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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年11月16日 (Sat)
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2006年12月31日 (Sun)

クリスマスは年越しです(汗)

大晦日~新年話を(笑)


うぁ~~…そういえばしょうみさんちのクリスマス、まだ充分堪能し切れてないわ……(遠い目)


一応恋人。でも進んでない(笑)という設定。



自分でも、自分が馬鹿だと思う。
吐き出した息が…寒空に消えていくのを見ながらしみじみそう思った。
今日は12月31日、大晦日…である。くだらない、日付が変わるだけじゃないか。
少なくとも、僕は2時間程前まではそう思っていた…はずなのに。
ひとつの、些細な願いが浮かんできて…しまった。

「なんで…僕はこんなところに居るんだ。」

考えれば考えるほど苛立たしくなってがりがりと頭をかいた。
あぁっ、くそっ!いったい、この思いはどこから沸いて出てきたんだ。
この、些細な願いは
何で僕が…………。
浮かんできたのは君の笑顔
僕が……。
『八雲君。』
………………。
ずっと…笑っていてほしいと…見ていたいと思う笑顔
あいつの満面の笑みには、いつも毒気を抜かれる。

今だって、そうだ。
こんな馬鹿げた…些細なことを実行するためにここに居て。それをよしとしてしまうんだから。
何度目になるか分からないため息を付いてゆっくり歩を進める。

実家に、帰省していないのは知っていた。
見上げたマンションは、昼間見るのと大分印象が違う。
この時間にしては珍しく、多くの窓から光が漏れているのが見て分かる。
それは今日が大晦日だから。
いつもと…何かが違うから。
今日が少しだけ特別な日だから。

その何かのせいで、僕はおかしいんだ。こんな馬鹿げた事を実行に移すなんて。
エレベーターに乗り4のボタンを押す。他に同乗者はいない。
彼女の顔が見たいと思った
こんな時間に行ったって、いないかもしれない。あいつのことだから、寝ている可能性だってある。
彼女に…逢いたいと思った。
なのに…

エレベーターが止まり、ドアが開く前。ドアに写る自分の姿を見て少し目を疑った。
…………。
なんで……
なんで…僕が赤面してなきゃいけないんだ。

本当に…僕は馬鹿だ。
素直に逢いたいのを認められない…
こんな馬鹿げた事を行動に移す…
……なんて。

その部屋の前で足を止める。コートのポケットの携帯が指すのは11時55分。今年も、あと5分で終わり。

今、僕の目の前に呼び鈴のボタンがある。
躊躇い…
遠慮……。
戸惑い……。
あぁ、もう!何で僕が遠慮なんてしなきゃならないんだ。
ここまできたんだ、もう、やってやろうじゃないか。
半ばヤケになって呼び鈴を押す。指先が震えるのは寒さのせいだ。家の中で微かに音が聞こえた。
留守にしてればいい。
居て…ほしい…な
トットットッ…と微かな足音が聞こえる。
居た。
そう思った途端、急に顔が熱くなった。
な、なんで…何で僕が…。
思わず、右手で口元を覆うように頬を隠す。
嬉しい…
…………嬉しい…なんて…。
「やっ!八雲君!…」
声と共にドアが開き、あいつが顔を出した。
……………。
可愛い
「寒っ…。」
犬か何かのようにフルッと…微かに身体を震わせた。
ピンクの…パジャマ…か。彼女らしいな
って、何考えてるんだ僕は!
確かにパジャマ姿は始めて見るが、それを見るために来たんじゃないだろう!
何のためにこんな寒空の中来たのか思い出せ。
「どうしたの?こんな時間に」
驚きと、少しの怪訝さを交えた声でそう聞いてくる。
見たところ寝起きじゃないみたいだ。それが救いか。
眠っていた君を起こしてまで、こんな馬鹿につき合わせたくない。
今日は、大晦日だから…すこし、おかしいんだ。
「君に……」
逢いたかった
「私に?」
オウムのように言葉は違えど聞き返してくる。
違う、本当はそうじゃない
そう、違う…。
「八雲君?」
逢いたいというのも…口実だ…。
本当は……
こんなときぐらい、素直になれよ。
些細な願いを叶えたかったから……。

「……君に、誰よりも早く…おめでとうを…言いたかった…だけだ。」



今、僕はどんな顔をしてるんだろう。
言えた
きっと、酷く赤面…してるんだろうな。
素直になれない、僕の…今の精一杯
僕が、いったんだから何か反応しろよ。
傍にいてくれて…ありがとう
彼女を見ると、何がおかしいのか…クスクス笑っている。
来年も…傍にいてくれ
だが、不思議に…嫌な気分にはならなかった。
「…ねぇ。初詣、一緒に行こう?」
クスクス笑いを引っ込めて、にこりと笑顔になる。
…その笑顔が、僕は好きなんだ
「すぐ、着替えてくるから。待ってて?」
くるりと、踵を返す彼女を思わず追いかけ、手を伸ばす。
「ちょっと、待て」
後ろでガチャリと…オートロックが閉まった音が嫌に大きく聞こえた。
肩を掴んでしまって、自分で戸惑った。
「…?」
不思議そうな顔で僕を見てくる。
どうしたら…いい?
「…今、行ったら一番に言えなくなる…だろ。」
つっけんどんな言い方だ。だが、これが僕の言える精一杯。
なんて、不器用なんだ
「…そう。だね。」
にこりと笑って…君が僕に向き直った。自然と、手が離れる。
「わざわざ、来てくれてありがと…寒かったでしょ?」
そう…でもない。
確かに手足は寒いが、顔もコートの中の身体も…熱い。
僕より、寒いのは…
「それは。君のほうだろう?そんな薄着で。」
そう言っても、君は大丈夫だと言い張るんだろうから。
「ほら、肩がこんなに冷えてるだろ。」
ポンッと…肩に手をおいて…そのまま抱え込むように腕を……。
腕の中で、びくりと身体が強張った。
恐がら…せたのか?
……何してるんだ、僕は。
そんなことが、したいんじゃないんだ
「すまない、急に」
腕を解いてそう詫びる。
「わ、私のほうこそ…ごめん…ね。」
顔を赤くして君がそう言った。
……可愛い。
どこまでも、少女のような愛らしさがある君。
君は、それのままで、居てくれ。
聞き覚えのあるメロディーが流れ出す。時計の長針が12時を指したときに流れるメロディ。
彼女の耳にもそれが届いたんだろう、あっと小さく声を上げてまだ、赤い顔で僕を見上げてきた。
まだ、上手く笑えはしないけど。
精一杯の笑顔で、君に言おう
「あけまして…おめでとう。」
「うん…。おめでとう。八雲君」
満面の笑みが僕に向けられる。今は僕だけに向けられる笑顔
ほんの少しだけ、君に触れたくて…。
だけど、君を恐がらせたくなどないから
その赤く染まった頬に軽く、キスをした。
好きだと、伝えたくて

「きっ…着替えてくるね!」

逃げるように部屋に引っ込んで行く君。
その顔に笑みが見えたのは、僕の自惚れだろうか。



数分後、出てきた君がそれが自惚れじゃない事を証明してくれた。
「今年も、よろしく…ね」
そう言ってその柔らかい唇を、僕の頬に押し当ててきたのだから



END

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