感じない。
なぜ、八雲がここに連れてきたのは、晴香はわからないで居た。
「…そろそろ、時間だな」
携帯の時計を見て八雲がそう呟いた。
「?」
つられて晴香も広場の時計を確認する。
再び歩き出した八雲に腕を引かれながら確認した時間は10時少し前。
八雲はまっすぐ広場の中央に歩いていった。
ここでようやく八雲がどこに行きたいのか晴香には分かった。
この広場の中央には噴水があるのだ。
といっても、常に水が流れ落ちて、溜まっているような…立派なものではない。
金網の下から水が吹き出るというもの。しかも時間限定…というモノだった。
一度だけ昼間に噴水が吹き出るところを見たことがあった。八雲はそれを見せたいんだろうか。
そんな事を思っていると八雲の足が止まった。
「…時間だ。」
口元に笑みを湛えてそう言う八雲。
まるで、それを合図にしたように水が吹き上がった。
だが、それは晴香が以前みたそれとは大分印象が違った。夜空にまっすぐ伸びる赤、青、緑、黄の水。
まるで、それ自身が意思を持っているように水が跳ね色が舞った。
この光景を、言葉にしてしまうのがもったいなかった。どんな言葉でも、言い表せない。
言葉にしてしまえば、この水と色のダンスの良さを消してしまう。そうとさえ…思った。
「……綺麗」
結局、口から出たのはお決まりの言葉。
他にボキャブラリーがないのかと八雲に皮肉を言われそうだったが、当の八雲はその言葉を聞いてゆっくり微笑んでいた。
時間にしたらほんの、1分足らずだったんだろう。
だが、晴香は八雲からのクリスマスプレゼント…色と水のダンスに見入っていた。
ビチャン…という最後の水音が、静かに消えた。
「来い!」
終演の余韻を打ち破るような声。
と、同時に手を引かれる
「え?」
余韻に浸っていた晴香は突然のことに目を白黒させた。
「次が始まる。」
にやりと笑って連れてこられた先はなんと金網の上。
濡れちゃうよ。
という反論の言葉がでるより早く二人の周りで水しぶきが上がった。
だが、冷たくはなかった。変わりに晴香は酷く熱かった。
「や、くも…君?」
八雲がコートの中に晴香を包み込んだのだ。
顔を上げると青い水のカーテンが二人を包んでいた。外が全然見えない。
八雲に視線を移すと真剣そのものの顔で晴香を見ていた。
「…八雲…君?」
八雲との距離が近くて、晴香は急に鼓動が早くなるのを感じた。
そして再び強く抱きしめられた。コートの中は暖かく…八雲の匂いがした。
カーテンが赤色に変わる。
「晴香…」
抱きしめたまま、八雲はそう呼びかけた。
「…何?」
くぐもった…声が聞こえてきた。それが抱きしめているからか、照れているからかは八雲には分からない。
顔を上げられずにいる晴香の耳にほんの少し、吐息が触れ…。
「…ありがとう…」
確かに、そう…聞こえた。

二度目のダンスが終わるまで、二人もそのままだった。


終演の音が聞こえ、他は静まりかえった。
八雲は何も言わずにそのまま、そこから晴香を引っ張って芝生の上へ移動した。
「…大丈夫か」
「う、うん…。平気。」
「さ、帰ろう。」
八雲は歩き出した。晴香もそれに続く。しっかりと手は握られたままで。


晴香のマンションの前。
「ありがとう…ね。八雲君。素敵なもの見せてくれて…。」
「…アレぐらいしか。思いつかなかった。」
すこし、ぶっきらぼうにそう言う八雲。
「…じゃぁ、明日学校でね。」
「……しょうがないから相手してやる。」
と、またしても素直じゃない言葉が返ってくる。
「あ、そうだこれよかったら食べて?」
鞄の中から綺麗にラッピングされたクッキーを取り出す晴香。
「今日、奈緒ちゃんと一緒に作ったの。」
にこりと笑って、八雲の手にそれを持たせる。
「…あぁ。」
少しだけ笑って、八雲がそれを見つめる。そろり…と八雲の表情を伺う晴香。
「じゃぁ、…おやすみ。」
よしとみたのか、袋を見つめていた八雲の頬に不意打ちでキスをする晴香。
「………。」
ぽかんと…何が起きたか理解できていない八雲。
「おやすみなさい。」
急に恥ずかしくなったのか、逃げるように踵を返しマンションの中に消えていった晴香。
キスされた部分に指を滑らせる八雲。その顔は晴香と同じように赤く染まっていた。
…今日はあいつに振り回されっぱなしだ。
だが……クリスマスぐらいは…こんなのでも悪くない…かもしれない…な。
八雲はそんな事を思いマンションを見上げた。

「オヤスミ……。晴香。」


満点の星空に八雲の言葉は吸い込まれていった。




END


年を越してしまいましたが、ようやく終わりです!
お付き合いいただいてありがとございました。


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