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ここは「文風月」内、FF置き場です. カテゴリに作品名が入っていないものは「八雲」
2024年05月19日 (Sun)
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2007年12月25日 (Tue)
クリスマス、昨日の続きです…。


えっと…。おやすみなさい!(眠)

拍手おへんじはまた持ち越しで(汗)




映画が終わって暫くした頃…。
八雲の膝の上で寝ていた晴香が、寝返りをうった。
その様子を見て八雲は微かに笑った…そうして、その頬を優しく撫でた。
するとまた、身を捩る晴香。それがなんだか可愛く見えて…八雲は晴香の耳に顔を寄せた
「おはよう。晴香」
そう、囁いて晴香の首筋にそっと触れた。指先にトクントクンと…脈を感じる。
顔を離すとまだ眠そうな晴香と視線がぶつかった。
「あ…!」
そう、声を端発してがばりと起き上がる晴香。
「おはよう。」
晴香を見て、八雲は優しい笑みを湛えながらそう声をかけた。
「起こしてくれればよかったのに…。」
映画見損ねちゃったし…
若干赤い顔で晴香がぼそぼそっと言った。
八雲は、何も言わずにただ苦笑した。
「あ……3時…」
晴香は時計を見て、独り言のようにそう呟いて
「お茶にしよっか?」
っといって、立ち上がった。
キッチンに向かおうとした晴香は一歩も歩き出さないうちに止まってしまった。
八雲がその手を掴んだから。
「?」
「出かけようか…」
真剣そのものの声で…八雲はそう言った。
「え?どうして?」
対する晴香はきょとんと…八雲を見下ろしている。
晴香の問いかけに八雲はすぐに答えられなかった、そんな返事があるとは思っていなかったから。
そうしている間に晴香の次の言葉が出ていた。
「ロールケーキ作ったの。練習で。だから食べてもらえると嬉しいんだけど…。」
「練習?」
「うん。今度、サークルの打ち上げで持って行こうと思って…」
そう言って再度不思議そうに八雲を見る。
「一人じゃ多いから…一緒に食べてもらうと思ったんだけど…」
だめ?っと聞くように首をかしげる。
「分かった…。」
手伝うよ。
八雲はそう言って立ち上がった。
晴香はそれを見て…嬉しそうに微笑んで手を引いた。

数分後には、ロールケーキと紅茶でのお茶会の準備が整った。
映画館気分をやめてカーテンを開けると、太陽は顔を見せていなかった。
「あ、天気悪いのかな?」
八雲の隣にやってきて、晴香がそう聞いた。
「どうだろうな…」
街の方をみて、八雲は答えた。
そんな八雲の袖が引っ張られた、グイッと。
「?」
「紅茶冷めちゃうから…食べようよ。」
もごもごと…なぜか小声で言う晴香。
「…多分、上手くできたと思うから…」
「そうだな」
小声なのは出来が不安だったのか…っと八雲は納得し素直に晴香に従った。
未だかつて…晴香の料理がまずかった事など一度もないのだが…。
小さなお皿に乗っているのは、市販品かと思うほどのロールケーキ。しかもイチゴが中に入っている。
「見た目は可愛いでしょ?」
満足そうに笑ってそう言う晴香。
「全部君が作ったのか?」
「うん。」
嬉しそうに…でも少し照れたように晴香は笑った。
「……凄いな」
八雲は率直な意見を口にした。それを聞いて晴香は…微かに頬を染めた。
「問題は味なのよ。…食べてみて?」
そう言うと自らもフォークを持つが、八雲が動くまでその手は動かなかった。
その晴香の様子をみて、八雲は心の中で笑った…そうしてケーキの一部をフォークで切り取った。
「ほら。」
八雲はそう言ういい、そのフォークを晴香の口元へ持っていった。
「え?」
驚いたのは晴香のほうである、…八雲の意図をつかめず…その場に固まってしまった。
「早くしないと落ちるぞ?口開けろ。」
八雲にそんなことを言われて晴香の硬直は解けた。
言われるままに口を開くとその中に甘いロールケーキが入って来た。
口を閉じた晴香をみて八雲はそのままフォークから手を離した。
「…八雲君に先に食べて欲しかったのに…」
口のフォークを取り、両手にフォークを持って、晴香がそう言った。照れ隠しに…少し不機嫌そうにふくれている。
「作った本人の毒見は必要だろ?」
「毒見って!」
「僕も食べたいんだけど?…フォーク一本くれよ。まぁ、君が食べさせてくれてもいいケド?」
晴香の怒りをそぐような言葉が八雲の口からでる。
ずるい。
っと晴香は心の中で思いながら…自分のケーキを切って…八雲の目の前に出す。
「はい。」
「頂くよ。」
にやっと笑って…八雲はケーキを食べた。
「…どう?」
「…まぁ、美味しいんじゃないか?…。」
素っ気ないのはいつもの事だが…その表情は優しいものだった。
「よかった。…」
つられて晴香も微笑む。

