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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月20日 (Mon)
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2008年08月07日 (Thu)
パロ。

これを先に読んでからどうぞ。
悲恋気味のやつです。


タイトル決まりました。

「隻眼のミセル未来」


「晴香。もう少し、おしゃれしようよ。」



「ほら、デザインおそろい。これならいいでしょ?」



「晴香、こっち。車道側危ないよ。」




「晴香、イヤリングないじゃない。」


「あんなところに落として…。」


「もう、しょうがないんだから……。」


やめて…


行かないで。


「ダメッ!!!」


車が…っ!!



「お姉ちゃんっ!!」




朝の…目覚めは最悪、だった…。

寝ながら…泣いていた。

いつものことだ…。

姉が死んでから夢を見ない日はない。しかも決まって悪夢。


事故の場面のリプレイ。

何度も何度も…繰り返される映像。


ついさっきまで笑っていたのに……


「おねえちゃん………。」

暫くベッドの上から動けなかった………。

流れる涙もぬぐえないまま……。






起きなきゃ…っと自分に言い聞かせ、ベッドから下りる。


ふと目に入る、いつもと違う物。


黒の眼帯。


それが昨日の事を夢ではなかった事を証明するもの。

「…………。」

思い出されるあの人の顔。

異常なまでに青白い肌と…それと対照的な赤い瞳。

綺麗、だったな…あの色…。

あれは、一体何だったんだろう?

もう一度、会いたいな……。

怪我も心配だし…。

それに

 「お前の姉は過保護過ぎる。」

あの言葉の意味が知りたい。




その思いが…

晴香をお寺に向かわせていた。




あらためて見ると、大きくはないがきちんと手入れがされているお寺だとわかる。
坂道を登って門の所まで来ると、サッサッと音が聞こえてきた。この音は…そう、掃いている音によく似ている。
晴香はそう思いながら…ぐるりと視線をめぐらせた…。
お寺の庫裡の方に…紺色の作務衣を着た人がいた。予想通り竹箒で庭を掃いている所だった。
晴香は少し緊張しながら…その人に近付いた。
「あ、あの…」
「おや……。こんにちは、どうされましたか?」
「住職さんですよね?」
「はい。何かご用ですか?」
そう名乗った男性は晴香の顔をみておやっというように少し首をかしげた…。
「初めまして…。」
「……初めまして…ですか?人違いだったら申し訳ないのですか…。」
そういいながら彼は顎を撫でながら晴香の顔をじっと見た。
「あ…。小沢さんではありませんか?」
ぽんっと…手を叩いてそう言ったがすぐに神妙そうな顔になった。
「私は斎藤一心と申します。…この度は、お姉さんが………。」
そこまで言われて晴香はやっと理解した。葬式にきていたのは彼だったのだろう。
しかし正直なところ、葬式の時の記憶は殆んどない…。
「その時は…お世話になりました。」
深々と頭を下げた。そうして顔を上げると弥勒菩薩のような優しい笑みをうかべていた。
「それで…何か御用ですかな?」
「…あ、あの…私と同じぐらいの年齢の人…いらっしゃいますか?」
変な質問だというコトは、自分でも分っているが…他にどう聞いていいのか分らなかった。
「……。ひょっとして…あなたが昨夜墓地に居た方ですか?」
「あ…はい。」
どうしてそれを?っというような視線を受けて一心は目を細めて晴香を見た。
「そうかそうか…。ハンカチを預かってます、どうぞこちらに」
そう言うと、一心は庫裡に向かって歩きだした。あわてて、晴香も続く。
との横に箒を立てかけ、家に上がるよう勧める一心。
「何もお構いできませんが…」
っといいながら照れくさそうに頭を掻いた。
「おいかまいなく…」
そういって通されたのは居間のような場所だった。
「どうぞ、座っていてください。」
そう言うと彼はどこかへ行ってしまった。
あまり見るのも失礼だと思うが…何もしないのは手持ち無沙汰で晴香は部屋の中を見回した。
テーブルに時計、テレビに箪笥…。
普通の居間だ。特記するような事はなにもない。


