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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月20日 (Mon)
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2006年04月24日 (Mon)
明日から、一泊二日で合宿に行ってきます。(報告)


この季節。自転車をこぐと涼しくて気持ちいいですよね。
…というSS↓(笑)




いい天気の日曜日。
一心さんによかったら遊びにおいでと言われたのが先週のこの曜日。
その言葉に甘えて晴香は斉藤家へと歩いていた。
今度行くときは何か料理を作ると約束したので手にはスーパーの袋。
料理を美味しいと食べてくれる一心さんを想像して自然と頬が緩む。
晴香にとって斉藤家は本当に居心地がいい。
一心さんは穏やかだし奈緒ちゃんもなついてくれている。
お寺ということもあり、周りはとっても静か。
縁側に座って話をしていると本当に気持ちがいいのだ。
…それでつい…うたたねをしてしまったのは…起こしにきてくれた奈緒とだけの秘密である。
「不審者がいると警察に通報するぞ。」
後ろから聞きなれた声…。
「不審者って何よ!」
そういいながら振り返ると案の定八雲がそこにいた。
何故か自転車を押している。その姿がなんだか似合わなくて…少し笑ってしまった。
「さっきから何が楽しいんだ。僕は休日まで君と逢う羽目になってうんざりしてるんだ。」
確かに、いつもよりは不機嫌そうな八雲。
「君の家はあっちだ。こんなところでふらふらしてないでさっさと帰るんだな」
そういうと自転車を押したまま晴香の隣を通り抜ける。
「私は自分の家に帰る途中じゃないの!」
駆け足で八雲の隣に並び、歩きはじめる。
「なんだ。君は方向音痴じゃなかったのか?」
「違うわよ!」
「なら、何でここにいる?」
「一心さんに呼ばれたんです!」
「………。」
またかといわんばかりの顔。
その様子から察するに…
「八雲君も…一心さんのとこに行くの?」
「…と、言うよりは叔父さんのお使いに行かされた所だ。」
見ると自転車の籠にビニール袋が見える。
「何?これ」
「……茶菓子だ。誰か来るんだとは思っていたが…まさか君とはな」
ふぅっとため息をつくと晴香の手から袋を奪うとそれを自転車の籠に入れる。
「ちょ、ちょっと。いきなり何?」
晴香の質問には答えず自転車に乗る八雲…が走り出す気配はない。
「何をしてるんだ、さっさと乗れ。」
振り向いた八雲は不機嫌そうにしてるが、それは照れ隠しだということを晴香は知っている。
「どうせ目的地は一緒なんだ。早く乗れ。」
「うん。」
そういい荷台に座る。ミニスカートなのでどうやって乗ろうか迷ったが横に座っては落ちてしまう気がしたので自転車に跨る事にした。
「前の荷物は落ちないようにするが後ろまで面倒見ないぞ。」
振り返って八雲がそういう。
「どういうこと?」
「君が落ちても僕の責任じゃない。」
「面倒見てもらわなくても大丈夫ですよ~だ。」
そういうと少しだけシャツが引っ張られる。

じれったいな!そんなんじゃすぐに落ちるだろう。

「もっとしっかり持て。落ちても知らないぞ。」
そういうと八雲は自転車をこぎ始めた。
「きゃっ…」
確かに八雲のいうとおり、シャツをつかんだだけじゃ落ちそうになる。
「つかまってろ。」
そういうと左手を強引につかまれ八雲の胴に腕が回される。
急に腕を引っ張られたので思わずバランスを崩しそうになり慌てて右手で左手を掴んだ。
この状態はかなり………。
しかも運悪く前の交差点の赤信号に引っかかった。
「最初からしっかり持てといっただろう?」
首だけ回して八雲が話しかける。
「だ、だって……。」
「君は運動神経が鈍いんだ。それを自覚しろ。僕に遠慮してるならそれは見当違いだ。」
「う……。」
心配してくれてるのか何なのかよく分からない言い草である。
再び、腕が掴まれる。え?何?
腰の辺りに巻きついていた晴香の腕を胸の辺りまで引き上げる。
「こっちのほうが、君が楽だろう?」
そういうと返事を待たずに青信号になった交差点に向かって再びこぎだした。
「や、八雲君」
聞こえないのか八雲は何もいわない。
細い身体にぎゅっと抱きつくようにしがみつく。少し骨ばった背中に顔を埋める。八雲の匂いがした。


人通りのある交差点を一本抜けると急に人が疎らになりその分、緑が増えてくるのがわかる。
春に芽吹いた命は確実に成長して、瑞々しい色を放っている。季節はもう春から夏に変わろうとしているのだ。
頑張ってる八雲には悪いが…風が気持ちよくて、快適である。
少しだけ初夏を堪能していると、お寺に向かう急な坂道が見えた。八雲が勢いをつけて自転車をこいでいく。
坂を勢いで上ろうとするが…スピードは急減してしまう。八雲が立ち上がってこぎ始めるがあまり効果がない。
「降りようか…?」
「……いい。」
そうは言うものの、相当大変そうである。
「余計な心配をするぐらいなら。しっかりつかまってろ。後ろに体重をかけるな。」
言われるままに立ちこぎをしている八雲の腰に腕を回す。
何とか、お寺の砂利道まで来たところで八雲は自転車を止めた。
「大丈夫?」
自転車から降りて八雲の顔を覗き込む。
「あぁ。」
とは言うものの、ハンドルに両腕を乗せ寄りかかっている。相当疲れたようだ。
「先に行ってろ。」
そういうと籠からスーパーの袋を取り出す。
「あ。うん。」
それを受け取って八雲の顔をじっと見つめる。この場合、珍しく晴香の方が見下ろす形になる。
「……なんだ?」
少し怪訝そうな顔をする八雲。
「ありがとう。」
少しだけ背伸びをして不意打ち気味に額にちゅっとキスをする。
「先にいってるね。」
笑顔を残して晴香は玄関のほうへと駆け足で去っていった。

「……不意打ちは…反則だろ。」

赤い顔をした八雲が額に手を当てそう呟いた…。



END
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