お茶会はのんびり行なわれたが…その間にも八雲の頭からあの事は消えなかった。


「出かけようか。」
お茶会が終わりかけたとき、八雲の口からその言葉が出た。
「え?」
「……外に、出かけようかって言ったんだ。」
「…どうして?…何か予定でもあるの?」
隠してはいるが…少し動揺している晴香がそう聞いた。
「…そう言うわけじゃないが…」
「じゃぁ、いいじゃない。家に居ようよ。」
晴香は早口でそう言うと、スッと立ち八雲の制止がかかる前に窓際へ行った。
そうして厚いカーテンを閉め、映画館の準備を始めた。
「夕ご飯のね、デザートにはムース作ってみたの。ブルーベリーで、コレは上手に出来たんだよ?」
「晴香!」
話をそらしている…っと感じて八雲はその名前を呼んだ。
普段呼ばない名前にぴくんっと…晴香は反応した。
「なに?八雲君、ムース嫌い?」
「……話を逸らすなよ。」
八雲はそう言って晴香の手を捕まえた。そうしてそのまま引き寄せる。
「…君は、行きたいんじゃないのか?」
目の前の晴香の目を見てそう八雲は問うた。
「どうして?…どうしてそう思うの?」
不安げに晴香がそうたづねる。八雲にしてみれば、何がそんなに問題なのかが分からない。
「だって、今日はクリスマスイブだろ?…去年みたいに…っ!?」
言葉の途中で八雲は唇を塞がれたしかも、相当強く。
それが晴香からの接吻だと分かるのに…暫く時間が必要だった。
「24日だからってクリスマスをしなきゃいけないわけじゃない…でしょ?」
唇を離した第一声がそれだった。
「クリスマスをしたらダメなんて…誰も言ってないだろ?」
っと、八雲は反論する。八雲の頭の中には、兎に角去年楽しそうだった晴香のイメージしかない。
「八雲君言ったじゃない、去年。『クリスマスなんて無縁だった』って」
「…………。」
すぐにはそのシーンを思い出せない八雲。それだけ、彼にとっては些細な言葉だった。
「…あんな…悲しい顔見たくないよ…。八雲君、凄く悲しそうな顔で…笑うんだよ?」
八雲のシャツを…ぎゅっと握って、晴香はそう言った。
「クリスマスだからって…特別な事しなくてもいいっと思ったの。一緒にいられるなら…それでいいと思ってた。だから今年は…クリスマスを意識しないクリスマス…にしようって思って…。」
ぼそぼそと話し続ける晴香の声を八雲は一字一句逃すまいと真剣に聞いていた。
「…街に出たらどうしてもそういう気分になるから…家で過そうって考えたの。」
DVD借りてきて、2人で見て…イチゴのケーキを食べて…夕ご飯は…和食で…全然クリスマスっぽくないでしょ?」
徐々に晴香の声が小さくなっていき…擦れていく。
「八雲君が卑屈にならないような……クリスマスにしたかったの。」
「…………。」
「無縁でも…関係ないような…。特別な事をしないクリスマスに…したかった…けど。」
うつむいてしまった晴香に…なんと声をかけていいのか…八雲は分からなかった。
「でも…失敗だね…ごめん。」
か細い声が聞こえてきた。
両手で顔を覆っているのが見えて…泣いているのだと…分かったが、八雲は躊躇った。
「泣かないでくれ……。」
この細い身体を抱きしめると…壊れてしまうんじゃないかと…そう思ってしまったから。
壊さないようにゆっくり、八雲は晴香の肩に手を置いて…そのまま抱き寄せた。
そうして…取り合えず泣き止むまでそのままでいた。