「お待たせしました。」
そう言って一心はお盆の上に湯飲みと急須を乗せてやってきた。
「あ…。ありがとうございます。」
お茶を入れ終わった一心は座る事をせずまたどこかへいってしまった。
今度は1分もかからなかっただろう。
「貴方の捜し物は、これですか?」
部屋に戻ってきた一心は机の上にハンカチを置いて座った。
「あ、はい!ありがとうございます。」
間違いなく自分のもの。昨日付いたであろう血は綺麗に洗われていた。
「あの人は…誰ですか?」
好奇心を抑えられずに晴香は問うた。
「甥の八雲と言います…。」
「甥…。」
…っと口の中で反芻する。じゃあ、この人はおじさん…っという事。
「あ」
そこまで聞いて眼帯を持ってきていることを思いだした晴香。
真っ先に帰さなければいけないものなのに…。
慌てながら晴香は鞄の中から眼帯を出して机の上に置いた。
「これは…八雲のですかな?」
「はい…昨日見つけたので…一応洗濯はしてあります。」
「ありがとうございます。」
にこりと…本当に優しい笑みを浮かべて一心は眼帯を受け取った。
不思議と心が落ち着くのを晴香は感じていた。
「あの…彼は、いつも目を隠しているんですか?」
「……えぇ。」
彼の表情が微かに曇ってしまったのを…後悔したが口は止まらなかった。
「それは…赤いからですか?」
「それも…ご存知でしたか…。」
「はい…。昨日見ました。」
「そうでしたか…。」
「とっても…綺麗な色ですね。」
晴香のその言葉に…一心は細くなっていた目を少し開いた。
…そうして笑った。
「貴方でしたか…そうかそうか…。」
「え?」
彼の笑顔の意味が理解できずに…固まってしまった晴香。
「あぁ…すみません、八雲が言ってました。綺麗だと言う変なヤツにあった……っと」
「へんなやつ…」
変とは何が変なのだろう。
あの時間に墓地に居た事?あの人だって居ただろうに
綺麗っと言ったこと?…綺麗なものは綺麗なのだから変じゃない。
特別容姿が変なわけじゃないし…それを言うならこの時代に病気じゃないのに眼帯をつけて歩いてる人のほうがよっぽど変だ。
「それでも、嬉しかったようですよ。…」
一心のその言葉が引き金となった

「今いらっしゃいますか?…」

するりと出た言葉に晴香は驚いた。
会いたいと望んでいたのは確かだが、あまりにも図々しくはないか。
「……。居るには居るが…いかんせん、人見知りをするんでね…。」
困ったように頬をかいて晴香を見る一心。
「人見知り?」
「…ああいう目ですので…多少人間不信なところがあるのですよ…。」
「ああいう目……?」
ああいう…っと言うのは赤いことをさしているんだろう。それは分る。
赤い事が何故人間不信につながるのか…晴香には分らなかった。
「詳しくは、本人から聞いたほうがいいでしょう…私にも分からない事はある。」
一心はそう言うとお茶を飲み干して立ち上がった。
晴香も慌ててお茶を飲み立ち上がった。
「…あなたなら大丈夫でしょう…。」
真正面から晴香を見て…一心はゆっくり微笑んだ。
何が大丈夫なのか…聞く前に一心は歩き出してしまった。

居間から続く廊下を進んで…曲がると薄暗くなった。
不思議に思ったがその原因はすぐに分った、窓にカーテンが引かれている。
なんで…っと聞くより早くその脇の部屋へ一心は入っていった。遅れないように晴香も続く。
その部屋に入るとぞくっと…背筋に寒気が走った。まるでクーラーでも入ってるみたいだった。
一心は慣れているのかそのまま奥へ向かって行った。
6畳ほどの部屋の奥に…カーテンが見える。床にまで着く長いカーテン。
窓思ったそこにむかって一心は声をかけた。


「八雲。客人だよ。」


つづく


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無題
お初にお目にかかります、碧風紗羅と申します。
サイトのメインは別物なんですが、八雲はもうぶっ壊れてしまうくらいに大好きです!
ここに初めて来たときは一晩(徹夜)で全部の話を読んでしましました;
だって古谷様の書かれる八晴と真志が可愛くて可愛くて・・・ww
どうぞこれからよろしくお願いしますm(_ _)m
碧風紗羅 URL 2008/08/08(Fri)02:06:51 編集
Re:無題
碧風紗羅さん。

始めまして!管理人をしております古谷です。コメントありがとうございます!
数ある八晴サイトの中で、当サイトにきていただいてありがとうございます!
しかも徹夜で読んでくださったとの事。
書き手としては、そこまでのめりこんでり込んでの呼んでくださったことが読んでくださったことが嬉しいです!ありがとうございました。
ですが無理はなさらないでくださいね、お体が大切です。
クオリティはともかく、作品数だけは多いサイトでございますので。
そして八晴だけで無く真志もっ!可愛いといってくださってありがとうございます。
嵌ってしまったらもう暫くは波が止まらないので新栄学園が暫く増殖すると思います(笑)
両カップリングに乞うご期待です(笑)
真志のほうは本館メインに増えていくと思いますので、更新履歴が更新されたら除いてやってくださいませ!
メインは別とのことですが、八雲が好きな方は大歓迎ですよ♪
これから、お付き合いよろしくお願いします!
【2008/08/11 11:36】
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