晴香が落ち着いたのをみて、八雲は口を開いた。
「まず…ありがとう。僕のためにいろいろ…考えてくれて。」
そういって…八雲は晴香の額にキスをした。
「でも…僕だって君が…楽しい方が…嬉しい。」
少なくとも、DVDを見ながら退屈で寝てしまうような事は…させたくない。
八雲がそう言うと晴香の頬は赤く染まった。最も、八雲からはそれは見えないが……。
「…昨日、あんまり寝てない…からだよ。退屈だったんじゃないの。」
「……寝てないって…。」
「いつもより少しだけ長かっただけ…ケーキ作ってたの。」
慌てて晴香はそう言った。もう、涙はないが顔が赤いのは直ってない。
「…………。」
八雲は一気に眉間に皺を寄せた。
「私は…八雲君と一緒に入れるなら…どんなクリスマスだっていい。」
「…それは…僕も一緒だ…でも。」
「でもじゃない、でしょ?…それに…人が多い所は集まりやすいんでしょ?」
何が…とは言わないがそれは暗黙の了解で分かっている。霊が…だ。
「……それはそうだ。」
「しかも…クリスマスは特別な行事…だって思ってる人は多いから…その分思いも強いはずでしょ?」
「……まぁ、ね」
「八雲君に負担かけたくないのも…ひとつの理由なんだよ?ゆっくり過すのも…いいでしょ?」
「…………。」
「イルミネーションだって…買物するのだって…どうせもう少しは続くんだから…ね?…大丈夫。」
晴香が顔を上げて八雲にそう言った。
「そう、だな…」
晴香が泣いていないのを確認して…安心したように…表情が緩む八雲。
「それに…。」
「ん?」
「今日ぐらいは…八雲君を私一人が独占してもいいでしょ?」
恥ずかしそうに…でも底心そう願っているのが分かるような視線を向ける晴香。
「……悪くない。」
くすっと笑って…八雲は抱きしめる腕に力を込めた。


「今夜は…」
「ん?」
「泊まる…よね?」
質問というよりは確認、っと言った感じの言葉
「あぁ…。」
八雲はそう返事をして晴香にキスをした。


「明日は、一緒に出かけよう…。」
「……うん。」




END


テーマはクリスマスらしくないクリスマス。

クリスマスだからって!特別な事しなくていいじゃない!
っという私の叫びをそのまま主題に(笑)


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た、たまらん…
晴香、ウチに嫁に来い!(え?)

綾さんこんばんにゃ~!

一生懸命考えたんでしょうねえ。どうやったら八雲にとっていい一日を過ごせるかって。
可愛すぎるよ晴香!幸せ者だね八雲!
ま、二人でいればいつでもスペシャルだからね♪
にゃる 2007/12/26(Wed)22:29:22 編集
Re:た、たまらん…
うちの晴香は嫁にやらん!(爆)
むしろ私がヨメにほし…(待て)

ごほんっ。
にゃるさん、こんばんにょ~!
乗ってみました(笑)

可愛いですね~。プランを考える晴香。
嬉しそうだったり、難しそうな顔をしたり…百面相してそうです(笑)

八雲に映画の話を切り出すとき、妙に緊張してればいい(笑)
可愛いなぁ~。
本当に、八雲は幸せモノです!

コメント、ありがとうございました!
【2007/12/28 23:10】
2人の思いやり
こんなクリスマスもいいですね。
お互いにお互いのことを思いやり、だけど不器用で上手に伝えられなくてもどかしく思いながらも愛し合い2人で一緒の道を歩いていく感じが、とっても心をあたたかい気持ちにしてくれました。
悦子 2007/12/26(Wed)19:31:58 編集
Re:2人の思いやり
悦子さん。

こんばんは~コメント、あ理が問うございます!
思いやって大事に思う故のすれ違い…って…切ないですよね。
専ら、意思の疎通不足なんですけど…
八雲は頭の回転が速いし、晴香は本当に八雲の思いに敏感だと思うんです。
だから、そうなる確立が高そうな気がします。
2人の道は…他の人とはちょっとづつずれてるかもしれないけど。
二人一緒なら大丈夫ですよね!

いいクリスマスプレゼントになったようでよかったです。
【2007/12/28 23:09】
いじらしいっ!
晴香さんの不安な気持ちを想像して、潤んでしまいました。
ですよね!お互いが、お互いに気兼ね無く過ごせる関係が、一番理想的。
その中で、合わない部分は、其々の努力で、変えていけばいいだけ。
皆が皆、同じように足並み揃えてする必要は無い。
そして、自分達にBestな関係を作ればいい。
X'mas小説で、ここまで思ったのは、初めてです。
何か、長々と語っちゃいましたね(苦笑)
恥ずかしいので、逃亡を図ります。
では、乱文失礼致しました(逃
クレーン 2007/12/26(Wed)01:28:48 編集
Re:いじらしいっ!
クレーンさん。

まさに、おっしゃるとおりです。みんなちがって、みんないいです。
八雲も、晴香も…ちょっと一般にはなじめないような部分がありますし、特にそう思います。
自然体で付き合える関係が一番ですよね。それで、お互いに歩み寄りをすればいい。
今回の場合、お互いが相手のことを考えすぎてすれ違いがおきてますが…
それは愛ゆえ…っという事だと思います。

私が作品に乗せて発した思いがダイレクトに届いたようで嬉しいです。
ロングコメント、ありがとうございました!!いつでも大歓迎ですよ!
【2007/12/28 23:09】
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